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コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第57回/アフロオーディオで男気買いをしたら、ものの見事に墓穴を掘った8月 [田中伊佐資]


吉田一廣さんのアナログ・プレーヤー


「オーディオ・ホームシアター展 」
(10月17日~19日)にて公開録音!

詳しくはこちら

●8月×日/友人であり、レコード&オーディオ・マニアの吉田一廣さんを取材。
 その数週間前に『隔週刊CDつきジャズ耳養成マガジンJAZZ100年』(小学館)の編集者から連絡があり、オーディオ・マニアを訪問して、音とジャズについてルポのようなコラムを書いてくださいと依頼があった。全26巻のうち半分くらいは発売・編集済みで、10月末のスタートらしい。
 まだ先だなとのんびり構えていたら、すぐに取材をとハッパがかかった。CD付きで製本・箱詰めなどにすごく手間がかかり、隔週刊なので超前倒しなんだそうだ。そこで手っ取り早いところで、よく知っている吉田さん宅訪問が決まった。
 と、そこへ『JAZZ100年』の隣りにある『DIME』編集部から「アナログ盤が復活している記事をやりたいのですが、なんでも吉田さんの家に行くそうですね。便乗したいのですが」と来た。
 『DIME』は『アナログ音盤』(ステレオサウンド)に登場した吉田さんに会いたいと思ったが、もちろん面識がない。「この人、知ってる?」と『JAZZ100年』に聞いてみたら、今度家に行くんだよとの情報をたまたまキャッチしたんだそうだ。こんな偶然ってあるのだろうか。

 立ち会った『DIME』の編集者は、アナログに興味があるようだったので、レコードかけまくり大会が始まってしまった。一粒で二度おいしい仕事、その実体はほぼ遊びでもあった。

●8月×日/オーディオアクセサリー誌の新企画「オーディオはアフロで行こう」の取材。アフロは横浜にある中古オーディオ店アフロオーディオのこと。ここで店頭品を物色し、そして試聴し「面白そうな店だなあ」と読者に思ってもらえればそれでいいといった趣旨だった。旅客機の格納庫のようなバカでかい店なので、それでも絵にならないこともないが、それだけではもうひとつヒネリがない。
 クリアオーディオのリニアトラッキング・アームを買い、新しいカートリッジが欲しいと思っていた。ちょうどこの店のサイトを見ていたら、クリアのStradivari V2があった。だったら取材現場でガチ買いするのはどうだ。次回は誰が書くのかわからないが、その人も男気買いをしないと格好がつかなくなるだろう。プレッシャーを与えてやれ。さらに、どうせなら現金買いだ。その写真も載せたい。
 取材は無事終了。できあがった雑誌を見ると、現ナマ授受の写真がページの半分大でフィーチャーされていた。しかし記事は、本のほぼ最後尾に掲載されている。

 伊佐山編集長にそのわけを尋ねると「現金写真は刺激が強すぎるので」ということだった。3歳の子供でも物を買うのにお金を払うわけで、刺激もなにもないはずだが。だいたいそこまで写真を大きくしたのは編集長自身だ。さらに続けた。
「おそらく、この連載はほかの方(もろオーディオ評論家)では難しいと思います。このまま引き続きお願いできないでしょうか」
 つーことは、毎回なにかを買うってことになるのか。いい感じで掘ったな、墓穴。

●8月×日/ディスクユニオンから立ち上げたHead Shell Recordsの第一弾は、「世界一美しいしゃがれ声」とぼくが勝手に持ち上げている、シンガーソングライター「マイケル・ウェインライト」のデビュー盤に決定。9月に出そうと準備を進めてきて、本人もやる気満々だったが、正式な契約書が届かない。よくある話で、夏の長期休暇をとっていたとのこと。発売は思いっきりズレて11月になってしまった。
 せっかく吉田修一さんに急いでロゴを作ってもらったのというのに、あの切迫した慌ただしさはなんだったのだろう。

●8月×日/ここ3か月ほど作業を続けてきた『オーディオ風土記』がほぼ完成。これはステレオ誌でやっているマニア訪問記をまとめた本で、自分で書いたものだから、仕上げるのはチョチョイだと思ったら、写真のセレクトがもう大変。その人のオーディオ・システムの見せ場はどこだと考えていくと迷いまくる。
 掲載するカラー写真は320枚にもなったが、これはもうオーディオ本としては画期的ですと、自画自賛しておこう。9月23日からの東京インターナショナルオーディオショウで先行発売。書店は10月上旬発売。本体2500円+税でDU BOOKSより刊行です。

(2014年9月11日更新) 第56回に戻る 第58回に進む


タイポグラフィカル・デザイナーの吉田修一さんデザインの「Head Shell Records」ロゴ


「オーディオ風土記」
著・田中伊佐資 10月上旬発売!
DU BOOKS:本体2700円税込)
田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

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