122chTHE JAZZ【Premium】

ターンテーブルの夜


(月~金)23:00~24:00
ターンテーブルの夜
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ターンテーブルの夜

 時がめまぐるしく進む現代、慌ただしく生きる毎日。そんな日々だからこそ輝きを増すアナログの世界・・・・。長い時を隔てたアルバムの味わいを温かなヴォーカルと共に堪能してください。
 パーソナリティが日米を股にかけて集めたヴォーカル・コレクションの中から選曲、貴重なオリジナル盤も持ち込みます。

アナログでしか出せないジャズ・ボーカルの味わい
9月25日から29日は茂木亮さんが担当します。ヴォーカルとレコードに対する愛着は誰にも負けないという茂木さんの選曲と語りをお楽しみください。(10月2日~27日はアーカブス放送となります。)

(9月25日~29日放送予定アルバム)
●セレブレイツ・100イヤーズ・オブ・レコーデド・サウンド/ジョー・ブシュキン
 40年にトミー・ドーシー楽団に参加していたときに書いた「オー・ルック・アット・ミー・ナウ」をシナトラが歌い、ヒットしたことで知られるようなったブシュキン。リーダー盤は主に50年代から60年代にコロンビア、アトランティック、リプリーズなどにあり、気品のある粋なピアノのほか、トランペットもプレイし、アメリカの大衆に愛好され続けました。60~70年代はNYやラスベガスのクラブなどで活躍し、TVやラジオへの出演も増え、エンターテイナー的な活動を継続していました。本アルバムは、世界で初めてレコード技術が登場してから100年目にあたる77年に、ノルウェイで行われた式典に出演したブシュキンのライブ・ステージを収めたもので、現地のオーケストラのほか、ジミー・スミス(g)、ミルト・ヒントン(b)、ジェイク・ハナ(ds)といった大御所がバックを勤め、ブシュキンもピアノ、フリューゲル・ホーンをプレイするほか、ピアノと同様に粋なヴォーカルでオリジナルなどをふんだんに聞かせます。オープニングとエンディングのナンバーは、このツアーに同行していたビング・クロスビーが歌っているものです。

●ディープ・ルーツ/ロレツ・アレキサンドリア
 シカゴ出身のロレツは、幼少のころから教会で歌い育ちましたが、50年代後半のデビュー・アルバムなどを聴いてもゴスペル臭の強い泥臭さはなく、垢抜けした洗練さが感じられます。白人的なクールさを備えたハスキー・ヴォイスが魅力で、50年代後半から60年代半ばにかけての、キング、アーゴ、インパルスなどに残した10枚ほどのアルバムを眺めると、しだいにブルース色が薄れるとともにジャズ・フィーリングが濃くなり、洗練度がアップしていることが感じ取れます。本アルバムは、60年代になってから迎えられたアーゴからの3作目にあたる62年の吹込みで、ジョン・ヤング(p)を中心とする、当時のシカゴ・ジャズ・シーンを担う腕達者なメンバーによるコンボがバックを担います。シーンに復帰して間もないハワード・マギー(tp)の参加も魅力で、ロレツは、インティメイトなサウンドをバックに、タイトルどおり深みを感じさせるスタンダードなど10曲を、秘めたパッションを込めるように歌います。

●クレア・ブラッドフォード・ウィズ・オリバー・ネルソン&クラーク・テリー
 ミズーリ州出身のクレアは音楽一家に育ち、幼少から音楽に慣れ親しみます。54年に地元のクラブで歌手デビューし、その後各地のクラブに出演するようになります。やや白人風とも言える歌いぶりで、べたつき感のない都会的な洗練さを感じさせるところが魅力です。本アルバムはレコード・デビューにあたり、プレスティッジの傍系レーベル、TRU-SOUNDに61年に吹込んだものです。このレーベルは、主にリズム&ブルース色の強いアルバムを10枚強出しただけのマイナー・レーベルでしたが、このクレア盤は後にやはりプレステの傍系レーベル、ニュージャズからタイトルを変えリイシューされました。今回はそのニュージャズ盤を使用します。タイトルどおり、オリバー・ネルソン(ts)とクラーク・テリー(tp)のサポートは強力ですが、伴奏の要になっているのは、女性ピアニスト、パティ・ボウンで、スタンダードやブルースなど全10曲でのツボを得たバックが光ります。

●アム・アイ・ブルー?/ベティ・マディガン
 ワシントンDCに生まれ育ったベティは、大学在学中に学内ミュージカルで主演を務めて注目され、50年代半ばごろには地元のクラブやラウンジで歌うようになり、ボルティモアのラジオやTVにも出演。活躍の場を全米に広げ、『エド・サリバン・ショウ』へのゲスト出演や自身のTVショーを持つなどして人気を得ます。美貌とクリスタル・ヴォイスを備えたシンガーで、品格を感じさせる表現力豊かな歌いぶりが、リスナーを包み込むような感覚に誘います。本アルバムは、56年にMGMからリリースされたファースト・アルバムで、オーケストラをバックに、タイトルから窺えるようにブルーなムードにさせるようなスタンダードなど12曲を歌っています。20代前半の最も輝いていたころのベティの魅力が余すところなく詰まった1枚になっています。

●ブロッサム・タイム/ブロッサム・ディアリー
 73年に自らのレーベル、「ダッフォディル」をスタートさせるブロッサム。そこに吹込んだアルバムはすでに何枚か紹介していますが、主にヨーロッパを活動の中心においていた60年代の音源も、多くのLPやシングル盤としてリリースされています。今日紹介するのはそんな中からの1枚で、66年3月にロンドンのクラブ、「ロニー・スコッツ」に出演したときのライブ・レコーディングで、エマーシーからリリースされたものです。現地のベーシストとドラマーを従えてピアノの弾き語りをしていますが、曲間に入るブロッサムのトークがオーディエンスに大いに受けるやり取りもしっかり収録されているところが、楽しさを倍増させています。インティメイトな雰囲気の中で本領を発揮するブロッサムを捉えた魅力満載の1枚になっています。78年にブロッサムはオーストラリア・ツアーしていますが、今回使用するのはそのときに来豪記念盤として出された新たなジャケットのオーストラリア・プレス盤です。

●ユー・ドント・ノウ・ミー/ルース・ブラウン
 ヴァージニア州ポーツマス出身のルースは、父親が教会の指揮者という環境もあってか早くから聖歌隊で歌いだし、20歳になるころにはプロとして歌うようになります。49年にアトランティックから「ソー・ロング」でデビュー、翌年の「ティアドロップス・フロム・マイ・アイズ」がビルボードR&Bチャートで26週連続1位となり、その後も次々とヒットを放ち“ミス・リズム”、“R&Bの女王”などの愛称で人気を博します。50年代末ごろからはジャズ・シンギングも意識するようになり、60年代以降はさまざまなレーベルから、ジャズ・エッセンスを感じさせるアルバムをリリースしています。本アルバムは、78年にマイナー・レーベル、ドゥーブレに吹込んだハリウッド・レコーディングで、本格的にジャズ・ボーカルにアプローチしています。ピアノ・トリオをバックに、ブルース・ナンバーは最小限に抑え、スタンダードを中心に8曲を歌っていますが、ここでのピアノがルー・リーヴィというだけでなんともうれしくなる1枚です。

●アイル・クライ・トゥモロウ/リリアン・ロス
 ボストンの出身のリリアンは、30年前後に舞台や映画女優として活躍しています。その後アルコール依存症に陥り自滅的な道に進みますが、50年代に再起を果たします。その自身の体験を、『アイル・クライ・トゥモロウ』という自伝書として出版するやベストセラーになり、55年にスーザン・ヘイワード主演で映画化されました。その後リリアンはTV番組に出演したり、女優、シンガーなどとして活躍するようになります。本アルバムは、57年にエピックからリリースされた自伝書の内容を反映させた曲を選び歌ったもので、ドン・コスタのオーケストラが曲を切れ目なくつないでいきます。そんなサウンド効果も手伝い、アルバムはドラマティックな展開を見せ、リリアンのウォーム感溢れる歌いぶりを後押ししています。

●シング・アロング・ウィズ・ベイシー/ランバート,ヘンドリックス&ロス+ジョー・ウィリアムス
 57年に結成されたヴォーカリーズ・ユニットLH&Rは、翌年アルバム・デビューを果たすと、たちまちのうちに人気を獲得します。そこでは、タイトル通りに、カウント・ベイシー・バンドのレパートリーを取り上げ、バックのリズム・セクションにベイシー・バンドのメンバーを起用、ホーン・セクションなどが担うパートを、3人のコーラスやスキャット置き換える痛快なものでしたが、カウント・ベイシー本人がそのアルバムを聴いて感激し、アルバム第2弾は自身も参加しようと思い立ちます。そして、ベイシー楽団の契約レーベル、ルーレットに58年5月から10月の間に吹込んだのが本アルバムです。ここでの10曲はベイシー・バンドのレパートリーで、3人それぞれがソロイストのパートを巧みに歌い、さらにベイシーのバンド・シンガー、ジョー・ウィリアムスもそこに加わりゴージャスな出来を演出しています。

●クラウド7/トニー・ベネット
 NY出身のベネットは、幼いころから歌うことと絵を描くことが好きで、プロのシンガーになってからもスケッチ集を出版するほどの腕前で、17年現在も現役のシンガーで画家ということになります。シンガーとしては、50年にTV番組の「タレント・スカウト・ショー」で2位になり、そのショーに出演中に認められ、翌年にはコロンビアと契約、たちまちのうちにスター・シンガーの座をゲットします。デビュー当初は、ポピュラーなシンガーとして人気を得ていますが、本格的にジャズ・シンガーとしての存在感を示した最初期の音源が本アルバムにあたります。54年のコロンビアへの吹込みで、チャック・ウェイン(g)を中心としたセプテットがバックを担い、スタンダードのほか、ラベル作曲の「レベリー」が原曲の「マイ・レベリー」などラブ・ソングを中心に切々と歌う、若きトニーの一面を捉えた記録として長く聴き継がれる1枚と言えるのではないでしょうか。バックのサウンドが強調されるアルバムではありませんが、間奏部ではメンバーの短いソロも聴け、中でも、音源の少ない名手、デイブ・シルドクラウト(as,ts)の参加は貴重で、それを目当てに購入したジャズファンも少なくないでしょう。

●スウィンギン・ダウン・ブロードウェイ/ジョー・スタッフォード
 30年代末頃からトミー・ドーシー楽団で歌っているジョーは、40年代半ばに設立間もないキャピタルの専属シンガーとなりヒットを連発します。バンド・リーダーで編曲者のポール・ウェストンと結婚した52年前後にコロンビアに移籍し、アルバムも続々とリリースすることになります。本アルバムは57~58年のレコーディングで、54年頃にリリースした『シングズ・ブロードウェイズ・ベスト』の続編ともいえる内容です。「前編」と同様に夫君のポール・ウェストン楽団をバックに、タイトルどおりミュージカル・ナンバーを素材にした12曲を華麗に聞かせます。“トランペット・ヴォイス”と称されるジョーの歌声ですが、ここでは、オーケストラのリード・トランペッター、コンラッド・コゾーによるオブリガートやドン・ファガーキスト(tp)のソロ・パートなどもジャジーなムードに一役買っています。後にジョーは、コロンビア時代のアルバムの利権を買い取り、コリンシアンという自主レーベルから再発するようになりますが、日本ではCD時代になっても、このアルバムなどもオリジナル仕様で再発されています。

9月25日の曲目 26日の曲目 27日の曲目 28日の曲目 29日の曲目  
※オンエア曲リストは放送後2週間を経過すると削除されます。ご了承ください。

武田清一

出演:武田清一

1970年代にフォークグループ「日暮し」の一員で「いにしえ」という大ヒットを残した武田氏は、アナログレコードの大ファンで、ジャズヴォーカルを中心に3000枚を越えるコレクションの持ち主です。自宅では二つのオーディオを音楽によって使い分け、CDでは得られないアナログサウンドを楽しんでいます。

上原 昇

出演:上原 昇

横浜在住。ジャズを聴き始めたのはハタチの頃から、地元『ちぐさ』によく通いエヴァンスやコニッツなど”白人系”ジャズに酔いしれる。もう一つ『ジャズ批評』から多くを学び、その恩返しをと。ヴォーカル(主に白人系)やボサ・ノヴァ(サンバではない)に神経を集中する日々。中途半端なコレクションはしてないつもり。

茂木亮

出演:茂木亮

1960年5月札幌出身、ピアニスト、スティーヴ・キューンのマニア、完全コレクター(自分が生まれたとき、キューンはコルトレーン4のメンバーだった)で、ジャズ批評誌などにキューン関連の情報を発信している。中野新橋のジャズ喫茶・ジニアスに20年以上通い続け、リスナー、レコード・コレクターとしての極意(?)を習得。高田敬三氏主催の「ボーカルを楽しむ会」では、年に一度ほど例会の案内係を担当。

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アナログでしか出せないジャズ・ボーカルの味わい
8月28日から9月2日は茂木亮さんが担当します。ヴォーカルとレコードに対する愛着は誰にも負けないという茂木さんの選曲と語りをお楽しみください。(9月4日~22日はアーカブス放送となります。)

(8月28日~9月2日放送予定アルバム)
●アイ・ゴー・バック・ホーム/ジミー・スコット
 14年に88歳の人生を閉じたジミー。理不尽な扱いを受け続け、メジャーなシーンに登場したのは60歳を過ぎた80年代末ごろながら、次々にアルバムをリリースし、2000年の2度目となる来日ツアーで大ブレイクを果たします。生まれつきホルモンの持病を抱え、声変わりをすることなく成人し、ワン&オンリーの“エンジェル・ヴォイス”を持つシンガーとなったジミーでしたが、最後の来日となった07年頃からは、レコーディングから遠ざかります。そんな中、09年に豪華メンバーをバックにレコーディング!というニュースが飛び込むものの、リリースされることなく月日が経ちました。そして、17年にようやくエデン・リヴァーから登場した本アルバムが、正にそのときの音源です。得意のレパートリーのほかデュエット曲も交えていますが、ジミーの歌声は、消えゆく直前のキャンドルの最後の煌めきのようなほのかさで迫ってきます。サブ・タイトルの「ア・ストーリー・オブ・ホーピング&ドリーミング」は、ジミーの生涯を言い当てているようで、ドキュメント・フィルム化もされるようです。

●ホイステッド・セイルズ/ボビー・ノリス
 カリフォルニア州出身で、幼少の頃からジャズ好きだったボビーは、マーク・マーフィーやボブ・ドロウらと知り合い、NYに進出します。クラブで歌っていたところ、メジャー・レーベルのコロンビアのスカウトの目に留まり、66年にアルバム、『ザ・ビギニング』でデビューしますが、シーンにまったく受け入れられず挫折を味わいます。失意のままSFに戻りますが、そこで出会ったラリー・ダンロップ(p)と音楽活動を再開し、結婚します。本アルバムは、84年にパロ・アルトからリリースされたラリーとの2作目にあたり、一部でベースが入る以外はピアノのみの伴奏で、ボビー自身が本当に歌いたかったナンバーをセレクトしたことが伝わる、深みを感じさせる歌いぶりを聞かせています。アルバム・タイトル曲は、イヴァン・リンス作曲の「ヴェラス」として知られるスタンダードな曲で、ボビーはポルトガル語で歌っています。

●エスペシャリー・フォー・ユー/リー・スコット
 フィラデルフィアの出身のリー・スコットは、TVやラジオ、クラブなどで歌い、ジャズやクラシックのピアノもこなし、さらにミュージカルの作曲も手掛けていた逸材です。かなりの才能を感じさせるものの、リリースされたアルバムは、ウィンに録音した2枚ぐらいです。本アルバムもファースト・アルバムからほどない58年頃の吹込みと思われ、リー・ロベット(p)のプロデュース、ドン&トニーのルイス兄弟のアレンジも前作と同様で、スモール・コンボがバックだった前作との相違は、控えめながらストリングスが入っているところです。リーのヴォイスは、やや線が細いものの、前作以上にゴージャスなバックに乗り、アルバム・タイトルどおりすべての曲タイトルに‘YOU’の一語が入った10曲をムーディに歌い通しています。アルバム・タイトルに合せたかのようなジャケットは、官能的なポーズのリーがヌードで写っていて、男性ファンには、このセカンド・アルバムの人気が圧倒的に高いです。

●リトル・シングズ・ミーン・ア・ロット/キティ・カレン
 フィラデルフィア出身で、10歳になる前からラジオ番組に出演し、14歳で『キティ・カレン・コーリング』という番組を持っていた“プリティ”キティ・カレン。43年にジミー・ドーシー楽団に入団、さらにジャック・ティーガーデンやハリー・ジェイムスなどのバンドでも歌い、ヒット曲も多数放つものの、人気絶頂となる40年代半ばに発声のトラブルなどによりリタイア。53年にカムバックし本アルバム・タイトルの「リトル・シングズ・ミーン・ア・ロット」をヒットさせたものの、その後もリタイアとカムバックを繰り返します。本アルバムは、デッカ系に吹込んだキティの音源をコンパイルしたもので、43年にドーシー楽団で歌った3曲のほか、53年のカムバック以降のジャック・プレイス・オーケストラをバックに歌ったナンバーなど、可憐なカレンを手軽に楽しめる1枚になっています。カレンは、本アルバムで歌われている曲の多くを、62年になり『マイ・カラリング・ブック』(RCA)でリメイクしています。何度も歌えなくなりながら、カムバックを果たしてきたカレンの不屈の姿勢に敬服してしまいます。

●サドンリー/キャシー・キーガン
 イギリス、ランカシャー出身のキャシーは、50年代終わりごろにアメリカに渡ったというほか、ほとんど情報のないシンガーで、60年~67年頃にマイナー・レーベルからリリースしたシングル数枚が散見されます。アルバムとなると、63年のマリブという超マイナー・レーベルからの1枚と、64年にUAの傍系レーベルDCPインターナショナルに吹込んだ1枚があり、67年にABCパラマウントからリリースされたもう1枚が、本アルバムです。ここでも前作同様、プロデュースと編曲・指揮はドン・コスタによるもので、ミシェル・ルグランやアンドレ&ドリー・プレヴィンのナンバー、バカラックなどによる当時のヒット・チューンなど10曲を歌います。ダイナミックなバックのサウンドに乗った、力強さを感じさせるキャシーの歌声はリスナーを引きつけます。裏ジャケットには、トニー・ベネットらのキャシーへの称賛の言葉が載り、活躍が期待されていることが窺えますが、本アルバムを最後に、キャシーはシーンから消えてしまいました。

●ディープ・パープル/ヘレン・フォレスト
 アトランティック・シティ出身で、アーティ・ショウ、ベニー・グッドマンのバンド・シンガーを経験し、42年にハリー・ジェームズ楽団で歌った「いつか聴いた歌」、「アイ・クライド・フォー・ユー」の2曲を大ヒットさせたヘレン。42年、43年にダウンビート誌とメトロノーム誌の人気投票で1位に輝き、トップ・バンド・シンガーに上り詰めます。本アルバムは、ヘレンがアーティ・ショウのバンド・シンガー当時の音源を、日本のRVCが編集したもので、38~39年の珠玉の名歌16曲が収められています。ヘレンは20歳を過ぎたばかり、リーダーのショウも28歳という若さで、バンド全体がジャズを演奏する喜びを称えるなかで、滑らかなヘレンの声とショウのロマンティックなクラリネットが際立つ贅沢なアルバムになっています。バンド・シンガーで本領発揮するヘレンは、自己名義のアルバムをなかなか出しませんでしたが、80年代以降はコンボをバックに歌うアルバムも積極的に作り、存在感を示し続けました。

●2・オブ・ア・カイム/ウォーレン・カイム
 スイング・トランぺッターとして50年代にネルソン・リドル、レイ・アンソニーなどの楽団経歴があるウォーレン・カイム。60年代にはビッグバンド・アレンジャーとしてCommandレーベルに「ブラス・インパクト」名義によるラウンジ風なアルバムも残しています。本アルバムは、57年頃にシカゴのマイナー・レーベル、レプリカに吹込んだヴォーカル・アルバムで、ウォーレンは全8曲でチェット・ベイカーのように歌とトランペットを披露します。ただ、トランペッターとしては、そこそこの実績があったことは窺えますが、歌唱のほうはというと・・・、そのあたりは実際に聴いて判断していただきたいところです。実はここには、のちに日本でも人気ピアニストとなるエディ・ヒギンズが伴奏で参加しており、ヒギンズのコレクターが追い求めるアルバムとしての希少価値が高い1枚です。

●オーレイ!O.K.!!/ルース・オーレイ
 サンフランシスコ出身で、9歳から声楽の個人指導を受けていたルース・オレイ。51年にベニー・カーターのバンドでデビュー、その後、ジェリ―・フィールディング・バンドのシンガーを務め、55年頃からソロ活動するようになります。56年にゼファーにファースト・アルバムを吹込み、その後の10年ぐらいの間に様々なレーベルからアルバムをコンスタントにリリースし、充実期を迎えます。本アルバムは、63年にエヴェレストに吹込んだもので、どちらかというと、スモール・コンボをバックに歌う音源の多かったルースが、ビル・リドルによる大編成のオーケストラをバックに歌っていて、これまであまり聞かれなかったゴスペル・ライクな歌いぶりなどを試みていることも伝わります。分厚いバックのサウンドに乗せたブルージーな歌いぶりで、全12曲を一気に聞かせてしまう作りも圧巻です。エヴェレストには、グロリア・リンという看板シンガーがいたせいか、ルースはこのレーベルではアルバム1枚で終わります。というか、この人の経歴は、1レーベルに1アルバムというパターンが多いシンガーになりますが。

●ヴォリューム・ロンリー/トニ・リー・スコット
 ジャズ・シンガーとして活躍し出した19歳の時にオートバイ事故で左足を失いながらも、ポジティブに生き続けたトニ・リー・スコット。59年にレコード・デビュー、63年に本アルバムをウエスト・コーストのアヴァに残します。ここでは、ジェラルド・ウィギンズ(一部ドン・アブニー)(p)トリオにハワード・ロバーツ(g)が加わるウエスト・コーストの一流プレイヤーをバックに、ハスキー・ヴォイス全開でスタンダードなど11曲をブルージーに歌いとおし、リスナーに深く入り込んできます。変わったアルバム・タイトルは、レコーディング完了後の音を聞いたトミー・ウルフ(A&R)とジャッキー・ミルズ(ds)が、歌の中に感じられる人生の根源的な寂しさを感じ、思いついたものだといいます。トニは、波乱に富んだ半生を自伝本として出版していますが、そこには、あの伝説のハリウッド・スター、ジェームス・ディーンと深い友情で結ばれていたエピソードも。このアルバムを聴くと、彼女の自伝本の日本語訳が出ないかなと思ってしまいます。

●ソングス・オブ・ルーザーズ・ララバイ/ジゼル・マッケンジー
 カナダ、オンタリオ州出身のジゼル・マッケンジーは、カナダ王立音楽院で学び、40年代半ばからバンド・シンガーとして活躍、51年に渡米し、56年には永住権を獲得しています。57年には『ジゼル・マッケンジー・ショウ』がTVのレギュラー番組になり、女優としても活動します。NYの高級ホテル「ウォルドルフ・アストリア」の看板シンガーとなり、60年代にはミュージカルにも多数出演するなど、幅広く活躍しました。本アルバムは、63年にマーキュリーに吹込んだもので、主にスタンダードを素材にしながらも、ウォームな歌唱を得意としてきたジゼルが、ポップにアレンジされたオーケストラをバックに、ブルース、バラッド、ボサノヴァなどのテイストを強調し、楽しく歌っているところが聴きどころになっています。

8月28日の曲目 29日の曲目 30日の曲目 31日の曲目 9月1日の曲目  
※オンエア曲リストは放送後2週間を経過すると削除されます。ご了承ください。



武田清一

出演:武田清一

1970年代にフォークグループ「日暮し」の一員で「いにしえ」という大ヒットを残した武田氏は、アナログレコードの大ファンで、ジャズヴォーカルを中心に3000枚を越えるコレクションの持ち主です。自宅では二つのオーディオを音楽によって使い分け、CDでは得られないアナログサウンドを楽しんでいます。

上原 昇

出演:上原 昇

横浜在住。ジャズを聴き始めたのはハタチの頃から、地元『ちぐさ』によく通いエヴァンスやコニッツなど”白人系”ジャズに酔いしれる。もう一つ『ジャズ批評』から多くを学び、その恩返しをと。ヴォーカル(主に白人系)やボサ・ノヴァ(サンバではない)に神経を集中する日々。中途半端なコレクションはしてないつもり。

茂木亮

出演:茂木亮

1960年5月札幌出身、ピアニスト、スティーヴ・キューンのマニア、完全コレクター(自分が生まれたとき、キューンはコルトレーン4のメンバーだった)で、ジャズ批評誌などにキューン関連の情報を発信している。中野新橋のジャズ喫茶・ジニアスに20年以上通い続け、リスナー、レコード・コレクターとしての極意(?)を習得。高田敬三氏主催の「ボーカルを楽しむ会」では、年に一度ほど例会の案内係を担当。