コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第154回/いつの日か、奥村愛のバッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏会を聴きたい![村井裕弥]
日本オーディオ協会(日本オーディオ学会)主催のイベントが、今春からOTOTENに進化発展。思い付くまま並べてみると、 ○ 全日本オーディオフェア ○ オーディオフェア ○ オーディオエキスポ ○ A&Vフェスタ ○ オーディオ&ホームシアター展(確か途中で「&」が消えた) ○ 音のサロン&カンファレンス こんなところか。会場は、晴海、池袋、横浜、秋葉原、お台場など(新たに脚光を浴びるトレンディ・スポットをハシゴ?)。開催地が変わるときは、準備のためか、1年あいだを置くこともあった。 それが今年から、東京国際フォーラム(有楽町)になった。ミュージックバードに割り当てられたスペースは7階ラウンジ。インターナショナルオーディオショウのときは使われないスペースだ(だから、あの階には中華レストラン「東天紅」しかないのだと思っていた)。 下見したスタッフの言によれば、非常にライヴな空間で、しかも開けっぴろげ。うしろの壁がないから、大きな音を出すと、それが吹き抜け経由で、地下1階広場にふりそそぐのだという。 |
![]() 東京国際フォーラム。広々とした吹き抜けの空間。 |
初めてその話を聞いてからおおよそ1か月が経過。ミュージックバードで見せてもらったプランは、人気番組の公開収録3本立てであった。内訳は、大橋慎さんの「真空管オーディオ大放談」、野村ケンジさんの「アニソンHi」、奥村愛さんの「今トキ!クラシック」で、筆者は初日の「今トキ クラシック」にゲスト出演することになった。 「えっ!? ボクなんかでいいの?」と思ったが、自宅の棚からは奥村さんのCDが8タイトルも見付かった! 書架からは奥村さんのインタビューが掲載された雑誌も出てきた(当然見付かったその日から、徹底した予習が始まった)。
![]() ミュージックバードの展示 |
OTOTEN初日はひどい雨。それでも13時30分からの「アニソンHi」は満席であった。 ゲストは、前半がMIA Regina(「アイカツ!」「ももくり」「sin 七つの大罪」)、後半がSCREEN mode(「ぎんぎつね」「食戟のソーマ 弐ノ皿」「文豪ストレイドッグス」など)。「こんなメジャーな人たちが出てくれるのか」とびっくり!(2日目は「響け!ユーフォニアム」のTRUEまで登場)これは野村ケンジさんの人脈!? 奥村愛さんは予定通り開演45分前に到着。スタッフをまじえ、最後の打合せをおこなった。番組の解説は奥村さんが、ミュージックバードやコミコミLightの解説は筆者がすることになった。 |
公開収録は16時ジャストにスタート。大勢の人を前にしゃべるのは慣れているつもりだが、一応自分がゲストであることと、となりに奥村さんがいらっしゃることで、いつになく緊張…。だから本当は冒頭にこれを訊くつもりでいたのだが、ついあと回しになってしまった。
「何回手をあげてもいいです。どうか調査にご協力ください。まず、『奥村愛さんが大好きだから来た!』という方(約4割か)。では次に、『オーディオが好きだから来た!』という方(これもほぼ同数と見た)」 |
![]() 満員御礼!公開収録の様子 |
小出郷文化会館(新潟県魚沼市)で録音する際、「針音が入ってしまうから」と館内すべての時計を止めた話から、「デジタル腕時計だって、部屋の外へ出すと音がよくなりますよ」という話に発展(何人かの方が「あるある」とうなずいてくださったのは嬉しかった)。
![]() 生演奏が始まると立ち見のお客様も! |
そこからコンセントによる音の違い、果ては「マイ電柱」の話にまで発展していったのだから、これはもうオーディオ番組と言ってよい内容! ラストは予定通り、奥村さんの生演奏。バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番よりガヴォットがおごそかに演奏されたが、割れんばかりの拍手が静まったのち、筆者がムチャぶり。 「あのう。今のもたいへんよかったのですが、皆さん、滅多にないことですから、マイクをはずした音、PAなしの音を聴いてみたくありませんか?」と問い掛けると、これまた怒涛のような拍手。 ヴァイオリンからピックアップ・マイクを取り外し、PAを切ったのち再度演奏されたガヴォットは、その細やかさ、味わい深さがまるで別物。 |
終演後の拍手がより一層熱っぽくなったのは言うまでもない(あとで聞いた話だが、地下1階の物販コーナーまで、その大拍手が降りそそいできて、「すごいな、上ではいったい何をやってるんだろうな」と話題になったらしい)。 要するに、オーディオ機器の厳密な比較試聴には向かないライヴなスペースが、PAなしのヴァイオリン演奏にはベストであったという話だ!! 残念ながら、この日の録音は後日、短縮版のみ放送。その際、生演奏は放送されないとも聞いた。その場に居合わせたものとしては残念この上ない話だが、その分いつか実現する無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会への期待が増したとも言える。いったいいつになるのだろう。会場はどこだろう。日本国内であれば、どこでも駈け付けたい! その日を想像するだけでワクワクしてしまう。 (2017年5月19日更新) 第153回に戻る 第155回に進む |
![]() 収録後の記念撮影。おつかれさまでした! |
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