コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第29回/端子は必要悪なのかもしれない

 番組でもお話ししたのだが、端子は大きな問題を抱えている。たとえばRCAインターコネクトケーブル、昔風に言うとピンケーブルをCDプレーヤーの出力端子とプリメインアンプの入力端子に接続する場合だ。ケーブル側の端子の金属とそれぞれのコンポーネント側の端子の金属が接して導通。音楽信号が通ることになるのだが、導通しているからと言って音楽信号がばっちりと伝わっているわけではない。経験則から言うと情報が欠落したり、歪んで伝わっていると言わざるを得ない。そもそも端子の金属の表面は、平滑で面で接触しているようなイメージがあるが、どうやらけっこうデコボコしていてその金属どうしのコンタクトしている面積は小さいようなのだ。
 その上で、ふたつの問題を感じている。

 一番目の問題は端子部では金属どうしが接触していると思っているが、たとえば機械油や手のアブラや酸化皮膜、硫化皮膜などの存在が金属の表面に存在していて、音楽信号の伝達を阻害。悪い影響を与えているようだ。これに対しては以前にも紹介したクリーニングという対策がある。

 そしてもうひとつはミクロ単位の振動という問題だ。
 端子がミクロ単位で振動していることによって、たとえば高域が暴れたり、低域の音像が茫洋としたり、クラシックのライブ盤であればコンサートホールの空気がなんとなくほこりっぽかったりというように再生音に悪さをしている。なぜこんなことが言えるかというと、振動対策をしてみると音が変化するからだ。対策の仕方によって再生音への影響はさまざまだが正しく振動を整えてやると、あるべき音、本来の音、ただしい音、収録現場で鳴っていたはずの音の方向に再生音がシフトしてくる。
 じゃあ、正しく振動を整えるにはどうしたらいいか。

 これは以前から、たとえばケーブルにブチルゴムを貼ってみたり、端子に鉛をくくりつけてみたり、ケーブルどうしをヒモで縛ってみたり、ケーブルとコンポーネントを結束バンドで結びつけてみたり、ケーブルを床や壁から離して振動を吸収するようなもので支えてみたり、あるいはオーディオアクセサリー類を投入するというようなことをいろいろとやってきたわけだが、音調自体が変化する場合が多かった。


レゾナンス・チップ・コネクト

たとえば帯域バランスが変化して低音が出るようになったり、再生音が硬く変化したり、シャープになったり、明るくなったり、スタティックになったりと、プチルゴムや鉛やヒモや、それぞれのオーディオアクセサリーに固有の音の方向性が反映されてしまうのだ。たとえば鉛を大量に投与すると全体的に鉛の音の支配度が高く鳴ってしまったのだった。ある部分に使って結果がいいと、それを全部に投入したいタイプのオーディオマニアの陥りやすい状況だ。そんな人でもオーディオのさまざまな部分に使って振動だけ整えてくれるような、音調を変化させないような、なおかつコストパフォーマンス的にも常識的なやり方はないのかと漠然と思ってきた。
 そんなところに登場したのがレクストレゾナンス・チップ・コネクトだ。

  

 これから書くことはスピーカーがきちんとセッティングされていることを前提としている。左右のスピーカーの高さが揃っていて、垂直とかスラントの角度が合い、フラットならフラット、内振りしてあるのであれば正確にシンメトリーに内振りしてあるというのがミリ単位で合っている状態だ。ただしこれが実際にはけっこう難しい。宣伝のようになって恐縮だが、『レコード芸術』で「ミリとシンメトリーの神様」という企画をやっているのだが、内容はスピーカーのセッティングについて書いているだけなのに既に連載は20回を越え、軽く30回に到達しそうな勢いになっている。細かいことが多くて申し訳ないなとは思いつつ、なにしろ2チャンネルのオーディオはこれがちゃんとしていないと話は始まらない。ステレオ再生のABCであり、重要な、大事な、欠くことべからざる、基本にして奥義とも言える要素だ。スピーカー、ちゃんとセッティングしてください。
 と、肩にも、眉間にも、原稿を打つ指先にも力が入ったところでレゾナンス・チップ・コネクトの効果を書いてみよう。

 レクストの試聴室でのテストだ。システムはデータ再生機(CDトランスポートだ思っていただきたい)、DAコンバーター、プリメインアンプ、そしてスピーカー。
 まず、DACとプリメインアンプの間を接続するアンバランスのケーブルの端子に貼る。ケーブルはLチャンネルとRチャンネルがあり、両端のそれぞれにレゾナンス・チップ・コネクトを貼るので、4個を装着することになる。ちなみに2個で1セットという数え方をするので、この作業をするのには2セット分が必要だ。

 貼る前と後では、音像の立体感とか、スピーカーからの音離れの良さとか、余韻の消え際のきれいさとか、さまざまなものが向上する。向上するのだが、これは向上と言うよりも、本来データ再生機から出力されていたものが素直に、欠落なく伝達された印象だ。しかも音のクォリティ(と言うか、きちんと度、みたいな言葉を使いたいぐらいだが)がこのパートで上がった分、このケーブル以外の要素による、たとえば音の濁りであるとか、微妙に歪みっぽい感じがかえって聴こえてくる部分もある。点数で言えば、20点分良くなるが、どこかのマイナス5点が聴こえてきて、総合的にはプラス15点といった感じの変化だ。誤解されがちなのだが、レゾナンス・チップ・コネクトのような正しいオーディオアクセサリーは魔法ではないので、該当する部分の振動は整えるが他の部位にまでは効かず、その部分が目立つ場合もある。ということで、この後も、データ再生機からDAコンバーターに行く同軸デジタルケーブル、スピーカケーブルの両側の端子、各機器の電源ケーブル、それらの差さっている電源タップの電源ケーブルと言ったように、どんどんレゾナンス・チップ・コネクトを増やしていくと、総合的に音の見え方の純度が上がっていく。

 レクストから広告料も接待も受けていないのに、なぜこんなに力を入れて紹介しているかと言うと、さきほど書いたように、以上のように9セットを使っても、高域がシャープになるとか、低音が増えるとか、あるいはレゾリューションが本来以上に上がるとか、音がツヤツヤするということがなく、ひたすら情報が正確に伝わってくる度合いだけが高まるのが素晴らしいからだ。こんなオーディオアクセサリーも珍しい。

 元のソフトに入っている度合いが高まった再生音を聴いて思うのは、端子って必要悪なんだなということ。本来、ケーブル類というのは基板の所定の場所にハンダ付けすれば一番いいのだろうが、そういうわけにもいかない。なくせないものならば、なんらかの対策をしなければいけないが、レゾナンス・チップ・コネクトは、値段といい、使いやすさといい、音の向上の仕方といい、責任を持って薦められると思った。だって、レゾナンス・チップ・コネクトを買いたくないばかりに、上記の接点の端子を切り落として、それぞれの基板にハンダ付けする手間や使い勝手の悪さを我慢してくださいと言うわけにもいかないだろう。

 

<使用例>(出典:REQST)
(RCAケーブル)
例に挙げた機器では、Lチャンネル側のプラグ下部にスペースが無いので、側面に貼る。


(デジタル同軸ケーブル)
プラグが小型のタイプは、レゾナンス・チップ・コネクトが後方にはみ出してもOK。


(スピーカーケーブル)
ターミナルの向かって右側に貼れば、ケーブル脱着の際に便利。


(電源ケーブル)
機器側コネクタは、挿したときにレゾナンス・チップ・コネクトが下側にくる方向を推奨。

詳しくはREQST HPで 
REQST blog 

(2013年11月29日更新) 第28回に戻る 第30回に進む 

鈴木裕

鈴木裕(すずきゆたか)

1960年東京生まれ。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。ライターの仕事としては、オーディオ、カーオーディオ、クルマ、オートバイ、自転車等について執筆。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。(連載誌)季刊『オートサウンド』ステレオ・サウンド社、月刊『レコード芸術』、月刊『ステレオ』音楽之友社、季刊『オーディオ・アクセサリー』、季刊『ネット・オーディオ』音元出版、他。文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)。オートサウンドグランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員(2012年4月現在)。

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