コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

    <雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

    ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


    第144回/トークイベントがちょこちょこ続き、心の悪魔がますます台頭してきた1月[田中伊佐資]

    ●1月×日/ディスクユニオンが運営するイベント会場dues新宿で『2016年ベスト「いい音ジャズ」レコードはこれだ!』というタイトルのトークショーに出演。
     これは昨年11月、新宿ジャズ館の羽根智敬店長から「2016年の優秀録音盤をかけるイベントをやりましょう」と声をかけてもらい「CDもいいけどレコードに絞りたいですね」と僕から申し出て実現した。
     ちょうど『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)の発売記念イベントになるはずだったが、原稿が遅れまくる体たらくで、発売が2月17日になってしまい、本の先行発売ができなかった。お客さんには違法ギリギリの強制販売をしようと目論んでいたのだが。
     で、かけた曲は次の通りです。

    ◎Live at the Village Vanguard/Christian McBride
    「チェロキー」がグラミー賞のBest Improvised Jazz Solo 2016を受賞。そのベースソロを聴く。

    ◎I Long To See You/Charles Lloyd & the Marvels
    曲はトラディッショナルの「All My Trials」。2016年の個人的ベストジャズ賞。

    ◎Some Other Time: The Lost Session From The Black Forest/Bill Evans
    『お城のエヴァンス』で知られる68年のモントルー・ジャズ祭の演奏からわずか5日後にMPSスタジオで録音。マスターは半世紀近くも眠り続けていた。

    【2月17日発売!】
    田中伊佐資・著『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)

    クリスチャン・マクブライド『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』

    海野俊輔『MIRAGE』

    クリス・ポッター『イマジナリー・シティーズ』

    ◎Kind of Blue/Miles Davis(デアゴスティーニ)
    プレス国が違うマトリクスA1とA2の音を聴き比べる。僕はいま普通に入手できるA2の音が好き。

    ◎This Meets That/John Scofield
    90年代以降のジャズをLPの複刻するシリーズの1枚。曲はアニマルズで有名な「朝日の当たる家」。

    ◎MIRAGE/海野俊輔
    レコードのカッティング工房を開設したスタジオデデの1枚。カッティング・レースはウェスタンエレクトリックがモディファイしたスカリーRA-1389。現役で動いているマシンはたぶん世界でこれ1台だと思う。

    ◎Feelin' The Spirit: Grant Green Tribute/ロマン・ポコルニー
    チェコのギタリスト、ロマン・ポコルニーが2013年に、同じくチェコのピアニスト、ナイポンクを招いたアルバム。チェコ録音ってわりと音がいい。スタジオにヴィンテージ機材がまだ残っている気がする。

    ◎Imaginary Cities/Chris Potter Underground Orchestra
    クリス・ポッターの入魂の傑作。2015年作ながら特別に選出。曲は試聴会にあるまじき11分を超える「イマジナリー・シティーズ4 リビルディング」。誰も帰らなくてよかった。

    ◎Cheap Thrills/Janis Joplin
    45回転2枚組のモービル盤。オリジナル盤にはないクリアな音質。ジャニスが生々しい。一応ジャズの会なので曲は「サマータイム」。


    ●1月×日/同じくイベントの話。ディスクユニオンのお茶の水JazzTOKYO生島昇店長から「『いい音ジャズ』の出版記念インストアイベントをやりましょう」とまたしてもありがたいオファーをいただく。
     さすがは「ヤエレコ(八重洲レコード聴きまくりの会)」の同志と感涙したが、どうやらこの日は「ユニオン全店でイベントをやらなければいけない日」と定められているらしく、生島さんはこれ幸いにいいネタが近くに転がっていたと膝を打った感もある。人の好意をそうやってひねくれて受け取る僕だが、喜んでやらせてもらうことにした。
     喜んでといま書いたが、僕はいつなんどきでも人前で話をしたいタイプではない。心中には、前に出て目立たなくてどうするとせっつく悪魔と静かにおとなしくしていなさいとさとす天使がいて、これまでの人生は圧倒的に天使が強く、とりあえず恥をかかずに済んできた。
     しかしここ数年来ミュージックバードに出演させてもらえるようになって話をすることに慣れてきて、どうだトークはそんなに嫌いではなかろうと悪魔が持っている3本フォーク型の槍(真ん中がちょっと長いやつ)で、お尻をぷちぷち刺され、思わず「ハ、ハイ」と答えてしまい、前にスッ転びそうになりながら壇上にあがってしまっている状況なのだ。

    http://blog-jazztokyo.diskunion.net/Entry/27507/
    【イベント】
    『田中伊佐資が「いい音ジャズ」を語る!聴く!の会』

    日時:2017年2月26日(日) 15:00~16:30
    場所:ディスクユニオンJazzTOKYO(御茶ノ水)

     そんなことなので2月26日午後3時にJazzTOKYOのイベントでお会いしましょう。もちろん強制販売なんてことはありませんよ。みなさんすでに持っているはずですよね(笑)。
     そして3月18日は、その生島さんと第9回「八重洲レコード聴きまくりの会(ヤエレコ9)」をGibson Brands Showroom TOKYOで午後3時からやります。

    (2017年2月10日更新) 第143回に戻る  第145回に進む

    田中伊佐資

    田中伊佐資(たなかいさし)

    東京都生まれ。音楽雑誌編集者を経てフリーライターに。現在「ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」「ジャズ批評」などに連載を執筆中。著作に「オーディオそしてレコードずるずるベッタリ、その物欲記」(音楽之友社)、「オーディオ風土記」(DU BOOKS)、監修作に「新宿ピットインの50年」(河出書房新社)などがある。

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