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Best Sound~オーディオ評論家が選ぶ優秀録音盤~

124ch THE AUDIOにて放送中!
 (月~金)6:00~9:00、11:00~13:00、15:00~19:00、 (土・日)6:00~9:00
評論家による優秀録音盤セレクション。 「Best Sound~オーディオ評論家が選ぶ優秀録音盤~」  

●山之内正・選(クラシック・バロック)  
プロフィール その他選者
No. ▼画像をクリック(CDを購入できます) アルバム名 演奏者 レーベル / CD番号 コメント
1 カール=ハインツ・シュルツ プレイズ・バッハ・ソロ カール=ハインツ・シュルツ(Fl) camerata / CMCD-28329 あらゆる音域の音色から息遣いまで、無伴奏で聴くとフルート奏者の演奏の特徴がすべてわかってしまう。一音一音を完璧にコントロールしたシュッツの演奏は細部まで豊かな表情をたたえ、聴き手を引き込む力がある。
2 ドメニコ・スカルラッティ・18のソナタ エフゲニー・スドビン(Pf) Bis / BIS2138 ズドビンはスタインウェイから歯切れの良さと柔らかさを自在に引き出し、18作品それぞれの響きの違いを明確に描き分けて見せる。教会での収録だが残響は適度な長さに抑え、フォルテでも響きが飽和しないことに感心する。
3 J.Sバッハ 無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータ(全曲) 堀米ゆず子(Vn) EXTON / OVCL-587 独奏ヴァイオリンの位置がコンサートホールで体験する距離感に近く、自然な雰囲気で演奏に浸ることができる。最高の席で演奏を独り占めしているような心地よさ。音楽の自然な流れに身を任せたくなる演奏だ。
4 益田展行/plays Bach バッハ作品集 益田展行(Gt) fontec / FOCD9702 チェロやヴァイオリンのための無伴奏作品をギターで演奏すると、多様な音色や階調豊かなダイナミクスが作品に深い彩りを与え、聴き慣れた響きとは異なる新鮮な魅力が伝わってくる。緊密だが柔らかい空気が部屋を満たす。
5 平和への祈り~バッハ:無伴奏ヴァイオリン全曲 千住真理子(Vn) UCJ / UCCY-1049 無伴奏作品は演奏会場の残響によって演奏効果が大きく左右される。草津音楽の森国際コンサートホールで録音されたこのCDは直接音と残響のバランスが自然で、細部が鮮明に浮かび上がりつつ、和音の響きが美しい。
6 バッハ:オーボエ協奏曲集/トーマス・インデアミューレ トーマス・インデアミューレ(オーボエ/オーボエ・ダモーレ)他 camerata / CMCD-28330 オーボエとオーボエ・ダモーレそれぞれの協奏曲とヴァイオリンを加えた協奏曲、そして無伴奏のソナタという変化に富んだ選曲でインデアミューレの美音を堪能できるお薦めのアルバム。独奏とオケが理想的なバランスで溶け合う。
7 ヴァイオリン協奏曲集 ヒラリー・ハーン(vn) "ヒラリー・ハーン(Vn)アラン・フォーゲル(Ob(+))ヒラリー・ハーン(Vn)アラン・フォーゲル(Ob(+)) ロサンジェルス室内管弦楽団 ジェフリー・カハーン(Cond)" ユニバーサル / UCCG-50058 澄んだ音色と躍動的な演奏でハーンの人気を決定付けた名録音である。独奏とオーケストラが一体となって緊密な響きを生みながら、独奏の旋律はひときわ鮮やかな音色で浮かび上がり、演奏を力強く牽引する。
8 ヴィヴァルディ/チェロ・ソナタ集 アンナー・ビルスマ(Cello) Sony / SRCR 2569 グラデーション豊かなチェロの音色が素晴らしいが、アーチリュートとヴィオローネが奏でる柔らかく充実した響きも聴きどころ。オルガンとハープシコードが音場に深みを与え、立体的なステレオイメージが展開する。
9 ヘンデル:オーボエ・ソナタ集 江崎浩司(バロック・オーボエ) 伊藤一人(Cemb)他 fontec / FOCD9578 バロックオーボエの伸びやかな音が弦楽器やチェンバロと自然に溶け合いつつ、木質の柔らかい響きで空間を満たす。音像はリアルで距離も近いが、録音会場(相模湖交流センター)の自然な残響が音色に温かみを加えている。
10 ピエタ~ヴィヴァルディ:聖なるアリア集 フィリップ・ジャルスキー(C・Ten)アルタセルセ warner / WPCS-12884 しなやかな音色を奏でるオーケストラをバックにジャルスキーの繊細で表情豊かなカウンターテナーが歌い上げる。教会の残響を活かして深々とした遠近感豊かな音場をとらえており、立体的なステレオ音場が展開する。
11 ヴィヴァルディ:グローリア 新イタリア合奏団・岡山バッハカンタータ協会 マイスター・ミュージック / MM-3044 ヴィヴァルディの宗教作品のなかで人気が高く、録音、実演ともに数が多い。オーボエとトランペットが加わったオーケストラと独唱、合唱で演奏される。響きの溶け合いと一体感を重視し、柔らかい響きをとらえている。
12 テレマン:パリ四重奏曲集 有田正広(フラウト・トラヴェルソ)、トウキョウ・バロック・トリオ COLUMBIA / COCO-73131-2 パリ滞在期にテレマンが書いたとされる《パリ四重奏曲》はフラウト・トラヴェルソ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバの旋律が複雑に絡み合いながら美しい響きを生む名曲。1992年にパリで収録された名録音である。
13 ヴィヴァルディ:オーボエ協奏曲集 3 ブルクハルト・グレツナー(Ob)他 capriccio / C10317 ドイツ・シャルプラッテンレーベルの1980年代後半の録音だが、特にグレツナーの明るさと潤いをたたえたオーボエの音色が素晴らしい。教会録音だが残響過多にはならず、弦楽器とチェンバロも鮮明にとらえている。
14 J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」BWV988 アンジェラ・ヒューイット(Pf) Hyperion / CDA68146 教会の長めの残響を活かしてヒューイット自身の楽器(ファツィオーリ)から柔らかく純度の高い響きを引き出した優秀録音。スタインウェイで演奏された前回の録音と聴き比べると、今回の方が変奏ごとの音色の変化が多様で陰影に富む。
15 シェレンベルガー(オーボエ)/ イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集 ハンスイェルク・シェレンベルガー(ob)イタリア合奏団 COLUMBIA / COCO-75530 イタリアのコンタリーニ宮で録音されたイタリア合奏団とシェレンベルガーのオーボエ協奏曲集第一弾。密度が高くなめらかなオーボエと輝きのある弦楽器の音色が美しい対比を見せる。第2集とともに推薦。
16 PARIS QUARTETS VOL. 2 フロリレジウム CHANNNEL CLASSICS / CCS SA 20604 フロリレジウムによるテレマンの録音のなかでも演奏、録音それぞれのクオリティが抜きん出たアルバムである。ピリオド楽器の発音の良さを活かしつつ、柔らかく潤い豊かな音色を引き出していることに注目したい。
17 テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア ファビオ・ビオンディ(バロック・バイオリン) Glossa / GCD 923406 教会の長めの残響を活かしつつ、演奏の細部がクリアに浮かび上がる明晰さがあり、弓の速さや位置を工夫しながら多様な音色を引き出す様子を鮮やかに聴き取ることができる。柔らかさと鋭さが見事に両立した優秀録音。
18 C.P.E.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート鍵盤のためのソナタ フリーデリケ・ホイマン(ヴィオラ・ダ・ガンバ)他 ALPHA / ALPHA-080
19 ヴィヴァルディ・コン・モート ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン)他 ユニバーサル / UCCA-1099 「コン・モート」というタイトルの通り動きとコントラストの強さが際立つ鮮烈なヴィヴァルディ。オルガンの深い低音、スピードの乗ったリュートとハープシコードの鋭い音がリズムに力強いアクセントを加え、大きな起伏を生む。
20 ヘンデル:メサイア エマニュエル・アイム(Cond) ルーシー・クロウ(Sop) warner / WPCS-12876/7 エマニュエル・アイム率いるル・コンセール・ダストレが活力のある演奏を繰り広げ、《メサイア》の新しい魅力を伝える。ルーシー・クロウはじめ声楽陣の表情の豊かさにも耳を傾けたい。
21 ヘンデル:オラトリオ「メサイア」(1742年ダブリン初演版) "スーザン・ハミルトン(Sop) アニー・ギル(mezzo) クレア・ウィルキンソン(alto)" Linn Records / CKD285 最少人数に抑えることで澄んだ響きと躍動感を引き出した名演。聴き慣れた《メサイア》の響きとは異なるが、誇張や弛緩がなく、純度の高さは既存の録音からは聴くことができない。リンレコーズを代表する優秀録音。
22 《エクストン・ラボラトリー・ゴールドライン》バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番-第3番 オンジェイ・ロスコヴェッツ(ファゴット) octavia / OVXL-00078 チェコフィルの首席ファゴット奏者ロスコヴェッツがチェロ組曲に挑戦した名録音がゴールドラインシリーズで再登場。ファゴットからここまで美しい響きを引き出した無伴奏作品は他に例を見ない。教会の余韻の美しさも絶品。
23 守護天使~無伴奏ヴァイオリン作品集 レイチェル・ポッジャー(バロック・バイオリン) Channel Classics / CCSSA35513 教会の天井の高さを感じさせる伸びやかな余韻のなか、誇張のない自然なヴァイオリンの音が空間を満たす。録音会場の空気感や温度感まで伝えるリアルな録音で、ポッジャーの卓越した技巧と音の美しさを忠実に再現する。
24 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲:第1番-第6番 ピーター・ウィスペルウェイ(Vc) Channel Classics / MCCS 12298 けっして力まずに楽器を伸びやかに鳴らすウィスペルウェイの卓越したボウイングが目に見えるようなリアルなチェロのイメージが広がる。教会の残響は長めだが、チェロの艶やかな音色をマスクせず、温かく柔らかい空気感をたたえている。
25 ヴィヴァルディ 協奏曲集 ジョヴァンニ・アントニーニ (指揮)イル・ジャルディーノ・アルモニコ Teldec Das Alte Werk / 4509 94552 2 ヴァイオリンとチェロなど、複数の独奏楽器と通奏低音のためにヴィヴァルディが書いた協奏曲を6作品収録。猛烈な勢いのクレッシェンドなどオケの活発な動きと独奏楽器の艶やかな美しい音色が聴きどころ。
26 J.S.バッハ: 2台のチェンバロのための協奏曲全集 鈴木雅明(チェンバロ, 指揮)、鈴木優人(チェンバロ)、バッハ・コレギウム・ジャパン King International / KKC-5496 鈴木雅明&優人父子が独奏チェンバロを受け持ち、バッハの華麗なチェンバロ協奏曲3曲と鈴木優人編曲による管弦楽組曲第1番の2台チェンバロ版を演奏。左右に定位する2台のチェンバロを鮮明な音で聴き取れるクリアな録音である。
27 アルカンジェロ・コレッリ:ヴァイオリンと、ヴィオローネまたはチェンバロのためのソナタ 作品5 Vol.2 エンリコ・オノフリ(Vn)、イマジナリウム・アンサンブル Anchor Records / UZCL-1028 ヴァイオリン、ヴィオローネ、チェンバロのためのソナタ第2集。有名な《フォリア》の変奏を含む選曲でオノフリの自在で生き生きとしたヴァイオリン演奏の魅力が際立つ。テオルボとバロックギターの鮮度の高い音も聴き逃せない。
28 スウィート・ディーヴァ~ヘンデル・アリアス ダニエル・ドゥ・ニース(ソプラノ) Decca / UCCD-9453 ヘンデルのオペラで一気に人気を獲得したドゥ・ニースのアリア集。声の自在なコントロールや音域の広さはバロックオペラに最適で、演技力も申し分ない。クリスティ&レザール・フロリサンの演奏も起伏に富み、聴き手を引き込む。
29 ルイ・クープラン:クラヴサン曲集 大塚直哉(クラヴサン) ALM Records / ALCD-1150 クープラン一族のなかでフランソワと並ぶ実力を持つルイ・クープランはクラヴサンやオルガンなど鍵盤楽器のための優れた作品を残した。このアルバムはクラヴサンの繊細かつダイナミックな表現をリアルな音で捉えたお薦めの一枚。
30 ヴィヴァルディ:ソプラノのための宗教作品集&協奏曲集 フロリレジウム、エリン・マナハン・トマス(ソプラノ) Channel Classics / CCSSA32311 ソプラノ独唱に加え、ヴァイオリンやチェロなど独奏楽器とフロリレジウムのアンサンブルが見事に溶け合い、ヴィヴァルディならではの美しい響きが堪能できる。教会録音ならではの豊かな残響と鮮明な細部が両立した優秀録音。
31 ヴィヴァルディ:フルート協奏曲集 マリオ・アンチロッティ(フルート) カメラータ / CMCD-28337 ヴィヴァルディのフルート協奏曲は明るく華やかな作風が聴きどころ。クラヴィオルガンを含む通奏低音の厚い響きとフルートの澄み切った音色の対比を鮮やかにとらえた録音。聖クローチェ美術館の豊かな残響にも耳を傾けたい。
32 J.S.バッハ: カンタータ全集 Vol.33 -第41番, 第92番, 第130番 鈴木雅明指揮, バッハ・コレギウム・ジャパン BIS / KDC-5053 BCJのカンタータ全集は演奏と録音どちらも水準が高く、作品ごとの曲調の違いが鮮明に浮かび上がる優秀録音が揃う。本作は新年のコラール《イエスよ、いま賛美を受けたまえ》など、華やかな響きの作品を集めた一枚。カンタータ入門にも最適。
33 Vivaldi Laudate! ヨハネッテ・ゾマー(ソプラノ)、チューリップ・コンソート Channel Classics / CCS38216 ソプラノのゾマーが自ら創立したチューリップ・コンソートと組んで収録したヴィヴァルディの声楽作品集。天上から降り注ぐようなソプラノの澄んだ声と倍音をたっぷり含む柔らかい弦楽器が自然に溶け合い、極上の響きを生む。
34 J.S.バッハ:クリスマス・オラトリオ フィリップ・ヘレヴェッヘ(指揮)コレギウム・ヴォカーレ・ヘント Erato / WPCS-16236/7 ヘレヴェッヘとコレギウム・ヴォカーレがエラートレーベルで1989年に録音したクリスマス・オラトリオ。すでにこの頃から合唱の表情の豊かさ、ハーモニーの純度の高さが際立っている。柔らかい声の感触が聴き手を虜にする。
35 ルイ・クープランとその時代 ヨヴァンカ・マルヴィル(クラヴサン) Aeon / MAECD0751 17世紀半ばに製作された楽器で演奏したルイ・クープラン他のクラヴサン作品集。楽器が隅々まで鳴り切っていることが伝わる木質の美しい響きが聴きどころだが、弱音のなかにも微妙なグラデーションが感じられる。
36 VERTIGO~ラモー/ロワイエ:クラヴサン作品集 ジャン・ロンドー(クラヴサン) Erato / WPCS-13342 ラモーとロワイエの作品に焦点を合わせたロンドーの最新録音。繊細な音色とダイナミックな表現力を併せ持つクラヴサンの特徴を鮮明にとらえたダイナミックレンジの大きな録音で、リアルな楽器のイメージが眼前に広がる。
37 G.モッシ: ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 Op.1 ライラ・シャイェーグ(Vn)、イルゼ・グラドゥレ(Vc)、イェルク・ハルベック(Cemb) Pan Classics / PC10212 1680年生まれのモッシはローマで活躍したバロック後期のイタリアの作曲家。ヴァイオリンのためのソナタには和音や旋律に独自の工夫があり、演奏効果の高い作品を残している。通奏低音も含め、澄んだ音色とハーモニーの美しさに注目。
38 コレッリ:合奏協奏曲集Op.6 パヴロ・ベズノシウク(Vn, ディレクター)アヴィソン・アンサンブル Linn / CKD411 ベズノシウクとエイヴィソンアンサンブルのコレッリはどの録音も演奏と音のクオリティが突出している。このアルバムは華やかな合奏協奏曲を集めているが、弱音の柔らかさもまた格別。空気感豊かな音場の再生がカギを握る。
39 クープラン:作品集 ミエネケ・ヴァン・デル・ヴェルデン(ヴィオラ・ダ・ガンバ) Channel Classics / CCSSA18302 ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のフェルデンがF.クープランのヴィオール作品に取り組んだ逸品。ハープシコードの伴奏をこの楽器本来の小さな音量でとらえているため、ガンバの豊かな表情が自然に浮かび上がってくる。
40 バッハ: 無伴奏チェロ組曲集 オフェリー・ガイヤール(Vc) Ambroisie / AMB9905/6 ガイヤールはバッハの無伴奏チェロ組曲を2回録音しており、こちらは初回の録音。楽器との距離は比較的近いが、ダイレクトな硬さはなく、伸びやかで豊かなガイヤールの音色を堪能することができる。
41 フランソワ・クープラン 聖水曜日のための3つのルソン・ド・テネブレほか ラ・スフェラ・アルモニオーソ Channel Classics / CCSSA20306 消えていくろうそくを見つめるジャケットの写真が印象的なアルバム。最後に暗闇のなかで歌われるル・ソン・テネブレの典礼にちなんだもので、この世のものとは思えないクープランの美しい旋律にふさわしい。
42 ヴェルサイユの音楽 トリオ・マリー・アントワネット CAMPANELLA / C130090 オーボエ、ハープ、ヴィオロンという珍しい組み合わせでヴェルサイユ宮に因んだ作品に取り組んだアルバム。3人ともベルリンフィルに在籍していただけに演奏技術はずば抜けている。特にシェレンベルガーの名技は圧巻。
43 「ボリビアのバロック」~チキトスのイエズス会伝道とモクソス・インディアンのバロック音楽 フロリレジウム 、カティア・エスカレーラ(ソプラノ)ほか Channel Classics / CCSSA22105 ヨーロッパからボリビアに伝わったバロック音楽の楽譜をフロリレジウムが現代に蘇らせた話題のシリーズ第一弾。このアルバムでは作者不詳の作品も多いが、多様性あふれるバロック音楽の世界を極上の音で楽しむことができる。
44 ケイマル・バロック・コンサート - パッヘルベルのカノン ミロスラフ・ケイマル(トランペット)、スーク室内管弦楽団、ヨゼフ・スーク(指揮) クリストン / OVCC-00096 ケイマルの冴え渡るような音色で聴くと、ヘンデルやテレマンの協奏曲に生気が蘇り、音楽に生き生きとした推進力が生まれる。秋川きららホールで行われたコンサートのライヴ録音。残響を活かした弦の柔らかい音にも注目したい。
45 カッチーニ: 歌劇「エウリディーチェ」 アンサンブル・スケルツィ・ムジカーリ リチェルカール / MRIC-269 カッチーニはルネサンスからバロックへの橋渡しをした作曲家の一人。オペラ草創期の《エウリディーチェ》はその時代の代表作。指揮のアクテンは自ら歌い、テオルボの演奏も担当している。声の澄み切った音色が聴きどころ。
46 ゴットフリープ・ムファット: オルガン作品集 イェルク=アンドレアス・ベッティヒャー(オルガン) Pan Classics / PC10224 スイスの修道院の18世紀半ばに改修されたバロックオルガンで同時代の作曲家ムファットの作品を演奏したアルバム。華麗な音色ではないが、空間に染みわたるような深みのある響きが素晴らしく、空気のふるえがリアルに伝わる。
47 Ricercarの名手たち Vol.2 - ただガンバのみのため: ヴィオラ・ダ・ガンバとドイツ・バロックの2世紀 フィリップ・ピエルロ (指揮) リチェルカール・コンソート Ricercar / MRIC231 ヴィオラ・ダ・ガンバの合奏曲やガンバだけの多重奏を通して、バロックから初期古典派に至る音楽の流れを辿るという壮大なプロジェクトを具現化したアルバム。柔らかさと無限のグラデーションをたたえたガンバの魅力を忠実にとらえた録音だ。
48 ルイ15世のオーケストラ - ラモー: 管弦楽組曲集 ジョルディ・サヴァール 指揮 ル・コンセール・デ・ナシオン King International / KKC5316 「ルイ15世のオーケストラ」と題してラモーの管弦楽作品を集めた好企画。《優雅なインドの国々》から《レ・ボレアード》まで主要オペラから厳選した作品はまさに珠玉のラモー名曲と呼ぶにふさわしい。空気をたっぷり含む豊かな余韻に注目。
49 ヴィオラ・ダ・ガンバで協奏曲を - 野趣と洗練, バロックからロココへ ヴィットリオ・ギエルミ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)イル・スオナール・パルランテ Passacaille / PSC972 17世紀末から18世紀にかけてのヴィオラ・ダ・ガンバ協奏曲を集めた注目盤。ギエルミの自由闊達な弾きこなしはもちろんだが、リコーダーやツィンバロムの個性的な音も克明にとらえており、録音のクオリティの高さが際立つ。
50 J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第4番 青木十良(チェロ) fine NF / NF20303 青木十郎のバッハ第3弾。大きなホールならではの開放的な余韻が演奏のスケールの大きさを際立たせる。青木十郎は収録時に90歳を超えているが、一音一音の明確な響きと自然なフレージングは驚くばかり。
51 テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア 寺神戸亮(ヴァイオリン) Aliare / COGQ-54/5 テレマンの無伴奏ヴァイオリン作品にはピリオド楽器の演奏でなければ伝わりにくい響きの美しさや動きの軽やかさがある。ボウイングのスピード感や発音の速さなど、バロックヴァイオリンの特徴を克明にとらえた優秀録音。
52 ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」,他 アンネ=ゾフィー・ムター (ヴァイオリン)、 トロンハイム・ソロイスツ Deutsche Grammophon / POCG-10227 ムターがドイツの画家グラウブナーに触発されて演奏したという個性的な《四季》の演奏。トロンハイム・ソロイスツがムターの美音を際立たせつつ、生気あふれる演奏を繰り広げている。1999年コペンハーゲンでのライヴ録音。
53 銘器クロルで弾く フランス・クラヴサン音楽選集 渡邊順生(クラヴサン) ALM Records / ALCD-1147 1776年にクロルが製作したオリジナルの楽器を用いてルイ・クープラン、ラモー、フォルクレのクラヴサン作品を演奏したアルバム。小音量で聴いても音の輪郭が鮮明で、豊かな色彩感で名器の響きが現代に蘇る。
54 J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻 アブデル=ラーマン・エル=バシャ(ピアノ) Triton / OVCT-00111 エル=バシャは第2巻でもベヒシュタインを相模湖交流センターに搬入して録音に取り組み、大きな成果を上げた。音色の美しさと自然な抑揚は特に注目に値する。このホールの自然な余韻が柔らかい音色を際立たせる。
55 F.クープラン: クラヴサン曲集第1巻, 第2巻より -第1組曲, 第5組曲-第8組曲, 「クラヴサン奏法」よりプレリュード 第3番, 第5番-第7番 フレデリク・アース(クラヴサン) Alpha / ALPHA-136 フランスのバロック音楽を代表する作曲家F.クープランのクラヴサン作品をベルギーのフレデリク・アースが18世紀のオリジナル楽器で演奏。華やかな高音と深みのある低音が明瞭なコントラスを見せ、作品の奥の深さを浮き彫りにする。
56 バッハ・エディション Vol.2 西山まりえ(チェンバロ) Anthonello Mode / AMOE10005 J.S.バッハの鍵盤作品に継続して取り組む西山まりえがイタリア協奏曲に挑戦したシリーズ第2集。一音たりとも曖昧にしない鮮明な録音を通して、作品を細部までていねいに研究した成果を聴き取ることができる。
57 「バロック・ハープとの出会い」 西山まりえ(バロック・ハープ) Anthonello Mode / AMOE10010 バロック・ハープが奏でるフレスコバルディ、カッチーニ、モンテヴェルディらイタリアバロックの大家の作品は、時間の流れを忘れさせるような柔らかい響きをたたえている。モダンハープに比べて陰影が深く、繊細な音色が聴きどころだ。
58 オンブラ・マイ・フ~ヘンデル:アリア集 ルネ・フレミング(ソプラノ) Decca / UCGD-7038 ヘンデルのオペラはフレミング得意のレパートリーで、柔らかい声質と豊かな表現力によって独壇場というべき世界を作り上げている。声の魅力にフォーカスを合わせた優秀録音である。
59 そよ風のささやきに~ヴィヴァルディ・オペラ・アリア集 チェチーリア・バルトリ(ソプラノ) Decca / UN925 イル・ジャルディーノ・アルモニコの伴奏でバルトリが歌うヴィヴァルディのオペラアリアは、極限まで劇的緊張感を高めつつ、生命力あふれるダイナミックな動きがあり、経験したことがないような高揚感を誘い出す。
60 バッハ: ゴルトベルク変奏曲 BWV988 塚谷水無子(オルガン) Pooh's Hoop / PCD-1204 オランダ、ハーレムのミューラー製オルガンで演奏したゴルトベルクは、オルガンならではの多様な音色がもたらす新鮮な響きを楽しむことができる。聴き慣れた変奏曲のなかから思いがけない発見が得られるはずだ。
61 「ヴィヴァルディ: エルヴィーラへの愛」 ラ・セレニッシマ Linn / CKD281 カンタータ《エルヴィーラへの愛》に因んでソプラノとヴァイオリンに焦点を合わせたヴィヴァルディのカンタータ&ソナタ集。独奏、独唱をそれぞれ鮮明な音でとらえたクリアな録音が聴きどころ。澄んだ余韻が弱音の美しさを際立たせる。
62 ヴィヴァルディ: 協奏曲集 アンサンブル・アマリリス、エロイーズ・ガイヤール(Rec)、オフェリー・ガイヤール(Vc) Ambroisie / AMB9944 ヴィヴァルディが書いた膨大な作品のなかからフルート、リコーダー、フラウティーノ、チェロの協奏曲を集めたユニークなアルバム。独奏楽器だけでなくオーケストラの各楽器もソロのようによく歌い、アンサンブルの魅力がダイレクトに伝わる。
63 ヴィヴァルディ:チェロと通奏低音のための9つのソナタ  鈴木秀美 、 ライナー・ツィパーリング(チェロ)、エーロ・パルヴィアイネン(アーチリュート) アルテ・デラルコ / TDK-AD012 ヴィヴァルディのチェロソナタはチェロとチェンバロを通奏低音に使うことが多いが、ここではチェロとアーチリュート、ギターという組み合わせで演奏。音色が揃うことで音の豊かな階調を引き出すことに成功している。
64 J.S.バッハ:カンタータ集 Vol.8 シギスヴァルト・クイケン指揮ラ・プティット・バンド Accent / ACC25308 クイケン&ラ・プティット・バンドのバッハ、カンタータ集第8弾。冒頭の《わがため息、わが涙は》をはじめとする4作品を収録する。鮮明な音像の独唱と背後に広がるオーケストラを立体的に再現し、録音の水準の高さが際立つ。
65 「ガブリエーリ・イン・ヴェニス」 ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団 、 ヒズ・マジェスティーズ・サクバッツ & コルネッツ The Choir of King's College / KGS0012 ガブリエリはルネサンス期の作曲家だが、一部作品は初期バロックに重なる。このディスクは楽譜の出版400年を記念してケンブリッジで収録された声楽作品集。キングスカレッジの長い残響のなかに澄んだ声が広がっていく。
66 ニコラ・マッティス:エア集第3巻、第4巻より テアトルム・アフェクトゥム Aeolus / AE10226 ロンドンを舞台に活躍したニコラ・マッティスのエア集。リコーダー、リュート、ヴァイオリンなど多様な楽器を自在に組み合わせたテアトルム・アッフェクトゥームの演奏は活力にあふれ、聴き手を強く引き込む力がある。
67 シュッツ:クリスマス作品集 シギスヴァルト・クイケン指揮ラ・プティット・バンド Deutsche Harmonia Mundi / 05472 77511 2 ドイツのバロック音楽草創期の大作曲家シュッツが書いたクリスマスに因む作品を収録。クイケン&ラ・プティット・バンドの演奏は繊細で緻密、オルガンの深い響きとドイツ語の歌詞をどちらも忠実に再現する鮮明な録音。
68 『私の一番好きな楽器』ヘンデル:オーボエのための協奏曲、ソナタそしてアリア集 クセニア・レフラー(オーボエ)、マリー・フリーデリケ・シュレーダー(ソプラノ)、バッツドルファー・ホーフカペレ Accent / ACC24295 レフラーのオーボエ独奏によるヘンデルのソナタと協奏曲を集めたアルバムだが、オーボエのオブリガートが美しいソプラノのアリアを加えるなど、変化に富んだ選曲が楽しい。ヘンデル作品の旋律の美しさを堪能したい人にお薦め。
69 『愛しさと美しさ』J.C.バッハ: カンタータ《愛しい女よ、汝は美しく》ほか ヨス・ファン・フェルトホーフェン(指揮)、オランダ・バッハ協会ほか Channel Classics / CCSSA27308 シュッツのモテット、J.S.バッハのカンタータなど「愛しさと美しさ」のテーマでで厳選した声楽曲をヨハネッテ・ゾマーら声楽陣が極上のハーモニーで歌い上げる。ゆったりと柔らかい空気に包まれた感触が耳に心地よい。
70 ヴィヴァルディ:グローリア/マニフィカトほか リナルド・アレッサンドリーニ指揮コンチェルト・イタリアーノほか Opus 111 / OP30-195 《グローリア》を中心に協奏曲、マニフィカトなどを収録したコンチェルト・イタリアーノの名録音。快速テンポの歯切れ良さだけでなく、見通しの良いハーモニーや静と動のコントラストの強さなど、聴きどころは数え切れないほどだ。
71 ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ集 ジーン・キム(ヴァイオリン)、岡田龍之介(チェンバロ、オルガン) ALM Records / ALCD-1097 チェンバロまたはオルガン伴奏によるヘンデルのヴァイオリンソナタを収録。ピリオド楽器の音を残響をあまり加えずストレートにとらえているため、鋭さが際立つが、オルガン伴奏の作品では柔らかい低音との対比が美しい。
72 バッハ:ブランデンブルク協奏曲集(全曲) クラウディオ・アバド(指揮)、モーツァルト管弦楽団 Deutsche Grammophon / UCCG-1520/1 豪華なソリストを集めてレッジョ・エミリアで行われたコンサートのライヴ録音。独奏楽器を鮮明なイメージでとらえているが、アンサンブル全体の響きにも統一感があり、部分と全体のバランスが非常に優れている。
73 D.スカルラッティ:チェンバロ・ソナタ集 中野振一郎(チェンバロ) マイスター・ミュージック / MH-1179 大きな跳躍や激しく動くリズムなど、スカルラッティの鍵盤作品は大胆な手法が目立つ。チェンバロで演奏するとその過激さがストレートに伝わり、現代の聴き手にも刺激的に響く。適度な距離感で楽器全体の響きをとらえた録音。
74 ヴィヴァルディ: 協奏曲「恋人」 江崎浩司(リコーダー)、長久真実子(チェンバロ)、永谷陽子(ファゴット) マイスター・ミュージック / MH-2042 ヴィヴァルディのソナタと協奏曲を中心にリコーダー、ファゴット、チェンバロのソナタ、協奏曲を収録。協奏曲ではヴァイオリンパートをリコーダーで演奏し、躍動感あふれる演奏を繰り広げている。バロックファゴットの豊かな低音にも注目。
75 D.スカルラッティ: ソナタ集 アンジェラ・ヒューイット(Pf) Hyperion / PCDA67613 スカルラッティはバッハ、ヘンデルと同じ年に生まれ、鍵盤楽器の傑作を遺した。ヒューイットは磨き抜かれた美しい音色で作品ごとの特徴を際立たせ、ピアノで演奏する意義を示した。ファツィオーリの美しい音色を忠実にとらえた優秀録音。
76 パーセル:歌劇「インドの女王」 パーセル・シンフォニーほか Linn / CKD035 パーセルの《インドの女王》はイギリスのバロックオペラを聴くなら欠かせない作品。旋律の美しさに加え、管弦楽の使い方も洗練されている。一枚だけ選ぶなら声楽陣の澄んだ歌唱が素晴らしいパーセルシンフォニーの録音をお薦めする。
77 テレマン:絵画的序曲集 アルテ・デイ・スオナトーリ BIS / BIS-1979 アルテ・デイ・スオナトーリはポーランドのピリオド・アンサンブル。ポーランド協奏曲や組曲《悲喜劇》など珍しい作品に真摯に取り組み、聴き手の想像力を刺激する表情豊かな演奏を繰り広げている。組曲の雄弁な描写も聴きどころの一つ。
78 ヴィヴァルディ: 協奏曲集「ラ・ストラヴァガンツァ」 レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン)、アルテ・デイ・スオナトーリ Channel Classics / CCSSA19503 この作品の決定盤というべき力強くスケールの大きな演奏で、静と動の対比を鮮やかに描き出した録音の素晴らしさも特筆に値する。少人数の弦楽合奏とは思えない豊かな響きを引き出しつつ、独奏の繊細な表情も克明にとらえている。
79 『新世界~クリオーリョのフォリア』 "ジョルディ・サヴァール(指揮)エスペリオンXXIほか 全ての画像を見る クラシック 古楽・バロック . ジャンル別のオススメ クラシック 【SACDハイブリッド】 El Nuovo Mundo - Folias Criollas ジョルディ・サヴァール 、 エスペリオンXXI" Alia Vox / AVSA9876 メキシコのベラクルス経由でバロック音楽は中南米にも届いた。そこで現地の旋律やリズムを吸収しながら生まれたローカルな音楽の世界に焦点を合わせたサヴァールならではのユニークなアルバム。立体的で深みのある音場は圧巻。
80 ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集 Op.3 「調和の霊感」 レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン) 、 ブレコン・バロック Channel Classics / CCSSA36515 《調和の霊感》は12のヴァイオリン協奏曲で構成されるヴィヴァルディの代表作。ポッジャーとブレコンバロックによる演奏は、静と動の対比が鮮やかで、バロック音楽の醍醐味を味わうには最適。独奏の音色の美しさも格別だ。
81 J.S.バッハ:ピアノ協奏曲集 アンドレア・バケッティ(ピアノ, 指揮)、RAI国立交響楽団 Sony Classical / SICC-30266/7 チェンバロの奏法を活かすなど、バッハの鍵盤楽器のための協奏曲に新たなアプローチで取り組んだ、バケッティの弾き振りによる意欲的な演奏。明快な粒立ちのピアノは演奏全体に力強い推進力を与え、クリアな響きを生んでいる。
82 ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲『お気に入り』 他 東京ヴィヴァルディ合奏団 マイスター・ミュージック / MM-1190 イタリア合奏団などで活躍してきたジョヴァンニ・グリエルモが東京ヴィヴァルディ合奏団と共演し、冴え渡る音色で見事な独奏を聴かせる。重心の低い弦合奏の響きと自然な残響が柔らかく溶け合い、温かみのある響きを生んでいる。
83 アレルヤ!~バロック・モテット集 ユリア・レージネヴァ(ソプラノ)ほか Decca / UCCD-1415 レージネヴァはロシア出身のソプラノ。安定した技巧に支えられ、澄んだ声で起伏の大きな歌唱を繰り広げる。イル・ジャルディーノ・アルモニコの切れの良い演奏とバロック時代ならではの華やかなモテットが見事なコントラスを描き出す。
84 バッハ:ヴァイオリン・ソナタほか ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)、マイケル・イサドーア(ピアノ) TOKYO FM / TFMC1005 1976年東京文化会館でのライヴ録音。アナログマスターからダイレクトにCDマスターを製作しており、シェリングの澄んだ音色が鮮やかに蘇る。イサドーアのピアノ伴奏と無伴奏作品を収録。特に後者の密度の高い響きが聴きどころ。
85 バッハ:無伴奏チェロ組曲全6曲 ピエール・フルニエ(チェロ) TOKYO FM / TFMC1010 1972年に東京虎ノ門ホールで行われた演奏の放送用ライヴ録音。当時65歳のフルニエの演奏は力強く雄弁だが、けっして力んだ音ではない。40年以上前の録音だが、時の経過を感じさせない躍動感あふれる音に圧倒される。
86 ラモー:クラヴサン合奏曲集 トリオ・ソネリー Erato / WPCS-16222 ヴァイオリンのモニカ・ハジェット率いるトリオ・ソネリーが1986年に録音したラモーのクラヴサンを中心にしたコンセール集。アンサンブルの楽しさが湧き出てくるような動きのある演奏を鮮度の高い音でとらえている。
87 バロック・アルバム イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)ほか Warner Classics / WPCS-13299/300 パールマンがズーカーマンらとともに1979〜80年に取り組んだスタジオ録音。最近のピリオド奏法とは目指す響きも奏法も異なるが、バロックの様式を受け継いだC.P.Eバッハのトリオ・ソナタなど、いま聴くとかえって新鮮な印象を受ける。
88 2本のリコーダーによるトリオ・ソナタの旅 山岡重治 (リコーダー)、太田光子 (リコーダー)、平尾雅子 (ヴィオラ・ダ・ガンバ)、桑形亜希子 (チェンバロ) マイスター・ミュージック / MH-2149 コレッリからサンマルティーニに至るバロック全盛期のトリオ・ソナタに焦点を合わせ、2本のリコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバによる3声の美しい調和を追求したアルバム。素朴さと豊かな陰影をたたえた響きが美しい。
89 バッハ: ゴルトベルク変奏曲 BWV.988 シュ・シャオメイ(ピアノ) Accentus Music / KKC5625 数奇な運命を辿ったシャオメイが25年ぶりにゴルトベルク変奏曲の再録音を行った。一音一音に込めた表情の起伏の大きさと静寂のなかに刻み込まれた深い陰影が自然に浮かび上がる優れた録音である。
90 バッハ: フルート・ソナタ集 有田正広(フルート) Aliare / COGQ-40 バロックフルートの名手有田正広があえてモダン楽器でバッハの無伴奏を含むソナタに挑戦して大きな成果を上げたアルバムだ。ピリオド奏法を活かしつつ均質な音色や自在な運動性などモダン楽器の長所も存分に発揮させている。
91 サンマルティーニは, 英国で - 合奏協奏曲, 序曲, オーボエ協奏曲 レ・ムファッティ Ramee / RAM1008 ジュゼッペ・サンマルティーニはイギリスで活躍したイタリアの作曲家兼オーボエ奏者。合奏協奏曲に焦点を合わせた本アルバムはソロと合奏の対比が鮮やかで、創意あふれるサンマルティーニの真髄を堪能することできる。
92 ヴィヴァルディ:協奏曲集作品8 「四季」 ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)ほか Decca / 4756188 各パート一人という最小編成で演奏しているにも関わらず、弱音からフォルテに至るダイナミックレンジが広大で、音色のコントラストも強い。ヤンセンが目指す響きを忠実に再現したと思われるスケールの大きなサウンドに注目。
93 パーセル:歌劇「ディドとエネアス」 コリン・デイヴィス指揮アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ、ジョン・オールディス合唱団 PentaTone Classics / PTC5186230 英国のバロックオペラを代表する作品にデイヴィス&アカデミー室内管が取り組んだ1970年の録音。フィリップスのアナログ4chマスターからリマスタリングされ、精妙な空気感と瑞々しい音色が見事に蘇った。
94 バッハ:ヨハネ受難曲 ルネ・ヤーコプス指揮ベルリン古楽アカデミー、RIAS室内合唱団、ベルリン大聖堂合唱団 Harmonia Mundi / HMC802236.37 指揮者を取り囲むように合唱、独唱、オーケストラを配置するなど、録音に焦点を合わせて独自の効果を狙っている。ステレオ再生でヤーコプスの意図を完全に再現するのは難しいが、合唱の役割の大きさに気付かせるなど、顕著な効果がある。
95 ヘンデル:合奏協奏曲 op.6 ヤン・ヴィレム・デ・フリエンド 指揮コンバッティメント・コンソート・アムステルダム Challenge Classics / CC72570 ヘンデルの合奏協奏曲は名演奏&名録音がたくさんあるが、コンバッティメント・コンソート・アムステルダムの録音もそこにぜひ加えたいアルバムだ。独奏楽器はもちろんだが、通奏低音を含む各声部が鮮やかに浮かび上がるクリアな録音。
96 ヴィヴァルディ: チェロ協奏曲 ジャン=ギアン・ケラス(Vc)、ゲオルク・カッルヴァイト指揮ベルリン古楽アカデミー Harmonia Mundi / KKC5186 ケラスがベルリン古楽アカデミーと共演したチェロ協奏曲のほか、オケ単独で演奏したシンフォニアを収録。スタジオ収録だがまるでライヴのような熱気が感じられ、チェロ、オケどちらも勢いのある音を生々しくとらえている。
97 ミッション チェチーリア・バルトリ(メッゾ・ソプラノ)、ディエゴ・ファソリス指揮イ・バロッキスティ Decca / UCCD-9885 謎の多い17世紀イタリアの作曲家ステッファーニに焦点を合わせてバルトリが作品を「発掘」し、現代に蘇らせた意欲的なアルバムである。劇的緊張感の高さや陽気な作風など、隠れた名作の特徴を活写した演奏が蘇る。
98 バッハ:平均律クラヴィーア曲集全曲 アンドラーシュ・シフ (ピアノ) ECM New Series / UCCE-2082/5 シフの平均律クラヴィア曲集の再録音はECMレーベルから登場。ペダルをほとんど使わず明晰な響きを再現しながら音色は多様で色彩感に富み、豊かな階調を描き出す。シフ自身がそれぞれの調から想起する色彩の話が興味深い。
99 ヘンデル:水上の音楽、王宮の花火 サヴァール、ル・コンセール・デ・ナシオン 長い残響にも関わらず演奏のディテールやしなやかな表情が手に取るように伝わる名録音。ヘンデル人気2作品の決定盤であり、アリアヴォックスレーベルの代表作でもある。柔らかい管楽器の音色が最大の聴きどころ。
100 バッハ:フランス組曲 リチャード・エガー 繊細で上質な音色でチェンバロの魅力をとらえた優秀録音。楽器のイメージが広がりすぎず、かといって小さく萎縮することもない。低音、中音、高音の各声部のバランスが優れていることもも見逃せないポイントだ。
101 ラモー:輝きの音 クルレンツィス 音楽の骨格と下支えがしっかりした力強いサウンド。鮮明だが全体を確実に支える通奏低音が特に素晴らしい。リズムがはっきりと浮かび上がり、ラモーの音楽の特徴が浮かび上がる。華やかさと柔らかさが両立した録音だ。
山之内正

山之内正(やまのうちただし)

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、1990年以降はフリーランスで活動。オーディオ、デジタルAV、ホームシアター分野の専門誌やウェブサイトを中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。近著:「目指せ!耳の達人」(共著、音楽之友社)、「ネットオーディオ入門」(講談社ブルーバックス)など。

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