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音楽コラム「Classicのススメ」


2006年02月①/第29回 アバドのライフワーク

 2月前半のBBC Concertでは、アバド指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による、マーラーの交響曲を2曲ご紹介する。

 すでによく知られていることだが、アバドはマーラーの交響曲の録音に、ひとかたならぬ情熱を注いできた。今回お送りする第4番と第9番の場合、1回目の商業録音はそれぞれ1977年と87年に、ともにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して行なっている。

 その後、ベルリン・フィルの芸術監督への就任を翌年に控えた1989年からは、このオーケストラによるマーラー作品の録音プロジェクトを開始した。これは監督辞任後の現在も継続中で、第9番が1999年に、そして第4番は昨2005年に録音されて、発売されたばかりである。

 さらにこれらのレコード用録音とは別に、映像ソフトでもマーラーの録音録画を開始していて、第9番が2004年のグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団(アバドが手塩にかけて育ててきた団体)とのライヴ演奏がDVDになっている。第4番はまだだが、いずれこのオーケストラか、おそらくルツェルン祝祭管弦楽団との演奏が商品化されるに違いない。

 アバドによる最初のマーラーの商業録音は1976年の《復活》だから、今年はちょうどそれから30年目ということになる。この間、90年代にはブルックナーの方がマーラーよりも人気を博してもいたが、アバドは目移りせずに、ライフワークのようにマーラーを指揮し続けてきた(ベルリン・フィルのブルックナー演奏は、ヴァントに任せてしまったようだった)。

 今回お送りするのは1991年と94年、CD化されたベルリン・フィルとの録音よりも以前の、プロムスでの演奏である。若く熱い5000人の聴衆に囲まれての、ライヴ録音だ。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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