コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第178回/これほど密度の濃い1月前半は、生まれて初めてだろう[村井裕弥]

 今月になって、何人もの人から「あけましておめでとうございます」といわれ、「えっ!?」ととまどった。なぜかというと、ミュージックバード新年番組の収録がかなり前に終わっていて、こちらの頭の中はとうの昔2018年に切り替わっていたからだ。
 業界の事情をわかっている人たちからは、「年末進行(印刷屋さんの冬休みに合わせ、原稿締切が約半月早まる)がたいへんでしょ?」というお言葉もちょうだいする。しかし、おととし暮れのように「日本縦断パラゴンの旅」をそこに入れたりしていないから、「前年のことを思えば、これしき」という気になれる。

 そういえば最近、オーディオに関する相談ごとより、鉄道や旅行に関する相談ごとが増えたような気もする(来年の今頃はトラベルライター?)。主に、フルムーン夫婦グリーンパスに関するお尋ねだが、
「夫婦合わせて何歳から使えるんですか」
「JRなら、どんな列車でも乗れるんですか」
「利用できない時期が、年に何回かあるってホントですか」
「正式な夫婦じゃなきゃ駄目なんですか」
「父と娘でも使えますか」
「同性カップルも使えますか」
 中にはどうにも答えにくいお尋ねも混じるから、まずは「フルムーン夫婦グリーンパス」で検索していただき、詳細は直接JR各社にお問い合わせいただきたい。
 ちなみに昨秋は、山形県-岩手県-新潟県-京都府-鹿児島県-福岡県-広島県と大移動。「5日間でこれだけ回った」というと、「アホか」という顔をされるが、短期間のうちに回らないと、音調の比較ができないから、これくらいでちょうどよいのだ(途中でウチのやつが寝込んだのには驚かされたが)。

 なお、このときのレポートは『Stereo』誌1月号から順次掲載される予定。このコラム178がアップされる頃には、2月号も書店に並んでいるだろう。


長岡鉄男先生の告別式で、弔辞を読む貝山知弘先生
 年が明けてからは、1月7日(日)締切の記事を早めに仕上げ、『Net Audio』編集部に送稿。1月6日(土)公開の映画「中二病でも恋がしたい―Take On Me―」を上野で見て、1月9日(火)は番組収録。この日は、3月に放送される4週分を録った。ここ数か月「おすすめディスクの紹介」が続いたので、「いま、この人の話を聞きたい」と題したインタビュー4連発。第1週はGe3代表・羽田昇正さん、第2週はディスクユニオンJazz TOKYO店長・生島昇さん、第3週はオーディオノート堀部公史さんとFIDELIX中川伸さん、第4週はヴァイオリスト、アテフ・ハリムさん。いずれも、かなりレアなお話を引き出すことができた(こちらの喉もガラガラになってしまったが)

 1月12日(金)は、貝山知弘先生のお通夜。秋の終わりから「お体の具合がよろしくない」と聞いていたが、ついに…。そういえば、2000年6月2日、長岡鉄男先生の告別式で弔辞を読まれていたのが貝山先生であった。あれから、もうすぐ18年か。
 おふたりは、オーディオジャーナリズム創世記から共に活躍された、いわば戦友。いま頃、あの世で仲良くオーディオ談義にふけっておられるものと思われる(ここに書くのも何だが、貝山先生の長時間番組、ぜひ再放送していただきたいものだ)

 1月13日(土)、14日(日)は、TOKYO AUDIO BASE 2018。1月開催が初めてであるとか、なかなか詳細な情報が出てこないとかでハラハラさせられたが、ふたをあけてみると、予想以上の大盛況!!

 筆者は3階会議室4(出水電器ALLION)のブースで、1日4回、計8回の講演(もどき?)をおこなったが、オーディオに関するえらそうな話をするのは苦手なので、8回とも有力ゲストを招き、音源もいろいろ持ってきてもらった。

【土曜日】
12時から 生島昇さん
14時から アテフ・ハリムさん
16時から ワケあって急遽、仁木宏典さん(出水電器)とのかけ合い漫才に
18時から ひきつづき、仁木さんとのかけ合い漫才

【日曜日】
10時から 生島昇さん
12時から ばちんさん(音楽とオーディオをこよなく愛する友人)
14時 堀部公史さん
16時 井筒香奈江さん


アテフ・ハリムさんを前に、ハイフェッツ盤の解説をする村井

ラフマニノフ「音の絵」について語る村井


上からALLION A10、エソテリックK-03X

 筆者の原稿や番組によく出てくる方ばかりなので、改めて人物紹介する必要はなかろう。ばちんさんは「大ちゃん数え唄」「みなしごハッチ」「ガッチャマン」「ど根性ガエル」などを持ち込むのではと予想したが、案外手堅い選曲に肩すかしをくった!

 そこで使われた機材は、
○SACD/CDプレーヤー:エソテリックK-03X
○プリ・メインアンプ:ALLION A10
○ディナウディオ:CONFIDENCE C2

「C2をプリ・メインアンプで鳴らすなんてありえない」とお怒りの方もいらっしゃるだろう。しかし、実際会場にいらした方の中からそういう声を聞くことはなかった。
「なぜA10は、ハイエンドスピーカーを楽々鳴らせるのか」についてはもう何度も書いているのでくり返さない。まだお読みでない方は、まずコラム139コラム169コラム175に目を通していただきたい。可能であれば、『オーディオアクセサリー』第164号P154も。

「村井さん、オーディオライターをやっていて、最もつらいことはなんですか」とたまに訊かれるが、そういうときは「あまり感心しない音を褒めろといわれることです」と答えることにしている(そういうときは依頼そのものを断る)。
 その点、今回のALLIONブースは終始、ストライクゾーンど真ん中。どんな音源をかけても、安心して音量を上げられた。自信を持って推奨できた!


「いまかけたCDのタイトルを教えてほしい」と会場で何人もの方から尋ねられたので、以下、CD、SACDのタイトルを挙げさせていただく(あくまで村井がかけたディスクのみ)。

左右にそそり立つのがディナウディオCONFIDENCE C2


トルン奏者・小栗久美子さん 撮影:北川陽稔


井筒香奈江さんが見事にラストを締めくくってくれた
○The landscape of my dreams~夢をみてたの~ 小栗久美子(o.g.music)
○リスト 反田恭平 (DENON)
○チャイコフスキー:三大バレエ組曲 カラヤン指揮ウィーン・フィル(エソテリック)
○ベートーヴェン&メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ハイフェッツ、ミュンシュ(BMG)
○ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲 シェリング、へブラー(タワーレコード)
○オトダマ はせみきた(T-TOC RECORDS)
○ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 小林研一郞指揮ロンドン・フィル(EXTON)
○プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番、第9番(TRITON)
○ハーモニカによる吉田正名曲集 森本恵夫(ビクターエンタテインメント)
○トッカータとフーガ――バッハ オルガン作品集II―― 塚谷水無子(キングレコード)
○アルビノーニのアダージョ ゲリー・カー(キングレコード)
○クール・ストラッティン ソニー・クラーク(エソテリック)
○時のまにまにII 井筒香奈江(Gumbo Records)
○富嶽百景 鬼太鼓座(ビクターエンタテインメント)
○サリナ・ジョーンズ・スーパーベスト(ドリーム21)
○TOMA Ballads 3 苫米地義久(TOMA MUSIC)
○グレイテスト・ゴールド ベンチャーズ(M&I)
○土と水 井上博義、藤井政美(ASC アコースティックサウンドクラブ)

 残念ながら、現在入手困難なディスクも混じるが、Amazonの中古やネットオークションで見つかればラッキー!

 とここまで原稿を書いて、出水電器特製小ブレーカー(ロジウムメッキ)のことを思い出した。サイトにはまだ載っていないが、TOKYO AUDIO BASE 2018では従来製品との比較試聴もおこなわれた。

 仁木宏典さんいわく「この小ブレーカーを最初に評価してくださったのが貝山知弘先生だったのです。従来品から切り替えて、ほんの数秒で『わが家のもこれにしてくれ』とおっしゃった。もちろんすぐお宅に駈け付けたかったのですが、間に合いませんでした。この小ブレーカーに交換したボワノワールの音をぜひいっしょに聴いてみたかったのですが」

 仁木さんの声が、いまも鼓膜に残る…。

(2018年1月19日更新) 
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村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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