音楽コラム「Classicのススメ」


2005年07月①/第13回 スヴェトラーノフの力強い響きを

 いつごろからか、ロシアの指揮者たちが日本でも大きな関心を払われるようになっている。ムラヴィンスキー、コンドラシン、現代のゲルギエフ、バルシャイなどがそうだ。

 なかでも現在CD店の店頭で特に人気が高いのが、エフゲニー・スヴェトラーノフである。ロシア国立交響楽団(旧ソヴィエト国立交響楽団)との来日やnhk交響楽団への度重なる客演で、徐々に熱狂的なファンを増やしていった。2002年5月に73歳で急逝したときの彼らの落胆ぶりはひどいものだった。それから早くも3年が経とうとしているが、しかしその人気は一向に衰える気配さえなく、廃盤の復活や初出音源の登場など、死してなおその話題性の大きさは変わっていない。

 彼の魅力は、「ロシアの指揮者」という言葉がもつイメージをそのまま具現化してくれたことにある、といってよいだろう。豪壮雄大、狩野派の絵を想わせる肉太な響き。自国ロシアの音楽だけでなく、フランスやドイツの作品でもその流儀を変えずに貫きとおす、強引ともいえる頑固さ。

 ところでロンドンという町は、ロシアの音楽家への熱狂の度合において、東京に優るとも劣らぬところである。たとえばロジェストヴェンスキーの高い人気は、 30年以上にわたって続いている。スヴェトラーノフももちろん例外ではない。ソヴィエト国立交響楽団とのツアーやロンドン交響楽団などへの客演は、むしろ日本よりも早い時期から大喝采を浴びてきた。

 今回の「BBC Concert」では、1968年から78年にかけてのスヴェトラーノフのロンドンでのライヴを、2週続きでお送りする。とにかくCDの多い人なので、一部すでにCD化されている曲もあるが、ベートーヴェンの《皇帝》協奏曲やブラームスの交響曲第3番など、なるべく録音の少ない曲目を選んでみた。ファンの方も、これから聴いてみようという方も、お楽しみに。

 

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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