音楽コラム「Classicのススメ」


2009年08月/第71回 男は、タフでなければ生きていけない

「男は、タフでなければ生きていけない」
 フィリップ・マーロウだったかのこの言葉を、ゲルギエフとバレンボイムの名を聞くたびに思い出す。
 歌劇場の監督というのは雑務も多くて大変なはずだが、さらに他のオーケストラにもどんどん客演し、音楽祭や臨時編成のオーケストラを主宰し、倦むことを知らずに世界を飛び回る。
 バレンボイムの場合、ベルリンの歌劇場でオペラだけでなくバレエまで指揮している。ロシアの指揮者ならともかく、ドイツではバレエなど下っぱの楽長が振るもの(指揮者の音楽的主張よりもダンサーの都合が優先されるため)なのに、嬉々としてそれをやる。
 かつての本職だったピアノだって、おろそかにはしていない。ソロ・リサイタルやそのライヴ盤が出続けているし、オーケストラと共演して弾き振りすることにも熱心だ。日本でも、弾き振りをたびたび披露している。
 今月29日の「ワールド・ライヴ・セレクション」では、ウィーン・フィルを指揮するだけでなく、「スペインの庭の夜」とカーターの「サウンディング」では、独奏ピアノまで担当するバレンボイムを聴ける。
 ちょうどその少し後の9月には、ミラノ・スカラ座の来日公演に帯同して、ヴェルディの「アイーダ」を指揮することになっている。ゼッフィレッリ演出の豪華絢爛な舞台に負けない、タフな音楽が響くはずだ。
 そのかれとウィーン・フィルの演奏会。どうぞお楽しみに。


 

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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