音楽コラム「Classicのススメ」


2010年06月/第81回 アルミンクの過去、現在、未来

 

 クリスティアン・アルミンクが新日本フィルの音楽監督に就任したのは、7年前の2003年秋のことである。
 ウィーン生れのこの指揮者は当時まだ32歳という若さだったから、この決定には驚かされた。日本のオーケストラのシェフになる外国人は、ヴェテランが多かったからだ。
 しかしその起用は、けっしてギャンブルではなかった。ちょうどその頃から、内外のオーケストラで優秀な若手指揮者が何人も活躍しはじめたことを思えば、指揮者の若返りはむしろ世界的な潮流だったのである。
 東フィルの常任エッティンガー、都響の首席客演フルシャ、日フィルの首席客演インキネン、新日本フィルなどに客演のハーディング、新国立劇場の常連フリッツァは東京でもおなじみの顔ぶれだし、世界的にもデュダメル、ユロフスキー兄弟、二人ペトレンコ、ソヒエフ、ネルソンス、ヴォルコフ、ネトピル、セガン、ティチアーティ、フランク、オロスコ=エストラーダ等々、70&80年代生れの俊英は、まさしく枚挙に暇がない。
 そのなかでアルミンクの魅力は、清新で澄んだ響きと明晰な構成力と、そして意欲的なプログラミング。シーズンのテーマを決め、現代曲や大規模な声楽作品を採用して、大きな成果を残している。契約延長を重ね、13年まで10年間も務めることになったのは、楽団側と指揮者が強い信頼関係に結ばれていることの何よりの証明だ。
 昨年ライヴ録音されたフランツ・シュミットの「七つの封印を有する書」は、黙示録の最後の審判を描いた、隠れた傑作オラトリオ。指揮者とオーケストラの過去、現在、未来が、そこに聴けるだろう。


 

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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