コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第175回/ALLION A10を、200Vで使ってみたら[村井裕弥]

 海外勤務を終え、日本に帰ってきた途端、多くの方々がため息をつくのだと聞く。
「どうして、日本の衣類乾燥機は、こんなにも乾きが悪いんだ!? クーラーも、冷えが悪いし、調理家電も焼けるの遅い!」
 理由は簡単。日本の住宅用コンセントに来ているのは交流100V。外国はその多くが200Vから240Vなのだ。お疑いの方は、「世界の電源電圧」で検索してみるとよい。すぐ電圧一覧表がヒットする。200V以上の国が圧倒的多数で、ジャスト100Vの国などほかにあるのだろうか(!?)というのが現状。近年、おとなり韓国が100Vから200Vに切替えたという情報にも驚かされた(全国民が全家電製品を買い換えた!?)。
 検索を続けると「日本のコンセント電圧(100V)は世界で一番低い」というサイトもヒット!


ALLION A10

メインブレーカーから引いた200V。壁の中を通してオーディオルームにようやく到達

オーディオルームの壁に、オーディオ専用分電盤を取り付ける
 さあ、ここからはALLION A10という筆者愛用プリ・メインアンプの話だ。購入後約1年が経過。「えっ!? 何それ」という方は、コラム第139回をお読みいただきたい。現在、筆者宅オーディオルームにおける扇のかなめ!
 今回のコラムは「このALLION A10を、200Vで使ってみたら」というお話だ。ALLIONのアンプは、その多くが200Vでも使えるように設計されている。「日本のコンセントは100Vじゃなかったのか!?」とおこられそうだが、実はほとんどのお宅で分電盤までは200Vが来ているのだ! だから気付かぬうちにエアコン用コンセントだけ200Vになっているお宅もある。

 100V仕様から200V仕様に切り替えるため、わが家のA10は製作者の元に運ばれた。2週間ほど待っただろうか。戻ってきたA10は、100Vで鳴らしたときとはずいぶん違う顔を見せた。そのときの試聴メモを、ALLION掲示板にそっくり載せたので、ここに引用させていただく。
○ スケール感
○ 最低域再生能力
○ ストッパー(リミッター)なしにどこまでも伸びきるエネルギー感
○ フォーカスのよさ
○ 空気感の濃密度
すべてが向上して、もう表現する言葉に困るほど。(以上が引用)
 いや、ホント困ってしまうのだ。100Vで鳴らすA10の音に惚れ込んだから、即購入したのだが、「200Vで鳴らすと、もっとすごかったよ!」と今頃書くのはいささか無責任ではなかろうか。中には「俺んちの分電盤には200Vが来てないんだよ。100Vじゃすべての実力を出し切れないなんて、一種の欠陥品じゃないの!?」と怒り出す方もいらっしゃる?

 出水電器11月の試聴会テーマを「100V対200Vの対決試聴」にしたのは、この圧倒的な違いを1人でも多くの方に感じていただきたかったからだが、勝負は数秒で決まった!
 以下もALLION A掲示板からの引用だ。

 (試聴会)当日、会場には1時間ほど前に着いたが、すでに100V対200Vの対決は始まっていた。比較的新しい録音のジャズ(Venusのスティーヴ・キューンなど)で比較したのだが、勝負はほんの数秒でついた!!
「きょうのテーマは、100V対200Vだけど、もうほかのソフトはかけなくていいよね(笑) あとは200Vで、いい音楽を楽しむ会にしちゃいましょうよ」
 そう話したら、会場がどっと沸いた。
 その日感じた200Vのメリットは「力強さ」より「静けさ」だった。秋まで「最高だ」と感じていた100Vの音が歪みっぽく感じられるほどの優位性。
 いや何、それは100Vで使うA10が悪いのではなく、200Vで使うA10がすごすぎるだけなのだ。
 S/N比感が高いので、もっと音量を上げたくなる。上げても、うるさい感じにならないから、さらに上げたくなる。


 当日は「200Vにすると、演奏家の格が上がったようにも聞こえる」といった声も聞かれた。
 そう。低域がどうとか、迫力がどうとか、そういうレベルの話ではなく、音楽再生能力が別物になるのだ! その音源に入っている「音楽の一番おいしいところ」をぐっとつかんで、聴き手に向かって全力投球。ついでに「演奏者周辺にただよう空気感」も飛んでくる!(以上がALLION掲示板からの引用)

 最後に2つだけ注意事項。ALLION A10は、200Vでも使えるように設計されたアンプ。そうでないアンプ(100V専用)に200Vを給電すると壊れたり、火事になったりするので、絶対禁止!!また、電気工事士の資格を持たない人が分電盤やコンセント以前(屋内配線など)をいじることは違法なので、これも厳禁。
 こんな書き方をすると、えらく恐ろしいことのように感じられるかもしれないが、要は「よーくわかっている人(有資格者)にやってもらおう」というだけの話だ!

【緊急告知】
2018年1月13日(土)・14日(日)、ホテルマイステイズ御茶ノ水(東京都千代田区神田淡路町2-10-6)で、TOKYO AUDIO BASE 2018が開催される。ネットワークジャパン(QUADRAL)、ディナウディオジャパン、光城精工、フィディリティムサウンド(Mark Audio)、ゾノトーン、SAEC、ZYX、四十七研究所など、筆者が熱烈プッシュするメーカーや輸入商社が出展するので、ぜひお出かけいただきたい。ちなみに、ALLION(出水電器)は3階会議室4。たぶん講師か何かやっているはずなので、ご声援よろしく! 詳しくはこちら
(2017年12月20日更新) 

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村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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