音楽コラム「Classicのススメ」


2006年09月/第36回 ショスタコーヴィチの時代は来るか?

 1980年代に、マーラーの交響曲が実演でもCDでも大人気となったときがあった。
 そのとき、チラホラとささやかれていたのが、「次はショスタコーヴィチだ」という言葉だった。
 マーラーの次はショスタコーヴィチ・ブームが来る、ということである。マーラーの後の時代で、演奏会の中心的レパートリーである交響曲を15曲も書いて、たっぷりと楽しめるようにした大作曲家といえば、ショスタコーヴィチしかいないからだ(数だけでいえばミャスコフスキーとかホヴァネスとかブライアンとかもいるが、彼らはマイナーだ)。
 しかし1990年代、ショスタコーヴィチの実演やCDは数を増やしたが、ブームとまではならなかった。代わりに来たのは意外にも、ブルックナーの大ブームだった。
 そして、いまはそのブルックナー・ブームも終わって、時代は次にどこへ向うか、気配しか見えないところである。マーラーもリバイバルしつつあるけれど、新鮮味において落ちることはいうまでもない。
 ショスタコーヴィチ・ブームは来るか。
 数年前、わずか2500円前後で買える交響曲全集が大ヒットして、その音楽への親しみの度合いは大きく増している。それが次の段階へつながるか、どうか。
 ともかく、生誕100年の今年に、あらためて彼の音楽をまとめて聴いてみよう。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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