コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第30回/クリアオーディオのリニアトラッキング・アームを買うことを決意した十一月

●11月×日/東京インターナショナルオーディオショウを取材(音元出版:オーディオアクセサリー)。何百万円もする華々しい新製品の紹介ではなく、デモのときに使っているアクセサリーの使いこなしを探るという企画。やや筋違いの感あり。
 同誌伊佐山編集長もいればカメラマンの君嶋さんも一緒とあって、出展者は「さあ上陸したばかり、入魂の○○のことを訊いてくれ」という顔をしている。だが、ぼくの質問は「いま鳴っているRCAケーブルはどこのですか」「ラックに使われている木の種類を教えてください」というようなものばかりで「え、なんでそこなんだ」という空気が流れる。挙げ句の果てには、肝心の入魂作についてなにも触れずにさっさと立ち去るという具合。編集長は決まって「あとでちゃんと取材に来ます」と面目なさそうにしていた。
 興味深かったのはエレクトリにあったノードストのVIDARというケーブルのバーンイン・マシン。販売店が新品のケーブルをエージングするためのもので一般に販売はしていない。これに1週間も通電させると、普通に家で使用した場合の10年分にも相当するらしい。有料でもいいからやってもらいたい。新品のときの音は大抵ウソだからなあ。

●11月×日/先月、クリアオーディオのリニアトラッキング・アームTT3を自宅で聴いたつながりもあり、ドイツから来日した同社ロバート・スヒー社長にインタビュー。(音元出版:アナログ)。
 話をしているうちにクリアオーディオは世界でも最も大きなハイエンド・アナログ・メーカーであることを知る。 「世界で91か国に輸出しています。まあ1個だけ売れたカンボジアを含んでいますけど」という笑いをとることも忘れていない。


ノードストのケーブル・バーンイン・マシンVIDAR


クリアオーディオのリニアトラッキング・アームTT3

 最後のほうで「TT3の解像度はすごかったです」と振ると「個人的にもフェイバリットなアームなんだよね。ルックスもいいし音もいい」と目の前にあった現物で、その精密技術を説明してもらった。
 ここまで深い縁があると、あとはもう買うしかないという気持ちが加速度的にふくらみ、一晩考えて購入を決意。しかしどうやって自分のプレーヤーに取り付ければいいのだろう。まずそれを先に考えろってことだが。


「カフェ・レジーナ」で使用しているガラード301

●11月×日/瑞江の「カフェ・レジーナ」でガラード301の取材(音楽之友社:stereo)。編集の吉野さんがガラード301を欲しいというので、マスターの山川勉さんから講義を受ける。山川さんは十数年前に店を開いたときに新品を含めて50台ほど持っていて(現在すべて売却)、これまでキャビネットを作った数は300個以上、いまでもガラード社オリジナルのプラッター(ターンテーブル)を50枚、アイドラーは200個、ほか細かいパーツを何箱もストックしている。これが商売ではなく、趣味として持っているのだからすごい。
 達人の話は説得力があり、吉野さんは完全にその気になり、301を中古店、ネットなどで物色開始。もちろんぼくも激しく肩入れするつもり。301のチューニングはいくらでも盛り上がる。これを原稿のネタにするという目論みも大いにあり。

 

●11月×日/横須賀の三上さん、目黒の惣野さんが発起人となった、まったく趣旨不明の「田中伊佐資を囲む会」に主賓として参加。
 ぼくがなにか所信表明するわけでも、旗揚げするわけでもなく、ただの飲み会にそんな名目を付けたようなものだが、それでもオーディオ・マニアやオーディオ・メーカーの人たちが30人以上も集まっていただいた。ひたすら恐縮するしかない。トイレから出てきたら誰もいなくなっていたというギャグはなかった。

(2013年12月10日更新) 第29回に戻る 第31回に進む

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

  • アナログ・サウンド大爆発!~オレの音ミゾをほじっておくれ
  • Brand-new CD~ジャズ・サウンド大爆発! オレのはらわたをエグっておくれ
  • お持ちの機器との接続方法
    コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」バックナンバー