コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第17回/ミュージックバードの音





 2013年7月の放送からミュージックバードの音が変化したことを把握されている方も少なくないだろう。簡単に言うと、全域のクリアネスが増し、特に言葉が聞き取りやすくなった。また、音場感情報の精度が上がって、空間の奥行き表現が向上。ただし、低域の厚みが減って、ちょっとすっきりしすぎているのではないかと感じている方もいるかもしれない。

 これ、放送システムの変更があり、放送としての音のクォリティが向上したからだ。これにはふたつの要素がある。

 まず、スタジオで作っている生番組や録音番組、ミュージックバードからのお知らせなど、さまざまな要素を統括し、送り出す「APS設備」。これが新しいものになった。そもそもミュージックバードの放送が始まったのは1992年だが、「APS設備」の一部は20年前の機材が使われていたらしい。



撤去される旧APS設備。
さまざまな機械(ホームオーディオで言う、コンポーネント)が新しいものになるのはもちろん、
各種ケーブル類も新品になる。ちなみに新APS設備は別室にて稼働している。

道具は修理しながら大事に長く使った方がいいとは個人的には思っているが、デジタルの音声機器の分野で20年前と言ったら、歴史で言えば江戸時代くらいの感じである。まだ黒船を知らない、のどかな時代のシステムだったのだ。それが現代のピカピカの機械になった。そりゃあ、音だってすっきりするわけだ。だいたい設備の大きさというか、占有スペースが相当に小さくなった。以前は部屋いっぱいにあった設備が占用ラックの一部にまとまっている。短い信号経路は、音の反応の良さや鮮度感の高さにつながる場合も多い。

 もうひとつはその更新に伴ってのシステム自体の変更だ。スタジオで番組をやり、それをADコンバーターでデジタル信号にするのだが、実はその後に何段階もの行程があったのちに番組は放送として衛星に飛んでいく。その何段階の中にいったんデジタル信号からアナログ信号に変換し、その後に再びデジタル信号にするプロセスが存在したのだが、これをなくした。専門用語としてはプリエンファシス、ディエンファシスの行程をなくしたそうだが、これによる音質向上も大きい。







放送システムの流れ。
新PSシステムの全体が新しくなり、また内部の構成もシンプルになった。

 ひとつ言えるのはミュージックバードのみなさんってけっこう音にこだわっているということだ。さきほどの放送システムの話だが、「APS設備」の後、たぶん世の中のほとんどの放送局は「トータル・コンプレッサー」をかけているはずだが、ミュージックバードのクラシックやジャズ等の音にこだわっているチャンネルはなんとこの「トータル・コンプ」をかけていない。僕は30年間ラジオのディレクターもやってきているので
「おいおい、なくて大丈夫なのか」と思ったりもするが、ミュージックバードの音質についてのモチベーションがけっこう高いのを感じる。

(2013年7月31日更新) 第16回に戻る 第18回に進む 

鈴木裕

鈴木裕(すずきゆたか)

1960年東京生まれ。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。ライターの仕事としては、オーディオ、カーオーディオ、クルマ、オートバイ、自転車等について執筆。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。(連載誌)季刊『オートサウンド』ステレオ・サウンド社、月刊『レコード芸術』、月刊『ステレオ』音楽之友社、季刊『オーディオ・アクセサリー』、季刊『ネット・オーディオ』音元出版、他。文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)。オートサウンドグランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員(2012年4月現在)。

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