音楽コラム「Classicのススメ」


2005年03月②/第06回 聖週間に《パルジファル》を

 クラシックの世界で、毎年特定の時期にきまって演奏される曲というと、日本では何といっても年末の「第9」だ。

 しかしよく知られているように年末の「第9」というのは、欧米では旧東独などに例があるくらいで、ほぼ日本独自の習慣である。では、ヨーロッパで特定の時期に結びついた作品は何か。バッハなどの教会音楽(特定の祭日のための作品が多いのだから当然だ)とともにあげられるのが、春の聖週間(復活祭前の1週間)の前後に上演される《パルジファル》だ。

 これは作曲者ワーグナーが意図したことではないが(彼はこの作品の上演を夏のバイロイト音楽祭だけに限定するように遺言していたから、春には上演できない)、作品中に聖金曜日(キリスト受難の日)が出てくるため、作曲者の著作権が切れた1914年以降は、各地の歌劇場が聖週間に上演するようになった。

 今年の復活祭は3月27日、聖週間はその前の20日からということで、「BBC Concert」でも20日と27日の2週間にわけて、《パルジファル》をお送りする。指揮はラトルで、2000年のプロムスでの演奏会形式のライヴ録音だ。

 オーケストラはロッテルダム・フィルだ。これは「?」と思われる方もおられるだろう。実は彼らはアムステルダムのネーデルランズ・オペラの歌劇場オーケストラとしても活動しており、この《パルジファル》も、元はそこでラトルの指揮によって上演したプロダクションなのである。2001年には《トリスタンとイゾルデ》もラトルは指揮している。つまり、オペラのオーケストラとして、ラトルが最も信頼する楽団の一つなのだ。

 なおラトルは、今年1月にウィーン国立歌劇場へこの作品でデビューを飾って大評判となったばかり。その原型とも言うべき5年前のこの公演では、どんな清新な演奏を聞かせてくれるのか。乞ご期待。

 

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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