第04回 ロジェストヴェンスキー、バレエのように
1961年にモスクワ放送交響楽団の首席指揮者に就任してからは、コンサートとオペラを中心に活躍してきたが(欧米で「バレエ専門の指揮者」というのは、あまり尊敬されない存在なのだ)、その演奏の根本にあるのはやはり、バレエすなわち舞踏音楽の持つ躍動感である。実際、彼のコンサートの曲目にはバレエの全曲や組曲がしばしば含められている。バレエ音楽がけっして踊りの添え物ではなく、独立して楽しめるものであることを聴衆に伝えたい、と彼は思っているのではないだろうか。
確かに、20世紀音楽の歴史、特にその前半の歴史を考えるとき、バレエ音楽がはたした役割は大きい。ストラヴィンスキーの《春の祭典》他の作品やラヴェルの《ダフニスとクロエ》など、興行師ディアギレフがパリで上演させたバレエ音楽は、その後の時代に甚大な影響を与えた。それはドイツ流の交響曲中心主義とは別の、力強く活気にあふれたムーヴメントだった。オーケストラには、交響曲で発揮されるものとは異なる魅力、つまりもっと肉感的な運動性や色彩感が潜んでいることが、バレエ音楽をとおして提示されたのである。 ロジェストヴェンスキーは、オーケストラという「楽器」の、そのようなバレエ的な肉体性を聞かせてくれる指揮者なのだ。
山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963生まれ。「レコード芸術」を始め、音楽雑誌、CDのライナーなどで活躍中。クラシックの演奏史の中に現代を位置づける活動を行っている。最近特に海外盤に目立ついわゆる「ヒストリカルもの」(放送局のライブ音源をCD化したものやSPやLPの時代の録音のCD化)には滅法強い。
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