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音楽コラム「Classicのススメ」


2009年01月/第64回 2008年ザルツブルク音楽祭から

 ベネズエラの俊英指揮者グスターボ・ドゥダメルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラは旋風を巻き起こしているが、昨年のザルツブルク音楽祭にも登場、アルゲリッチとカプソン兄弟とともにベートーヴェンの三重協奏曲を演奏した。今月3日の放送では、それにくわえて当日のアンコール、彼らの十八番バーンスタインの「マンボ」やラデツキー行進曲などで、熱狂的な演奏ぶりを聴けるのがポイントだ。
 翌週10日の放送にも、期待の若手指揮者が登場する。カナダのフランス語圏モントリオールで活躍、ゲルギエフの後任としてロッテルダム・フィルのシェフとなったヤニック・ネゼ=セガンである。ネトレプコの代役に抜擢されたニーノ・マチャイーゼとローランド・ビリャソンを主役コンビとするグノーの歌劇「ロメオとジュリエット」で、どんなフランス音楽を聴かせてくれるか楽しみだ。
 一方、中堅では小澤征爾を継いでウィーン国立歌劇場の音楽監督となるウェルザー=メストが、手兵のクリーヴランド管弦楽団をあえてピットに入れて演奏した、ドヴォルジャークの歌劇「ルサルカ」もカミッラ・ニルンドの外題役とあわせ、精妙で透徹した表現で評判になった。
 また、近年レパートリーをためらうことなく拡げて、バロック専門から次代の巨匠へと羽ばたきつつあるミンコフスキが、カメラータ・ザルツブルクを指揮したグリーグの劇付随音楽「ペール・ギュント」、そしてドイツのピアニストのフォークトによるモーツァルトの協奏曲集など、世代交代が進むザルツブルク音楽祭の「いま」をお楽しみに。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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