コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第10回/音をよくする3つの方法

 よい音を出しているとウワサのお宅を訪ねると、だいたい次の3つに分かれることがわかった。 

 その1。圧倒的な技術力でよい音を出しているケース。市販されている機器をそのまま使うことはきわめて稀で、


筆者が愛用している外部クロック装置。
これ無しでは生活できない

○ 内部配線材交換
○ 筐体交換(中身をそっくり別のケースに移し替える)
○ 基板等の超低音処理(クライオ処理ともいう)
○ ネジを特殊なものと交換(非磁性体、あるいは制振金属など)
○ IC等への制振材貼り付け
○ デジタル機器なら、クロック交換(より精度の高いものに交換する。あるいはいっそのこと外付けにして、セシウム・クロックかそれに準ずる精度のものを使用)
○ 電源部を、ノイズの少ないものに交換(スイッチング電源の徹底排除。出川式電源の導入。果てはバッテリー駆動。近年はオーディオのために、太陽光発電を使う人まで現れた)

このような改造をおこなって、ご自分の理想を追求。中には、改造に留まらず、アンプやスピーカーを、イチから作ってしまう才人もいらっしゃる。それも、独自回路や独自発音原理をベースにしていて、スピーカーエンクロージュアなども、世間の常識をまったく無視した素材や形状を採用していたりする。

 もちろん、こういった道を進む方全員が成功するわけではないが、筆者が訪ねたお宅はおおむね大成功。

 その2。アクセサリーの使いこなし等で、環境を徹底改善しているケース。機器そのものは平凡でも、環境さえ整えてやれば、よい音を出せるのだ。具体的には、

○ 重量級アンダーボードを敷くことで機器の土台をゆるぎないものにする
○ ルームチューン材を配置して、部屋の響きを整える(反射・拡散をおこなう音響パネルが、多数市販されている)

○ オーディオ用電源タップ、オーディオ用電源ケーブルなどを駆使して、電源状況を改善する。200Vをリスニングルームに引き、ノイズカットランスを使って100Vに落としている人も多い。交流をいったん直流に直したあと、再び交流に戻す(正しい波形を作り直す)装置も、かなりの人が使っている。究極の形は「マイ柱(電信柱の上の変圧トランスを、1軒の家だけで独占使用)」。

○ レーザー墨出し器等を使い、ミリ単位でスピーカーをセッティングする
○ 接点クリーニングを、まめにおこなう(接点改質剤も有効だ)

 


ソーラーパネルを玄関に設置し、
デジタルアンプ用の18Vを発電中
(このお宅についての話は、また後日くわしく書く予定)

フェルトで作られたバッフル。
木の箱とはケタ違いのヌケのよさ



重量級アンダーボードの上に、プリアンプを置く


各種音響パネルを駆使して、室内音響を整える


4000W供給可能なノイズカットトランス
(ここで200Vを100Vに落とす)


 こうやって書き並べると簡単そうに見えるが、オーディオアクセサリーの使いこなしは案外むずかしい。同じものを買ってきても、どこに置くか、どこに貼るかで、結果がまるで違ってくるからだ。スピーカーセッティングについても、くわしく書き出したらキリがないので、「専門誌をお読みください」というしかない。

 その3。一見何もしていないように見えるケース。最近、こういったお宅をよく訪ねる。使用機器はごくふつうだし、もちろん無改造。セッティングも無雑作。ケーブルなどに凝っているようにも見えない。使っている電源タップは家電用(おそらく1,000円以下)。それなのに、聞こえてくる音はストレスフリーかつ超リアル。

 いったい何がよい音を出しているのか。部屋だ! 部屋の出来が、一般的なお宅とまるで違うのだ。

 昨秋『Gaudio』創刊号の取材で訪ねた菊地裕介氏(ピアニスト)のお宅がその典型だった。「ピアノ練習室をリフォームしたので、そこに新しいオーディオ機器を入れよう」という企画だったのだが、比較試聴のため持ち込んだ機器が、どれも期待をはるかに超えてよく鳴ったことにびっくり! 中には筆者が苦手とするブランドも混じっていたが、それまでもが魅力的に聞こえたのだから、もう部屋の威力を認めるしかなかった。

  今月は、同じ業者が作った別の部屋を訪問。くわしくお伝えしたいところだが、その部屋について語りつくした『Gaudio』第3号が今月30日に出るので、まさかそれより先に公開するわけにはいかない。
 やけに広告臭い締めくくりになってしまったが、月末になったら、ぜひ書店でお探しいただきたい。
(2013年5月21日更新) 第9回に戻る 第11回に進む 


菊地裕介氏のお宅訪問は『Gaudio』創刊号129ページを

【イベント】マックトン十番勝負!第4回:憧れのトップブランドEARが登場 ※イベントは終了しました
 管球式アンプの老舗ブランド「マックトン」が毎月最終金曜、チャレンジ試聴会を開催しています(全10回)。
 4月に出水電器・島元澄夫氏をお招きし、電源工事をやっていただいたおかげで、マックトン試聴室の電源事情が、大幅に改善されました(『レコード芸術』6月号P243、『オーディオアクセサリー』第149号P258にレポート有り)。今月お迎えするのは、ティム・デ・パラヴィチーニのブランドEARのプリ912(税込¥2,079,000)とステレオパワーアンプ861(税込¥1,026,900)です。
 世界中のオーディオ愛好家があこがれるトップブランドのセパレートが、はたしてどんな音を聴かせてくれるのか。マックトン50周年記念モデル(XX-550、MS-1500)との聴き比べができるのは、世界でもここだけです!

  日時/5月31日(金)19:00~20:30
  場所/マックトン試聴室(西武新宿線・井荻駅から徒歩7分)地図
  プロデュース・司会/村井裕弥
  予約/必ず事前にお電話でご予約ください。
     TEL:03-3394-0131(マックトン)
※満席で予約が取れなかったときは、翌日土曜日も試聴できるようにします(但し講演等はなし)。こちらも要予約。
但し、EARが聴けるのは5月31日(土)のみです。
村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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