音楽コラム「Jazzのススメ」


2005年04月②/第08回 楽器こと始めでジャズの耳慣らし?!

前号に続き楽器関連の記事でゆきたい。
さあ、さあ、苦しうない。もっと前へ。
よく、楽器を始めるとジャズの聴き方が変わる、というよね。

「いやあ、もう全然変わっちゃったよう。オレ、今までなに聴いてたんだろうね。」

顔をホクホクさせて、こうのたまったのは数年前にドラムを始めた「イントロ」の茂串さんである。言わずと知れた高田馬場のジャズ喫茶店主。

5年前にトロンボーンを開始した私の場合はどうか。
まず、レコードに対する尊敬の念が高まった。

例えば、である。本日ご紹介のJ.J.ジョンソン『ブルー・トロンボーン』。
もう実に名作。トランペットがマイルス・デイビスの『カインド・オブ・ブルー』であり、テナー・サックスがソニー・ロリンズの『サキソフォン・フロサス』であるように、トロンボーンはJ.J.『ブルー・トロンボーン』なのだ。
有無を言わせぬ力があった。

しかし、いくら名作でも毎日聞かされるとねえ。私はその頃現場を預かるジャズ喫茶のオヤジ兼レコード係であった。

しかし、楽器を始めてから聴いた一曲目の「ハロー・ヤング・ラバーズ」。
まさに、ウワッーである。いい年をしたオッサンが驚愕と歓喜の声を上げたのだ。

私はその頃、リチャード・ロジャースが「王様と私」の中で使ったその曲の見目麗しい旋律とそれと全く対照的な荒々しいマックス・ローチのシンバリングぐらいしか聴いていなかった。

でも今は。このアドリブ・フレーズは一体何なんだようという、これは化け物だようという驚き。
これは間違いなくJ.J.ジョンソンのアドリブ芸術の最高の一つだ。私はそう確信したのである。
細部に目がゆくようになった。ピアノのトミー・フラナガンが8小節のイントロをつける。そらゆけという感じでマックス・ローチがコチンと合図の一発を送る。
そこですかさずJ.J.がプッと最初の一音を発するのだが、そのタイミングが実に巧妙、これ以上0.1秒遅れても早くてもいけない絶好の間合いぶりにしびれるのだ。
私も合わせて吹いてみる。何度やっても合わない。
最初の8小節と次の8小節は同一メロディーながら微妙にニュアンスを変えて、ただ単純に吹いているんじゃないんだなぁ。即興のようでありながら、そこには前もっての深い考察があるんだなぁ、と。
そして、先述のソロ・ワークである。以前はソロなどろくすっぽ聴いていなかった。

今度は聴いている。ソロのフレーズを盗み取ろうとしているから。あわよくば、そっくりそのまま吹いてやろうと。
これが、凄い。絵に描いたようだ。

寺島靖国(てらしまやすくに)
1938年東京生まれ。いわずと知れた吉祥寺のジャズ喫茶「MEG」のオーナー。
ジャズ喫茶「MEG」ホームページ