音楽コラム「Classicのススメ」


2007年09月/第48回 黄金時代の夢

 どうやらまたマーラー・ブームらしい。東京では7月にインバルとフィルハーモニア管弦楽団が四日間のマーラー・チクルスを開催したし、CDも新録音が毎月いろいろと登場している。
 ブームの再来を早い段階で意識づけたのは、アバド率いるルツェルン祝祭管弦楽団によるマーラー演奏だろう。アバドという人自身はベルリン・フィルのシェフになる以前もその最中も、マーラーを絶えず指揮し続けている人だが、マーラー・チェンバー・オーケストラを中心にゲスト・メンバーで強化拡大したこのオーケストラを手にしたときから、そのマーラー演奏は新しいエポックを迎えたようである。
 そしてそれはそのまま、音楽界全体の潮流の変化をも示していた。マーラー・ブームの再来と、そしてかつてのカラヤン時代の華やかなザルツブルクを想わせるような、「音楽祭の都」としてのルツェルンの浮上。ルツェルン音楽祭も1938年からの長い歴史を持ち、カラヤンはここを重視してベルリン・フィルなどと一緒に必ず演奏会を開いていたほどなのだが、オペラ中心のザルツブルクに較べると、どうしても影に隠れがちだった。
 しかし今や、シンフォニーの分野においてはザルツブルクに勝るとも劣らぬ豪華さと話題性を誇っている。その中心にあるのがマーラーの交響曲なのだ。9月最終週の「ユーロ・ライヴ・セレクション」では、ドイツ語圏の超一流交響楽団が顔を揃えた同音楽祭の模様をお送りする。どうぞお楽しみに。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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