コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第24回/あと一歩のところでレコード再生の壺に届かなかった九月





●9月×日/池袋のジャズ&ロックバー「玉彦」を取材(ジャズ批評社ジャズ批評)。このバーはジャズやロックのオリジナル盤が、JBLやマッキントッシュなどのヴィンテージ機器でしっかりかかる。ハンク・モブレーやリー・モーガンらの軽く10万円を越えるオリジナル盤が壁に飾ってある。あまりにもきれいなので国内盤と勘違いする客もいるらしい。とりわけアート・ペッパーの幻といわれた『モダン・アート』のオーラ放出量は並大抵ではない。拝観料を払ってもいい。
 マスターの君塚信一さんは「聴いたことがある名盤が、こんなにすごい音だったのかとお客さんを驚かせたい」と言っていた。ぼくもすっかり術中にはまった。とりわけビートルズ「レヴォリューション」のシングルは笑い出すほど刺激が強すぎる。鼓膜のすすはらいになりました。

●9月×日/新潟に住む3人のオーディオ・マニアを取材(音楽之友社stereo)。まずはコーディネイトをしてもらった「キャッツハウス」の店主、花村圭さんに会う。「キャッツハウス」は新潟市内にある、コーヒーが飲めるレコード店。
 花村さんは、蒲田にあったジャズがかかるラーメンの店「げんき亭」の元主人。大繁盛していたみたいで毎日の売り上げ10万円のうち3万円はレコードを買っていたらしい。激務がたたって体調を崩し、大量のストックを持って新潟に移り住みこの店を開店。いまはそれを切り売りしているという。壁一面にあったレコードはすっかり売れてしまったというが、まだまだ掘り出し物がありそうだった。




「アナログ・サウンド大爆発!」の収録。
君塚信一さんと。(10月5日・12日オンエア)



新潟市内にある「キャッツハウス」

の店主、花村圭さん








カートリッジ DENON DL-110

「オーディオ・ホームシアター展 」(10月18日~20日)にて公開録音!詳しくはこちら

●9月×日/ムチャ安い普及品カートリッジのリード線を高級品にしたらどうなるかというテーマで5000円から3万円弱のリード線を聴きまくる(音楽之友社stereo「ヴィニジャン~アナログの壺」)。
 カートリッジはデノンのDL-110(旧価格1万7000円。この10月に値上げ)だから、リード線のほうが高くなるという主従が逆転するケースもある。正直、それもまったくアリ!なほどDL-110が大躍進を遂げる。逆にいえば高額カートリッジもリード線次第では相当しょぼくなる。
 あれほど細くて短く、どうでもいいような体裁のリード線でも、信号が通るという意味ではピンケーブル、スピーカー・ケーブルと同等だ。いっぱしのケーブル扱いをするべきと心得る。そしてケーブルである以上、線材なみに端子のピンが肝要で、そこがしっかりしている製品はやっぱりいい音がした。

●9月×日/リチャード・デイヴィスとL.D. レヴィのデュオ盤『Cauldron』が届く。7月に訪れた知立のジャズ喫茶「グッド ベイト」で聴かせてもらい、ジャズ・レコード500枚聴いて出るか出ないかの凄烈爆音が忘れられず、ebayでようやく見つけ、競うことなく落札。知られていなくてよかった9.99ドル。

 レヴィはドルフィーを信奉している前衛派で、アルト・サックス、フルート、バスクラを駆使する。すごーく期待してかけたら、うちでは「グッド ベイト」を越えるバスクラのわめき声が出なくてコケた。

 

 そういえば6月に大阪16インチ・プラッター・プレーヤー愛好会のメンバー、ひこさんの家で聴いた中島みゆきの「シーサイド・コーポラス」にも泣けちゃって、シングル盤をすぐに買った。これもうちで聴いた限りでは、なんだかなあと呆気ない。あと一歩のところでなにかが足りない。そのなにかがあるからレコードは楽しい。そんな減らず口を誰かに向かってたたきたい。

(2013年10月10日更新) 第23回に戻る 第25回に進む

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

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