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コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第69回/RCAの70Aを購入したタイミングで千原ジュニアがうちのオーディオを聴いた12月 [田中伊佐資]


アメリカ放送局用プレーヤーRCA70A

●12月×日/9月に大阪・天満橋「Record & Audio Store BUNJIN」で戦前のアメリカ放送局用プレーヤーRCA70Aに対面してから、 どうにもこうにも落ち着かない日々が続く。このまま一生ソワソワが続くのも精神衛生上よくないと判断、結局、購入することを決意 (というか、ただただ欲しかっただけ)。家内が友人の家に泊まりがけで遊びに行く前日に納入してもらう。 カートリッジやケーブルならバレないが、さすがにどう考えても気付くはず。だが、浮かれて帰ってきたタイミングなら追及が激化しない と想像し、まさにこのタイミングで送ってもらう。
 プレーヤーの大パワー・トルクが音楽にソウルを宿らせる。 店と同じで自宅でもそれは変わらず。やっとこれでソワソワしないで年が越せる。そしてワクワクが続く。

●12月×日/CSのスペースシャワーTVで毎月一回放送されている「千原ジュニアの鼓膜」でオーディオ特集をやることになり、 ぼくのうちにジュニアさん、音楽プロデューサーの蔦屋好位置さん、ゲストにやはり音楽プロデューサーの笹路正徳さんたちが来訪。 オーディオ門外漢ながら、バイク好きのジュニアさんにはRCA70Aを「30年代のヴィンテージ・ハーレーのようなものです」と説明すると 好奇の眼差しを向けていた。ぼくはビートルズの「カム・トゥゲザー」を選び、ジョン・レノンのシャウトとヘビーな低音をじっくり 聴いてもらった。放送は1/29(木) 22:00~。RCA70Aの音をテレビで聴くとどうなるんだろう。うちでは観られないけど。

●12月×日/四谷のジャズ喫茶「いーぐる」の忘年会に参加。店主の後藤雅洋さん、小学館「ジャズ100年」編集長の小林さん、編集担当の池上さん、サライ編集長の小坂さんにアホなオーディオ・マニアたちの話をあれこれすると (注:アホはマニアにとって最高の栄誉)、みんな「そういう人いいなあ」と喜んでくれた。池上さんは中野の ダイニング・バー「Sweet Rain」でジャズのSPを蓄音器でかけるレコード・コンサートをやっているが、当の本人から蓄音器を何台も持っているコレクターであると初めて明かされた。こんな身近にまたアホな人がいたなんて。
 


TEAC TN-350


RCA70Aは、プラッターの下にあるこの部分で78回転から33回転に減速する

●12月×日/「年忘れ八重洲 “レコード聴きまくり” 大会」を、Gibson Brands Showroom TOKYOにて開催。これはディスクユニオンJazzTOKYO生島昇店長とぼくがレコードを持ち寄り、ティアックの新プレーヤーTN-350で好き勝手にかけるというイベント。TN-350はエントリー価格のわりには作りがちゃちではなく、音もしっかりしている。これからレコードを始めようとする(決してアホでない)一般市民を牽引する実力があるとみた。アナログ・レコード界を代表して、これから頼んますとTN-350を拝んだ。
 ちなみに『ゲッツ/ジルベルト』のハイレゾとレコードの聴き比べをやり、挙手してもらうと8対2の割合でレコードの勝ち。 イベント会場の再生ではハイレゾのほうがシャープに音が立ち、ちょっと聴きでは強いものなので、この結果は意外だった。 といってもまあ、レコード大会に来るお客さんの評価だから順当なのか。

●12月×日/暮れも押し詰まった頃に「BUNJIN」から宮本店長、岡田メカニックのご両人が大阪から来訪。 RCA70Aの運搬中にシャフトがずれた可能性もあるので、その確認とベアリング周囲の研磨が目的。 このプレーヤーは78回転で回る軸をプラッターの直下にあるベアリングで33回転に減速しているため、 どうしてもその摩擦ノイズが盛大に出る。コンパウンドで磨くとノイズが減るので、わざわざこのためだけに上京してくれた。 ノイズは激減とはいかないまでも、トーンが落ち着いた。うひゃ~、ありがたい。まあ、しかしこのノイズ、プレーヤーの 再生音を聴いてしまうと「俺はパワフルに仕事をしている」という表明にも聞こえてまったく気にならない。 それどころか愛おしい。典型的なアバタもエクボというやつだ。

(2015年1月13日更新) 第68回に戻る 第70回に進む 

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「オーディオ風土記」(DU BOOKS)「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」(SPACE SHOWER BOOKS)がある。

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