コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第171回/「爆☆音☆王、カートリッジデュエル」を夢想する10月 [田中伊佐資]

●10月×日/「八重洲レコード聴きまくり大会」Part11を実施。いつものようにディスクユニオンJazzTOKYO店長生島昇さんと僕がレコードを交互にかけていくのだが、メインイベントは「田中・生島秘蔵・超ハイパワーMMカートリッジ・バトル」。
 これはここ1年ほど温めている企画で、オーディオをネタにしてはいるものの、発想は別のところにある。平たくいうと、古くはメンコ、ベーゴマの類、新しいものならベイブレード、遊戯王やポケモンのカードゲームなどと同じ対決ものだ。持っているカートリッジを差し出し、どっちが強いかを競い合う。まあ、いいトシこいた大人のメンコです。

 ただこの「強い」というのが、かなり微妙な表現で、特定のルールや数値によって勝敗が決まるわけではないから判断が難しい。第三者(審判)が好き・欲しい・インパクトがある・爆音度が高いなどで決めてもらうしかない。シャレがわからない人が加わると「こんな安物に負けるわけない。俺のほうがいいに決まっている」とケンカになるかもしれない。

【「ヤエレコ」が名古屋で開催!】

「ディスクユニオン/OTAIRECORD presents YAERECO 名古屋場所 supported by TEAC」
日時:2017年11月28日(火)19:30~22:30
場所:Live&Lounge Vio(名古屋市中区)
入場料:2,000円(1drink/1FOOD付)
出演:田中伊佐資、生島昇(ディスクユニオンJazzTOKYO店長、ようすけ管理人(OTAIRECORD,OTAIAUDIO CEO)
詳しくはこちら
 
 値段に関係なくこんなにいいカートリッジがあるんだといった発見が面白いわけだから、エントリーするカートリッジはせいぜい中古相場で3万円以下ってところだろう。
 音楽の趣味が合う4人くらいがどこかに集まって、レコード(土俵・リングに相当)をいろいろ変えながら「そんな高いリード線使ったらずるい」とか「スペーサー入れるのは反則だ」とか、うじゃうじゃ馬鹿話をしながら朝から晩までやってみたい。素晴らしい一日になるはずだ。
 こういう毒にも薬にもならない企画を雑誌で連載したいけど、コアすぎてなかなか難しいだろう。無理だったらネットでやるのもいいかもしれない。というかここのコラムでやればいいか。というよりもミュージックバードの番組で実況するか。タイトルは「爆☆音☆王、カートリッジデュエル」。または僕が誰かの家を訪ねて対決する「爆音カートリッジ道場破り」。「田中、遂に5連敗。最後の砦、シュアM44-7初期モデルで起死回生をはかる」みたいな見出し、いいよなあ。


ヤエレコで好評だったシュアのM75B

★田中伊佐資ツイッター
はじめました!
Twitter  
 そんな話をJazzTOKYO店長生島昇さんには一切しなかったが(するわけないか)、シャレがわかる男だけに、はなから僕の意図を全部のみこめていた。
 僕が持参したメンコは、テクニクスのEPC-U1200、シュアM75B、同M44G(リケース版)、同M7D。生島さんはエンパイヤの888TE、ピカリングの625-DJ、エラックSTS-244、オーディオテクニカのVM530EN
 どれが1番強いカートリッジかを決めるなら一曲に統一するのが正しい。しかしお客さんの音楽的な好みは千差万別であるから、イベントとしてはいくらなんでもダレてくる。そこで二人が持参したレコードに合わせてカートリッジを変えていくスタイルで進行していった。

 個人的な感想としてはシュアM7Dがまったくウケなかったのが残念だったのと、生島さんのピカリングの625-DJが好みだったこと。
 最後に好きなカートリッジを皆さんに挙手してもらったら、エンパイヤとシュアM75Bに人気が集まった。

 なおヤエレコで生島さんがかけたレコードは次の通り。
I Put a Spell on You/Nina Simone
The Moment of Truth/Salena Jones
It's Alright With Me/Inge Brandenburg
危い土曜日~キャンディーズの世界

 僕がかけたのはこの4枚。
I Can Feel the Night Around Me/Nightlands
Witness/Benjamin Booker
Hey Jude/Beatles
Painted from Memory/Elvis Costello & Burt Bacharach

 次のヤエレコは11月28日(火)19:30~22:30。東京から飛び出して名古屋で開催。「OTAIRECORD」「OTAIAUDIO」と共同イベントとなる。 詳しくはこちら


●10月×日/プラグ類に使用する接点クリーナー、接点復活剤の類は、昔からいくつも出ていて、何個か試してみたけれど長続きしなかった。すぐ面倒くさくなる。しかしそれ相応の目覚ましい効果があるなら、億劫がらず率先して使うはずだから、大したことなかったんだと思う。
 アンダンテラルゴが、「トランスミュージック・デバイス」と命名された接点クリーニング・拡張安定剤なるものを出した。また同じようなものだろうなあと軽んじていたが、これがなかなかいい。
 手っ取り早くやってみるかと、ヘッドシェルのトーンアーム側、左右ホット、コールドの接点4つに試みてみる。僕はこのポッチをあまりクリーニングしたことがないが、多少なりとも効果があれば大したものだと思う。
 製品は2液で構成されている。まず接点磨き剤。これで接点を磨いて拭き取る。次にもうひとつ接点拡張剤を塗り、10分したらこれも拭き取る。プラグなどの接点部分は肉眼では平らに見えるが、顕微鏡レベルでは多かれ少なかれデコボコしている。それをこの接点拡張剤で平滑にするということらしい。


トランスミュージック・デバイスの接点拡張剤

『I Can Feel the Night Around Me』Nightlands

 最近よく聴いていて、ヤエレコでもトップにかけたナイトランズの『アイ・キャン・フィール・ザ・ナイト・アラウンド・ミー』は、ビーチボーイズやフィル・スペクターに捧げているかのような多重コーラスが気持ちがいい。
 このレコードで処置する前と後を聴き比べてみると、変化は著しかった。ヴォーカルが鮮明になり背後のコーラス・ハーモニーがふわーっと大きく広がった。マルチアンプ駆動なのでシステム全体の接点は結構な数にのぼるが、近いうちにがんばって磨いてみようかと思う。

(2017年11月10日更新) 第170回に戻る 第172回に進む 

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

東京都生まれ。音楽雑誌編集者を経てフリーライターに。現在「ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」「ジャズ批評」などに連載を執筆中。著作に『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)、『オーディオ風土記』(同)、『オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記』(音楽之友社)、監修作に『新宿ピットインの50年』(河出書房新社)などがある。

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