コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第280回/2020年の「ステレオ・ディスク・コレクション」を振り返った12月[田中伊佐資]

●12月×日/去年に引き続き、ステレオ誌に書いている「ステレオ・ディスク・コレクション」の昨年分をなんとなく総括。個々のタイトルはこんな感じだった。







■2月号
11th Street, Sekondi/Gyedu-Blay Ambolley

Welcome To The Cruel World/Ben Harper

Cosmic Partners/Michael Nesmith With Red Rhodes
GUV I & II/Young Guv


■3月号

Under Acid Hoof/Acid Mammoth

Live From Moscow/Elton John, Ray Cooper

El Dorado/Marcus King
Tascam Tapes/Dewolff



【左】11th Street, Sekondi/Gyedu-Blay Ambolley
【右】Under Acid Hoof/Acid Mammoth






■4月号

Life Goes On/Carla Bley, Andy Sheppard, Steve Swallow

God Is a Drummer/Trilok Gurtu

マテオ/マテオ・ストーンマン

Blacktop Run/Sonny Landreth

■5月号

Five Man London Jam/Tesla

Singing for My Supper/Early James

Step Up/Tower of Power

Shine/Joni Mitchell



【左】Life Goes On/Carla Bley, Andy Sheppard, Steve Swallow
【右】Five Man London Jam/Tesla







■6月号

Light my Byre/Peat & Diesel

Uncovered/Steve Harley

Never Not Together/Nada Surf

Posh/Patrice Rushen


■7月号

I'm A Stranger/Tommy McGee

Night Dreamer Direct-to-disc Session/Gary Bartz / Maisha

Circles/Mac Mille

Fodder On My Wings/Nina Simone



【左】Light my Byre/Peat & Diesel
【右】I'm A Stranger/Tommy McGee







■8月号

Swallow Tales/John Scofield
Damn Right, I've Got The Blues/Buddy Guy

Soul Food: Cooking With Maceo/Maceo Parker
To Know Without Knowing/Mulatu Astatke & Black Jesus Experience


■9月号

Love Letters/Jimmy Heath

Honked All Over Again/Diamond Dogs
20th Century Blues/Robin Trower

Things Happened Here/Kansas Smitty's



【左】Swallow Tales/John Scofield
【右】Love Letters/Jimmy Heath







■10月号

Blues With Friends/DION

Blackbirds/Bettye Lavette

49th Parallel/Neil Swainson Quintet

Ordinary Madness/Walter Trout


■11月号

For Jimmy, Wes and Oliver/Christian Mcbride Big Band
An Evening Of New York Songs And Stories/Suzanne Vega

Hearts Town/The War and Treaty
Palo Alto/Thelonious Monk



【左】Blues With Friends/DION
【右】For Jimmy, Wes and Oliver/Christian Mcbride Big Band







■12月号
Sleepless Night/Yo La Tengo
Seeds of Love/Tears for Fears
Sunset In The Blue/Melody Gardot
Is Love Enough?/Stone Foundation


■2021年1月号

Folk N' Roll, Vol. 1: Tales Of Isolation/Ondara
Transparent/Ole Theill

Secret World Live/Peter Gabriel
Return to Greendale/Neil Young & Crazy Horse



【左】Sleepless Night/Yo La Tengo
【右】Folk N' Roll, Vol. 1: Tales Of Isolation/Ondara




 ここ数年は「ほぼレコード、数枚CD」だったが、とうとう2020年は「100%レコード」になった。といっても、大抵は初めにレコードありきから出発して選んでいるので自然とそうなるわけだが。
 数年前は、CDが出たときに果たしてこれはレコード化されるのかとヤキモキしたことが数限りなくあったが、いまや欧米では同時発売が珍しくない。幅広くレコードを選べるようになったのは極めてうれしい。
 よってリストではやたら英字ばかりで、本人の僕ですら頭にスッと入って来ないタイトルもあるが、『マテオ』の除き、すべて輸入盤になった。

 作品を振り返ってみると、あの時は盛んに聴いたけどいまはもう飽きたとか、逆に内容の良さがじわっと身に染みてきたとか、時間が経つと評価が変わってくるケースがある。

 さらにもっと長い目で見て、また聴いてみるかと新鮮な気持ちで棚から引っ張り出せるものが、自分名盤2020なんだろうなと思う。

 ということで初レコード化などの復刻盤は除いて、新譜に絞ってマイベスト5を選んでみるとこうなる(雑誌掲載順)。







●Cosmic Partners/Michael Nesmith With Red Rhodes

 これは純然たる新譜とは言いがたく、40年以上も経って発掘されたライヴ。このコラムの「第262回/2020年上半期のアタリ盤を振り買った6月」にも書いたから詳細は省くが、1月に買ってからその後に出てきたもろもろの作品に年間を通して負かされなかった。音質的に自分の好みというオーディオ的な要素も大きい。おそらくただの記録用として録っておいたテープ音源なんだろうが、いかにもアナログな厚いサウンドが気持ちいい。



Cosmic Partners/Michael Nesmith With Red Rhodes








El Dorado/Marcus King


●El Dorado/Marcus King

 ステレオ誌1月号「2020年に私がヤラれた1枚」に選んだ。ソウルやブルース、フォークを下敷きにした泥臭いロック。なんといってもマーカス・キングの錆びたシャガレ声が誠にチャーミングだ。20代前半の若者がこういう70年代のクラシックなロックをストレートにやるだけでオジサンの僕は驚喜する。ぜひこのまま継承して欲しい。売れ線狙いになったり、変に工夫したりするとつまんなくなっちゃうことはよくあるので。








●Blackbirds/Bettye Lavette

 ベティ・ラヴェットは「ブルースの殿堂」入りを果たしているベテランのシンガー。自分に影響を与えた9人のアーチストへ捧げるカバー集で、ニーナ・シモンやダイナ・ワシントン、ビリー・ホリデイらの歌を凄みのあるしわがれ声で歌いあげる。プロデュースも務めたスティーブ・ジョーダンのドラムがバシバシに決まっていて、それもまた快感。しかしタイトルになっているのは、ビートルズのよく知られた曲だが、圧がすごい声の威力にタジタジとなった。



Blackbirds/Bettye Lavette







An Evening Of New York Songs And Stories/Suzanne Vega


●An Evening Of New York Songs And Stories/Suzanne Vega

 おお、なかなかいいなあくらいで連載時に選んだのだが、さっきも書いたが後になってからその味わいが染み込んで来た作品。NYのカフェ「Cafe Carlyle」で行ったライヴで、いかにも日常的な普段のステージっぽいさりげなさがすごくいい。僕は80年代後半のデビューしたてのヴェガはよく聴いていたのだが、それから後はまったく追いかけていなかった。久しぶりに聴いたチャーミングな歌声には深みが増していて、あらためてファンになった。







●Return to Greendale/Neil Young & Crazy Horse
 ニール・ヤングのザラッとしたギターとクレイジーホースのざっくりうねったリズムが絡むとどんなアルバムでも無性にわくわくしてくる。これは、2003年の『Greendale』レコ発ライブを収めたもので、ここでも相変わらずグルーヴしまくっている演奏に引き込まれる。客観的に見ればぎんぎんに盛り上げるようなステージでもなく、このテイストにハマらないと退屈なんだろうなあとは思うのだが。なお余談だが『Greendale』の中古レコードは2万円を軽く超えるため、欲しいけどずっと指をくわえていたが、このライヴを手にしてその物欲は吹っ切れた。



Return to Greendale/Neil Young & Crazy Horse

(2021年1月21日更新)

 

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田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

東京都生まれ。音楽雑誌の編集者を経てフリーライターに。近著は『大判 音の見える部屋 私のオーディオ人生譚』(音楽之友社)。ほか『ヴィニジャン レコード・オーディオの私的な壺』『ジャズと喫茶とオーディオ』『オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記』(同)、『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)『オーディオ風土記』(同)、監修作に『新宿ピットインの50年』(河出書房新社)などがある。
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