音楽コラム「Classicのススメ」


2007年12月/第51回 1959年組の活躍

今年は「1959年組」の指揮者たちが次々と来日して、それぞれに素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
1959年組とは、シルマー、クライツベルク、パッパーノ、ティーレマン、準メルクル、ルイージ(ほぼ来日順)である。50歳を間近に控えていままさに旬の、心身のバランスのとれた、精力的な活動を欧米各地で繰り広げているが、日本にもかなり頻繁に来てくれることが嬉しい。
みな、相異なる個性と得意分野をもっている点も面白い。歌劇場やオーケストラなどの実演の場に加えて、レコーディングの方でも種々のレーベルに分散して、色々なジャンルの曲を録音してきた。しかし、そろそろ足場が固まってきたというか、特定のポスト、特定のレーベルに腰を落ち着けて、じっくりと成果を挙げるべき時期に入ってきたようである。今年の来日公演やCDには、そうした気配が如実にうかがえるようになってきていて、その意味で今後への期待をいっそう増してくれるものが多かった。
そのなかでも特に、今までよりもう一段上のレベルの仕事をこれからしてくれそうな予感があるのが、準メルクル(写真)だ。2005年にフランス国立リヨン管弦楽団の音楽監督になって以後の充実ぶりが、最近の新譜(アルトゥス、ナクソス)には明確に現れている。すっきりしたフレージングのセンスと適切なテンポ感覚、透明な響きといった魅力が、はっきりと形をとりはじめているのだ。自分に合ったオーケストラ、つまり「よい楽器」を、この指揮者はいま手にしているのではないか。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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