音楽コラム「Jazzのススメ」


2008年02月/第49回 えっ もう10年!

店主寺島靖国さんのびっくり声でした。

「PCMジャズ喫茶」は「激辛トークセッション」という番組から生まれ変わって1998年4月11日からスタートしました。それ以前1992年8月3日にPCM放送(今のMUSIC BIRD)は始まっており、オーディオ熱中人である私が当時いち早くアンテナをベランダに設置して電波がやってくる空中を凝視していたのは言うまではありません。今年で開局15年目となりました。

CDの性能を超えた音質の電波が飛んでくるというのでFMエアーチェックからPCMエアーチェックが出来るという革命的なことでありました。自宅で聴くCDよりPCM放送で聴くアルバムの方が音がいい不思議を体験しながら「なぜ」という自問自答が続いたのです。その頃まだ日本オーディオ協会に在籍していたのでメーカー各社のトップ・エンジニアと会う機会も多く、私の体験を話したところ一笑されました。彼らはPCM放送を実際に聴かず理論で判断したのでしょう。やがてリスナー数人と話すたびに彼らも私と同じ経験を持ったことを知り、それが空耳でなかったことを確信したのです。

リスナーであった私はやがて寺島さんに誘われて「PCMジャズ喫茶」のゲストになりました。スタジオ録音の現場に通ううちに疑問は解決されましたが、そこで手品の種明かしを知りました。

さてスタートした「激辛トークセッション」は回を重ねるうち寺島靖国さんと中山康樹さん決闘まがいの雰囲気に包まれていきました。1回目の放送から聴いていた私はある結末を想像していたのです。例えば2つの磁石がプラスとプラスで向き合って次第に反発が強まっていくと、やがて最後はお互いに磁場から跳ね飛ばされるという場面です。しかし寺島磁石だけは残りました。その顛末あまりの面白さに私はそれを録音し、コピーしたテープをジャズオーディオ数人の友人に配ったほどです。

「PCMジャズ喫茶」の看板を掲げてから最初のゲスト山本隆さんが1ケ月ほど寺島さんの相手を務めていました。ところが突然「おしかけ」自称永世ゲストの安原顕さんがスタジオ破りで登場してきたのです。「オレにやらせろ」と言ったとか。2002年12月14日まで約4年半の放送を聴いて「安原症候群」に罹ったリスナーもいるらしく未だ後遺症から回復できないと聞きました。現在ゲスト出演中の岩浪洋三さんに言わせれば寺島磁石は安原異次元磁場に吸い寄せられる寸前であった。安原磁場の消滅で寺島磁石が生き残ったというのです。真偽のほどは定かではありません。

12月28日放送から山本博道・田中伊佐資コンビが賑やかに参加し2003年夏から私も加わりました。岩浪洋三さんとの3人組となったのは10月4日放送番組が最初です。

昨年ついに念願の「寺島レコード」が発売となりました。「執筆者」と「レコード・プロデューサー」という2枚看板を掲げることになったのです。寺島レコード第1作は「alone together」、第2作は「Jazz Bar 2007」いずれもジャズオーディオの伝道師が企画制作するに相応しい出来栄えです。本年70歳となる寺島さんですが、少し血走った眼が何時もの睡眠不足を現わしているにせよ磁場は相変わらず強力です。そこにはコンパスを置けば矢印が微動もせず正確に一定方向を指しているのを見ることができるに間違いありません。

その10年、録音現場で奮闘された太田俊デイレクターからの資料提供に感謝いたします。

「寺島靖国プレゼンツ JAZZ BAR 2007」 好評発売中!
TYR-1002(CD/税込2,730円) TYLP-1002(限定LP/税込5,250円)


長澤 祥(ながさわ しょう)
1936年生まれ。オーディオメーカー数社在籍。日本オーディオ協会前事務局長。