コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

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第290回/エソテリック K-01XDの甘美と凶暴[鈴木裕]

 エソテリックのCD/SACDプレーヤー K-01XD。これの中古の出物があって、使ってきたK-03XDと入れ替えた。03XDは新品で購入してまだ1年も使っていないのに。この2機種、仕事では出版社の試聴室で同じ条件で聴いていて、その差を把握しているつもりだった。しかし実際に拙宅のシステムの一部として鳴らしだしてみると、さすが01XDと感じ入ることが多く、ここではそのことを書いてみたい。




 エソテリックの一体型CD/SACDプレーヤー。2010年にK-03を購入。4年後、K-03Xに買い換えた。そして、2018年にK-03Xsが登場して、使って来た03XをXs仕様にバージョンアップ。そして2020年にはK-03XDを購入、というのが今までの流れ。その03XDを早くも01XDに入れ替えてしまった。ご縁とでも言うべきいい話があったので決断したが、03から01へのグレードアップはさすがにやっとここまで来たかという感慨もあり、無理して手に入れて良かったと思っている。

 その音の違いというか、01XDの音の良さをお伝えしたいのだが、その前に拙宅での使いこなしについて書いておかないといけないだろう。



エソテリック K-01XD。気のせいか、ボディの輝きも良く見える(気のせいです)。






トレイを出したところ。先端にVRDA ATLASというロゴが彫られている。

歴代、プレーヤーを入れ替えると取り外してはまた付けと、キャリーオーバしている脚。のードストのソートフット。

 まず脚はスパイクとスパイク受けが一体となっている純正のものから、ノードストのソートフットに交換。これは、本来はスピーカーの足元やオーディオラック用に設計されたものだが、雑誌のリポートでK-03にも使えるというということでテストを担当。その結果があまりに良かったので買ってしまった。典型的な”ミイラ盗りがミイラになるシリーズ”だ。アルミと銅の本体の間にセラミックのボールが3個入った構造で、炭山アキラさんとソートフットの話題になると「あ~れ~は音いいですよね」と言われるくらい、明確にさまざまな要素が良くなる。プレーヤーを入れ替えても、今まで使ってきた機種から外しては新しいプレーヤーに取り付けと、キャリーオーバーを重ねてきた。ちなみに、01/03XDになって、純正の脚の取り付け方が変わっているので、これを交換したい人は購入したショップに問い合わせてほしい。今までのように回転させるだけでは純正の脚は取り外せない。

 そして電源ケーブル。これはその時々でうちにある中で一番いいと思われるものを使って来たが、いまのところ01XDには自作の、一応自分の中の名前としては前段機器用の”2019年Bタイプ”を使っている。ただ高域に強調感のある帯域があって、早く2020年型を改良した仕様を作って入れ替えたい。自作電源ケーブル製作については、基礎的なテストをやっていて、もうすぐ一区切りつけ、実際に使えるものを作れる体制になるはずなのだが。K-01XDの大きな特徴としては電源部が充実しているので、電源ケーブルのボテンシャルアップが音にも大きく効くはず、と踏んでいるのだが。





 新しいトピックと言うか武器としては、背面のアース端子のところに仮想アース、エントレックのオリンパス・テンを接続している。元々はパワーアンプ用に導入したのだが、うちの場合、モノーラルのアンプなので接続用のアース線が2本必要。しかし1本しか付属していないので、もう一本買い足さねばならず、どうせ買うんだったら銀のヤツ(オヤイデ GN-47)にしようと思ったり、どこにどう接続するか迷っているうちに忙しさにかまけて繋いでいなかった。01XDに入れ替えてモチベーションが高かった時にオリンパス・テン付属の銅線のアース線で接続してみたところ、大幅にグレードアップ。接続する前からその威力は知っていたのだがあらためて驚かされている。



 その効果をまとめておくと、ノイズフロアが歴然と下がり、高域にあった硬直した感じや歪みっぽい要素も払拭。全体に重心が下がり、特に低域の太さや深み、最低域方向のレンジの拡大と、低音が良くなるのもうれしい。あるいはヴォーカルの音色感や歌としての陰影まで良くなってしまう。奥行き方向の表現もさらに高まる。この音の変化量と向上する質は実際に聴くまでは信用できないだろう。ブラインドテストして聴かせ、「何を変えたか」と質問して、仮想アースと答えられる人はまずいないと思う。あらたに電源対策をやった上で、インターコネクトあたりをすごくいいものにした、くらいの変化量はあるからだ。いやしかし、アース線をGN-47にすればもっと良くなるのだから恐ろしい。仮想アースブームなのもよくわかる。

 とまあ、わざわざお断りしなければいけないほどのイケズな使い方をしている。
 そんな長い前置きがあっての拙宅でのK-01XDの音だ。



K-01XDの背面にあるアース端子に接続している、エントレックのオリンパス・テン。これの有る無しの差はちょっと強烈だ。

K-01DX付属のリモコン。大型でやや重めだが、使い勝手はいい。

 まずは実体感の強さと音の太さ。これはもうさすがとしか言えないレベルになっている。このあたり、エソテリックの音だし、VRDS ATLAS+ディスクリートDACだし、バッファーアンプだし、電源部の4つのトランスだ。長らく03シリーズを使ってきた者の一人として、03との差をあからさまに書くのも気がひけるが、メーカー希望小売価格で71万5千円(内税)分の差は伊達じゃない。




リモコンの断面の形状。側面の丸い形や、重心位置がキモだ。

奥から、プリアンプ、フォノイコ、そしてデジタルプレーヤー用の電源ケーブル。早く刷新していかなければ。

 03XDと01XDの音の差を語弊を恐れず端的に書けば、パワーアンプを変えたような変化になっている。01XDは、より大きな電源部を持った、より高い出力と太いトルクのあるパワーアンプに入れ替えて鳴らしたようなグレードアップなのだ。時々、プリアンプのことをパワーアンプドライバーと言うことがあるが、プリとパワー(と、うちの場合、その間にパラメトリックイコライザーまで入っている)という複数のアンプ類を通って来ているのに、スピーカーの鳴り方が大きく違ってくる。

 低域の厚みのある感じも愉しいが高域も太く、たとえば低音に特徴のあるソフト、ムーティ指揮シカゴ交響楽団の「ロメオとジュリエット」組曲の冒頭などを聴くと「来たー」というココロの動く度合いが相当に高い。最低域から超高域までみっちりと密度の詰まった音。

 大編成のオーケストラを聴いた時の細部の小さい音像の見え方を、記憶の中の03XD時代と比較すると、これまた精度の高さを持ちつつ、ひとつひとつの音の生命力に屈伏せざるを得ない。解像度という言葉をついつい使ってしまうし、最近はアッチでもコッチでも「解像度」は良く出てくる言葉だが「そうそう、本当はこういうのを解像度って言うんだよ」と思わず独り言を言っていて恥ずかしい。たしかに「像が解(ほぐ)れている度合い」のことだが、それぞれの像が癒着していなかったり、見分けられたりするだけでなく、小さい像それぞれに生身でプレイしている人間の感じがある。そういうニュアンスが濃密に出てくる。

 それともうひとつ感じるのは、音の浸透力の高さだ。大出力のパワーアンプとか、トルクが太いという言葉だとイメージしにくいかもしれないが、スピーカーのスイートスポットで聴いた時の、鼻がすーっと抜けるようなサウンドステージの見え方とか、ひたひたと肌から音が沁みてくるような感じ。このあたりも、03時代には到達できなかったレベルだ。



 無理やり01XDの仕様と結びつけて考えるならば、バワーアンプドライバー的な、低音が充実しつつ、高音も太い感じはトロイダルトランスをわざわざ4個も背負っている電源部の充実ぶりが効いているのだろうし、実在感の高い解像度についてはディスクリートDAC部のパーツに選別品を使っている精度の高さなどが総合的に働いてるはず。もちろん、VRDS ATLASというメカドライブのポテンシャルもある。03XDもそうだったが、ディスクから読み取る時の安定感とか、硬い音からしなやかな音まで偏りなく情報を読み取ってくる感じが強まっている。エソテリックの成長というか、成熟を感じるところだ。

 そう言えばエソテリックのオフィシャルのウェブサイトで見ることができるYoutubeの動画は開発陣も発言していて、見ると楽しい。10分くらいのところで加藤開発主任が「生の楽器が持つ甘美な響きと、それとともに併せ持つ凶暴なほどの音のダイナミックさとを、両方を表現できることを意識して開発」した旨、語っている。この言葉、自分も鳴らしていて納得できるものだ。なかなか両立しないだろう、甘美と凶暴。世の中、どうしても甘美が得意とか、凶暴が凄い、というようなどちらかの方向になってしまいがちなのだ。こういった要素の両立がXs世代から明確に良くなっているし、メカと回路の両方をブランニューにしたXDでさらに進化している。


 ひとつ、音以外のところでユーザーじゃないとわかりにくい情報としては、付属のやや大ぶりなリモコンが実は意外と使いやすい点だ。使用前は大きくて重いし、表と裏(と言ってもどっちが表かわからないが)に分かれていてどうなんだろうと思ったが、使いだしてすぐに慣れた。慣れるとたしかにこれは使いやすい。掌の中でくるっと回せる。側面が半円形になっているところがミソで、重心位置も適切なので、くるっと回しやすい。あきらかにこういう使い方を想定している。使いやすいし、あと語弊があるが「くるっと回す」という動き自体、老化防止の効果もあるような気がする。そういった意味では利き手だけでなく、反対の手でも操作した方がいいかもしれない。

 というわけでK-01XD、満足度は高い。個人的な喫緊の課題は、早く01XD用の電源ケーブルを作りたいということに尽きる。

(2021年4月30日更新) 第289回に戻る  第291回に進む  

鈴木裕

鈴木裕(すずきゆたか)

1960年東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。(連載誌)月刊『レコード芸術』、月刊『ステレオ』音楽之友社、季刊『オーディオ・アクセサリー』、季刊『ネット・オーディオ』音元出版、他。文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)。『オートサウンドウェブ』グランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員、音楽之友社『ステレオ』ベストバイコンポ選考委員、ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテスト審査員。(2014年5月現在)。

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