コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第121回/アナログオーディオフェア不完全レポート[村井裕弥]
6月11日・12日、秋葉原・損保会館で第2回アナログオーディオフェアが開催された。昨年より会場スペースを拡大し、出展社も6割増。ちょうど原稿を書き上げたばかりのゆとりある時期であったから、2日間ともほぼフル参加してみた。 |
アナログオーディオフェア公式パンフ |
SL-1200Gに採用したモーターがいかに革新的かを力説するテクニクス技術陣 (左から)ダイアナ・クラール『ライヴ・イン・パリ』 カーリー・サイモン『トーチ』 中島みゆき『寒水魚』 |
502号室はパナソニック。テクニクスのハイエンド・セパレートアンプSU-R1+SE-R1、ハイエンド・フロア型スピーカーSB-R1を使って、新アナログプレーヤーSL-1200GとSL-1200GAEを熱烈アピール。「往年の名機SL-1200の安易な焼き直しではない」「SL-1200GとSL-1200GAEはここが違う」といったあたり、特に力がこもっているように感じられた。プラッターの制振性をアピールするため、ハンマーで強打する実験では、会場が静まりかえった(皆が予想したよりはるかに音が小さく、それもあっという間に消えたからだ)。 |
協同電子エンジニアリングはフォノケーブルをバランスにして、フォノイコ以降を左右独立にするシステムで、アッカルドとマズアによるブルッフ:ヴァイオリン協奏曲、オッターによるバロック・オペラのアリア集(ヘンデルなど)、山本剛『ミスティ』を聴かせてくれた。実直で演出臭さのない音には好感が持てた。 |
(左から)山本剛『ミスティ』 サイモンとガーファンクル『明日に架ける橋』 |
日本国内におけるデモは何年ぶりだろう。 オーディオ・ノート |
オーディオ・ノートが日本国内でデモをおこなうのは何年ぶりだろう。先月はミュンヘンのHigh End 2016で大反響を呼んだと聞いている。目玉新製品は、超弩級プリアンプG-1000だが、アナログプレーヤーGINGAやパワーアンプKaguraもほとんどのお客様が初見。プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》(パヴァロッティらが歌うカラヤン盤)、エリック・フリードマンによるツィゴイネルワイゼン、マリア・カラスが歌う「ハバネラ」(全曲盤ではなく、フランス・オペラ・アリア集のほう)、マディ・ウォーターズ『folk singer』、レッド・ツェッペリンのカバー集がかかったが、分厚さと繊細さを高次に両立させた音には、「参りました」と頭を下げるほかない。ボクはこのメーカーの試聴室を2度訪ねているが、持参する音源から「初めて聴くニュアンス」があふれ出て、「これまでいったい何を聴いていたのだ!?」と、行くたび頭をかかえてしまうのだ。 |
アイレックス(eilex)は、リトアニアReed社のハイエンド・アナログプレーヤーにイタリアAUDIA社のセパレートアンプStrumento n4+Strumento n1を組み合わせて、日吉ミミ「男と女のお話」、フォーレ:レクイエム(クリュイタンスの1962年ステレオ盤)、鈴木勲『ブロー・アップ』(ジャケ写違いの稀少盤?)を聴かせてくれた。スクラッチノイズが他社より少なく感じられたのは、盤質のよさだけでなく、Reed社製のアームが貢献しているのではないか。LP再生中にVTA、アジマス、アンチスケーティングをリアルタイム調整できるアームなんて初めて見た! |
フォーレのレクイエムがず抜けて蠱惑的だった アイレックス VOXOA T50 |
アナログオーディオフェア応援イベントで、 自己のルーツについて語る井筒香奈江(中央) |
なおこの2日間、近隣のオーディオ用パソコンショップ「オリオスペック」では、アナログオーディオフェア応援イベントが開催されていた。その内容が、 |
Brooklyn、実は1か月くらい前に買って常用中なのだが、DACとして使っているだけで、フォノイコとして使ったことはない。別に「オマケ機能だから」とバカにしているつもりはなく、「気に入ったフォノイコがすでにあるから、無理に実験しなくても」という気でいたのだ。 しかし、「オリオスペック」で実際聴き比べてみると、Brooklynのフォノイコ機能、予想以上に健闘。CDやハイレゾにはない「アナログならではの音力」をきちんと再生してくれるではないか。このアンプ、このスピーカーと組み合わせるなら、これで十分なのではないか。 後半のトークショウでは、梓みちよ「二人でお酒を」、河合奈保子「けんかをやめて」、石川ひとみ「まちぶせ」、シュガー「ウェディング・ベル」がかかった。もちろん、フォノイコはBrooklynのままだ。 何の不満もない。一度わが家でも試してみよう。 |
Mytek Digital BROOKLYN DAC/PREAMP
(左から)河合奈保子「けんかをやめて」 石川ひとみ「まちぶせ」 |
以上で、レポートは終了。損保会館で音を出していた26社中9社について書いたが、どうしても回れなかった17社については申し訳なく思う。
「短時間で音質を評価して、全部屋をまわり、完全レポートを書くべきだ」という考えもあろうが、よくない席や立ち聞きで評価するのはあまりに乱暴だし、30分のデモを10分だけ聴いて評価するというのも失礼だろう。
今回取り上げられなかった17社の音は、また別のイベントで聴かせてもらうことにしよう。
(2016年6月20日更新) 第120回に戻る 第122回に進む
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