音楽コラム「Classicのススメ」


2010年03月/第78回 現在進行形のショパン

 今年はショパン生誕200年にあたり、また秋には、ワルシャワでショパン国際コンクールが行われる年である。
 ゴールデン・ウィークに東京と金沢、そして今年は新潟とびわ湖ホールでも開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」も、主役はショパン。いろいろな形でこの作曲家の音楽に触れる機会が多そうだ。
 今月の「ウィークエンド・スペシャル」も、2回にわたってショパンの録音を特集する。先月も「往年の巨匠」「現代の巨匠」と題して、往年のコルトーやルービンシュタインから、ポリーニ、アルゲリッチ、ツィメルマンなど、1975年までのショパン国際コンクール優勝者を中心に紹介したが、今回は1980年のダン・タイ・ソンから2005年のブレハッチまでの優勝者、そして現在活躍中のキーシン、アリス=紗良・オットのような俊英たちのショパン演奏を取りあげる。
 現代のショパン弾きの特徴の一つは、アジア各国からの出身者が増えていること。ヴェトナムのダン・タイ・ソン、中国のユンディ・リの2人のショパン国際コンクール優勝者を筆頭に、日本や韓国からも優秀なピアニストが登場して、ポーランドとフランスというショパンゆかりの2国、完成された教育システムをもつ旧ソ連出身などのヨーロッパ勢とともに、高い技術と豊かな個性をもつ演奏を聴かせてくれる。
 また近年は、ショパン自身が用いたのと同じ時代(ピリオド)のプレイエル社製のピアノが弾かれることも増え、20世紀型のピアノと使い分けるピアニストも珍しくなくなった。今回はプラネスとダン・タイ・ソンによるピリオド・ピアノの録音で、そうした現代の潮流もご紹介しよう。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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