<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第105回/月日が経つのはメッチャ早いよなあとありきたりのことを反芻した12月 [田中伊佐資]
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●12月×日/監修した「新宿ピットインの50年」(河出書房新社)が遂に発売。この話をピットインから頂戴したのが2013年の春。2年半後か、ずいぶん先だなあなんてノンキに構えていたら、すぐにその時が来てしまった。
そういえば高校を卒業するときに「この3年間は一瞬だった。この調子だと人生は短いな」と達観したことを口走っていた友達がいた。コイツなに言ってんだとぼくは鼻で笑っていたが、あれからもう何十年経ったというのだ。アイツの言っていたことは間違っていなかった。となると、いままでの人生、自分いったいなにやってたんだろうなあなどと顧みたりもする。
というような感慨に浸りやすいのが年の瀬ってやつだ。ともあれ新宿文化センターで行われた「新宿ピットイン50周年記念コンサート」に刊行は間に合い、ロビーではそこそこ売れているようだったので、ひとまず胸をなで下ろす。
●12月×日/ステレオ誌の付録CD用に、スガダイローの演奏を録ったということで、スガさん、エンジニアの生形三郎さんを自宅に招きそれを聴きながら鼎談。
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新宿ピットインの50年(河出書房新社)
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スガさんは以前から大好きなピアニストなので、その新作も無条件で贔屓にしてしまうのだが、ファン感情を差し引いても、内容はまさにファンタスティック。読者にしてみたら付録で付いてきてラッキー、ミュージシャン側は大盤振る舞いだろう。
生形さんは「リマスタリングせずに鮮度命で録ったので、オーディオのアラが全部出る」とかおそろしいことを言い放っていて、どうなるかと思ったが、システムは激しい演奏と峻烈な録音にまあまあ耐えられた模様。
鼎談はおしまいになって、エリック・ドルフィーの『アウト・トゥ・ランチ』オリジを二人に思いっきり聴いてもらう。ぼくにしてみれば、その数分のためにこの日があったともいえる。
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「ジンジャー・ドット・トーキョー」でレコード・イベント
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●12月×日/7月に引き続き、清澄白河の「ジンジャー・ドット・トーキョー」でのレコード・イベントに参加。夏は「モノラル・システム」がテーマだったが、今回は「和製ロック」。
講師に駒井仁さんを招き、ゴールデン・カップス、フラワー・トラベリン・バンド、安全バンド、ほかまったく未知のバンドの稀少盤を聴く。Char、金子マリ、鳴瀬喜博が在籍していたスモーキー・メディスンの音を初めて聴けたのはよかった。
オーディオは前回同様、Vintage Joinのキヨトマモルさんが、オリジナルのモノ・システムを組み、ドイツWIGOの10インチ・スピーカーから特濃の音を出していた。
イベントはピットインの50周年記念コンサートと重なり、泣く泣く中座。
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●12月×日/そのキヨトさんの店、Vintage Joinをステレオ誌で取材。ここは小さくてスタイリッシュでレコードがいい感じで鳴るオリジナル・システムをコーディネイトしている。金がかかるという意味では特異な趣味になってしまったオーディオを、普通の人が普通に楽しめるような提案をしている。
たったの1万円のためか結構売れているION AUDIOのレコード・プレーヤーをキヨトさんがチューンアップするのは面白かった。特に「2015年最大の衝撃」らしい「KUROMARU」という豆粒をカートリッジに貼ったら、音にメリハリがついてヒエーとなった。豆粒のなかに小さな玉が入っていて制振作用があるようだ。
●12月×日/RCAのヴィンテージ・レコード・プレーヤーを買ってから、レコードが面白くて仕方がないのだが、それを販売してくれた「Record & Audio Store BUNJIN」の宮本さんから「やっぱこれと組んで聴いてもらわんと」とヴィンテージ・アームを貸してくれた。グレイ・リサーチの108B。やー、これはかっこええわ。かっこいいものはまず音がいい。売り物ではなく、いずれ返さねばならないので、これを見つけることが2016年最初の課題となりました。
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Vintage Joinの制振アクセサリー「KUROMARU」。 3粒1000円
グレイ・リサーチのトーンアーム108B
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(2016年1月10日更新)
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