コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第17回/ミュージックバードの音
2013年7月の放送からミュージックバードの音が変化したことを把握されている方も少なくないだろう。簡単に言うと、全域のクリアネスが増し、特に言葉が聞き取りやすくなった。また、音場感情報の精度が上がって、空間の奥行き表現が向上。ただし、低域の厚みが減って、ちょっとすっきりしすぎているのではないかと感じている方もいるかもしれない。 |
撤去される旧APS設備。 さまざまな機械(ホームオーディオで言う、コンポーネント)が新しいものになるのはもちろん、 各種ケーブル類も新品になる。ちなみに新APS設備は別室にて稼働している。 |
道具は修理しながら大事に長く使った方がいいとは個人的には思っているが、デジタルの音声機器の分野で20年前と言ったら、歴史で言えば江戸時代くらいの感じである。まだ黒船を知らない、のどかな時代のシステムだったのだ。それが現代のピカピカの機械になった。そりゃあ、音だってすっきりするわけだ。だいたい設備の大きさというか、占有スペースが相当に小さくなった。以前は部屋いっぱいにあった設備が占用ラックの一部にまとまっている。短い信号経路は、音の反応の良さや鮮度感の高さにつながる場合も多い。
もうひとつはその更新に伴ってのシステム自体の変更だ。スタジオで番組をやり、それをADコンバーターでデジタル信号にするのだが、実はその後に何段階もの行程があったのちに番組は放送として衛星に飛んでいく。その何段階の中にいったんデジタル信号からアナログ信号に変換し、その後に再びデジタル信号にするプロセスが存在したのだが、これをなくした。専門用語としてはプリエンファシス、ディエンファシスの行程をなくしたそうだが、これによる音質向上も大きい。
放送システムの流れ。 新PSシステムの全体が新しくなり、また内部の構成もシンプルになった。 |
ひとつ言えるのはミュージックバードのみなさんってけっこう音にこだわっているということだ。さきほどの放送システムの話だが、「APS設備」の後、たぶん世の中のほとんどの放送局は「トータル・コンプレッサー」をかけているはずだが、ミュージックバードのクラシックやジャズ等の音にこだわっているチャンネルはなんとこの「トータル・コンプ」をかけていない。僕は30年間ラジオのディレクターもやってきているので
「おいおい、なくて大丈夫なのか」と思ったりもするが、ミュージックバードの音質についてのモチベーションがけっこう高いのを感じる。
|
コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」バックナンバー