コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第184回/青森市「PIA」再訪[村井裕弥]

 2016年の暮れから、フルムーン夫婦グリーンパスを使ってJBLパラゴン設置店を回っている。ここまでの記事は『Stereo』誌
2017年4月号 北海道・青森県
2017年5月号 岩手県・大分県・鹿児島県
2017年10月号 高知県
2017年12月号 愛知県
2018年1月号 山形県・岩手県
2018年2月号 新潟県・京都府・鹿児島県
2018年3月号 福岡県
に載っているから、ぜひお読みいただきたい。


「PIA」店内(2016年12月撮影)
 3月1日(木)、突如北に向かったのは、以前訪ねたお店を再訪したくなったからだ。まずは札幌市の名店「ジャマイカ」を訪ねようとしたが、あいにくとんでもない暴風雪。「たぶん行けるだろうけど、帰りの電車が止まるのでは」と考え、行き先を青森市のジャズバー「PIA」に変更。青森駅前もひどく吹雪いていたが、まずは腹ごしらえ。

 新町どおり右手2階「弁慶」という居酒屋を選んだのは、「おやじが漁師だから弁慶丸で獲れた旬の魚を直送! だから年中新鮮!うまい!安い!」というデカ看板が気になったから。

 この店は、活タコ刺し、真イカ刺し、ホタテ貝焼き味噌が抜きん出て秀逸。ぷるぷるした歯応えはもちろん、素材そのものの繊細なうまみ満載! 「これなら1万円超えは必至」と身構えたが、計6千円台で済んだのだから、青森市民がうらやましくてならない!


青森の郷土料理、貝焼き味噌


以前はこの派手な看板を探せばよかった…

 食後「そろそろあいているだろう」と「PIA」に向かう。しかし道の両端に掻き分けられたドカ雪が行く手を阻む。降りたてでないから、いったんシャーベット状になり、そのあと再凍結してツルツル滑るのだ。

 新町どおりを直進し、野村證券の角を左折するのは前回と同じ。しかし、凍った雪のせいで、そこまでがやけに遠く感じられる。新町どおりから横道(県庁通り)に入ると、歩道の雪はさらに厚みを増し、やむなく車道を歩いて「PIA」に向かう。

 青森新町郵便局の角を右折すると、浜町通り。「左手赤いネオンでPIA」を目当てに歩くが、いくら歩いてもその「赤いネオン」が見えてこない。うろうろしていると、ウチのやつが「あなた、ここじゃない?」という。見ると、地味な看板にかけ替えられているではないか!?

 おおよそ1年3か月ぶりに訪ねた「PIA」でかかっていたのはウォルト・ディッカーソン『Relativity』。ディッカーソンは60年代前半に活躍したヴァイブ奏者(フィラデルフィア出身)で、「メタリック・コルトレーン」と呼ばれたことも。しかし、『相対性理論』なんてアルバムタイトル、いったい誰が付けたのだろう。

 そのあとはキャノンボール・アダレイ『サムシン・エルス』(ステレオのオリジナル盤)、ジョージ・シアリング&メル・トーメ『Top Drawer』などがかかった。

「ずいぶん、音が変わったでしょう。一昨年、村井さんが来たときは、ちょうどトゥイーターの調整中で、聴かせられる音じゃなかったんだけど(苦笑)」

 いえいえ、ご謙遜を。あれはあれで硬派でストレートな音であった。それに比べ今回は、実に見事な極上ソースが程よくかかっているとでも形容すべきか。アルバムごとのうまみをさらに引き出す積極的な鳴らし方だ。








「業務用CDプレーヤーDN-961FAとプリアンプSG520の間に挿入していたライントランスをはずした。ちょっとキンキンしたからね」とマスターは語るが、ほかにもいろいろトライしたに違いない。やはり名店は1度行っただけでは駄目なのだ。

 店内あちこちにLPが立てかけられているが、パールマンと小澤征爾が組んだベルクとストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲(DG)が一番前になっているのにはびっくり! ベルクは1978年11月録音、ストラヴィンスキーは同年2月録音。

 筆者がその盤のほうを眺めていると、「最近、クラシックをよく聴くようになったんだよね。以前から聴きたいと思っていたんだけれど、昔はそこまで手が回らなかった(苦笑)。しかし驚かされるのは、クラシックファンが実にていねいにLPを扱ってるってこと(爆)。大半が新品同様だよ」

 ここでは一昨年同様、ハイランドパーク12年の水割りを3杯くらい飲んだように記憶している。

 その夜は、直近のホテルに泊まって、翌日から日本列島を南下。岩手県、新潟県、佐賀県、果ては長崎県まで足をのばしたのだが、話が冗長かつピンボケになりそうなので、今回はここまでとさせていただく。


マスター長内義考氏(右)と筆者
(2018年3月20日更新) 
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村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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