コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第256回/新型コロナウイルスの影響で取材自粛の対策を考えた4月[田中伊佐資]

●4月×日/新型コロナウイルスによって人々が外出を自粛している日々が続いている。





 といっても僕の場合は、以前からいつもそうですみたいな引きこもり気味なので「ステイ・ホーム」とか「巣ごもり」とかキーワードが浮上していても、さほど新味がない。
 特に4月はちょうど5月25日出る新著「ヴィニジャン レコード・オーディオの私的な壷」の編集作業に埋没して、マスク不要生活が続いていた。

 編集といっても、初出のstereo誌「ヴィニジャン」を読み直して、原稿をちょこっと直しスペースの都合でボツになった写真を探すくらいで、細かいことは音楽之友社の編集者がやってくれるから大したことはない。

 ただ自分の書いた文をもう一度読んで、忘れていたことはあっても新しい発見はないから、やる気はなかなか出てこない。雑誌のレギュラーページの取材はコロナの影響で取りやめにしたので、時間があるぶんダラダラと過ごしていた。

 しかしこの状態で困るのは、5月発売の連載はなんとか自宅で行うことでかわすことができたものの、とりあえずその次の6月発売はどうすればいのか。



T. Rexの『Electric Warrior』。このTシャツはカッコよすぎて着られないと筆者は語る

 自宅シリーズを続けるのは仕方ないがどうも冴えない。どこかに取材へ行きたいし、その候補もあがっているが、緊急事態宣言が解除されていない以上、慎むべきだろう。
 ヴィニジャンに限っていうと、外出しないで済む方法を考えるに、過去に「アンケート企画」を2回ばかりやったことがある。次もまたこれかもしれない。
 最初にやったのは「レコード袋の道に入ると袋小路に入る」というタイトルで「お持ちのレコードは、内袋と外袋の口が、上・左・右どっちを向いてますか」という趣旨だった。
 編集担当の吉野さんは「そんなのネタになりますかね」とひどく懐疑的だった。







Jamie Lidellの『Building A Beginning』は玄関に飾りたい絵柄


 実は僕も読み物として成立できるかなと危惧していたが、その問いかけをレコード好きにするとそうする理由や蘊蓄が飛び出してきて、すごく興味深かった。よくぞ訊いてくれましたと話が盛り上がるのだ。
 その次が「こんなレコジャケTシャツ、私は着たい」。これは新著に回答者を増やして掲載している。
 ミソは好きなジャケットを訊いているのではないところ。いくら好きでも、それを胸に付けるのは憚れるケースもあるはずだ。

 たとえばヒプノシスが制作したT. Rexの『Electric Warrior』。むちゃカッコいいジャケ。なのでもう普通にTシャツ化されている。

 だけど僕みたいなおっさんにしてみればカッコよすぎて眩しい。このTシャツ着ていたら「なに気張って若ぶってるの」と思われちゃう気がする。
 そうかと思うと逆にパッとしない絵柄でもTシャツにすると妙に映えることだってある。


 そんなことで、次にやるアンケートの内容を考えているのだが、テーマが存外にまとまらない。たとえばジャケつながりでこんなのどうだろう。




▼私が思うこれぞエロジャケ
 僕はオーディオ誌にどうしたらエロを持ち込むことができるか人生の2/3は考えてきた(©みうらじゅん)ので、これは是非やりたい。ただ一目瞭然のエロを選ぶとそれを説明するのは野暮なので、そこはかとないエロがいい。そうすると文章が難しくなりそうだ。

▼このジャケットを自宅の××に飾りたい

 その人のセンスがもろに出る問いだが、アート指向の地味なジャケが並ぶ可能性がある。たとえばECM系とか。
 いまレコード棚を探してみて、たとえば季節が春時分だったら玄関にJamie Lidellの『Building A Beginning』とかいい感じではなかろうか。あるいはキッチンにGrant Greenの『Funk In France』とか。




Grant Greenの『Funk In France』はキッチンに合うデザイン







Eric Johnsonの『Europe Live』は見開きにすると内容の印象までが変わる


▼私の好きなゲートフォールド(見開き)ジャケ
 表の面だけに見慣れているジャケットでも、見開きにすると新鮮な驚きをもたらすものはたくさんある。ああ、こうなっていたのか、みたいな。

 しかし実作業のことを考えると、皆さんレア盤を選ぶ傾向があるので、その画像を入手するのが大変だ。ましてや雑誌掲載に耐えられる解像度のものはネットでは見つけにくい。となると持ち主のジャケットを撮影しに行かなければならない。それでは外出自粛じゃなくなる。

 再び棚を探してみてEric Johnsonの『Europe Live』がいまの気分かな。

 もちろんジャケットから離れてもいい。
▼私が思うこれぞ優秀録音盤
 相当ベタなものだが、オーディオファンはこの情報がいくらあっても困らない。そして僕自身がすごく知りたい。知られざる作品であれば、中古盤価格も安いのでなおのこといい。


▼私が実践するレコードクリーニング
 これも人によって流儀はさまざまだ。クリーニングは、しっかりやらないと気が済まない人と頓着しない人の温度差があり、そのメリハリがつくと面白い記事になる。

 ちなみに僕はバキューム式のマシンを持っているけれど、ほとんど実践していない。「このレコードはメンテすればもっといい音になるな」と想像がつくと、まあいいかとそこでもう安心してしまう。面倒くさいので。






▼私のレコード再生で欠かせないアクセサリー、グッズ
 クリーニングに絞らずにアクセサリー全般に範囲を拡張すると、アンケートとしては散漫な感じになるかもしれないが、参加者をたくさん増やすことができる。
 ターンテーブル・シート、スタビライザー、ヘッドシェル、リードワイヤーなどはもちろんのこと、針圧計とかリードワイヤー交換用プライヤーとか音に直接関係ない物品が出てくると楽しい。

 そんなことでこれから吉野さんに電話をして相談してみるつもり。だが「まあ、今回は休載にしてもいいですよ」とか言われて思いっきりコケたりして。




筆者が「レコード再生で欠かせないアクセサリー」はヴィンテージシステムに使うアームケーブルでモガミの超極細フレキシブル2芯シールド(3011)







【田中伊佐資さんの新著
『ヴィニジャン レコード・オーディオの私的な壺』が発売!】


田中伊佐資さんがステレオ誌に連載中の突撃体験記「ヴィニジャン」をまとめたムックが音楽之友社から5月25日に発売されます。お楽しみに!

ヴィニジャン レコード・オーディオの私的な壺

田中伊佐資 著/音楽之友社

2,530円(税込)/オールカラーB5判・204ページ



(2020年5月20日更新)

 

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田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

東京都生まれ。音楽雑誌の編集者を経てフリーライターに。現在「ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」「ジャズ批評」などに連載を執筆中。近著は「ジャズと喫茶とオーディオ」(音楽之友社)。ほか『音の見える部屋 オーディオと在る人』(同)、『オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記』(同)、『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)、『オーディオ風土記』(同)、監修作に『新宿ピットインの50年』(河出書房新社)などがある。
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