コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第295回/単なる回転メカとしてレコードプレーヤーを聴き比べてみた5月[田中伊佐資]
●5月×日/ここ数か月はオントモムック付録のフォノイコに憂き身をやつしていたこともあって、ステレオ盤ばっかりを聴いていた。モノラルのシステムはなんとなくご無沙汰気味で、その象徴的かつ親分的存在のRCA業務用プレーヤー70Aはたまに動かしてやる程度となっていた。 しかしこのプレーヤーの怪物的な突進力はとんでもない。ずっとステレオ盤づいていることも手伝って、ふとこれをステレオ・システムに繋げてみるかと急に思い立った。 | ![]() RCAのプレーヤーでステレオ再生をするため、Gray 208のアームにSHURE M44のカートリッジを付ける。久しぶりにプレーヤーの底力を確認 |
![]() 中塚昌宏さんのオーディオシステム。スピーカーはアヴァンギャルド、アンプはマッキントッシュ | 自分の子供に優劣をつけるようで、微妙な感じではあるが、50年代のアメリカが手加減しないで作った業務用の馬鹿力は大したものだ。峻烈なバスドラなんぞはウーファーは大丈夫かと心配になってくる。 しかしながら、静寂感とか繊細さなどといったデリケートな表現は得意ではない。ガサツさは天下一品。永遠になつかない大型野生動物という感じもある。 |
この結果はステレオ誌7月号連載のヴィニジャンで詳しいが、想像以上にプレーヤー本体は、そのメーカーが特徴としている音に関与していた。しつこいが「ただ回っているだけ」なのに、それぞれに個性がある。 プレーヤーを購入するにあたり、ベルトドライブ、ダイレクトドライブなど駆動方式が、大きな要素であり、各メーカーは蘊蓄の傾けどころではある。だが、ガラードとEMTが同じアイドラードライブでありながら、まるで別物であるところからすると、駆動方式は最重要項目でもない気がした。 そんなことで最近ぞんざいにしていた70Aは、もっと可愛がってやることに決めた。欧州製を何台も続けて聴いて、アメリカ製プレーヤーが醸し出してくる、アメリカ音楽にマッチするような得難い雰囲気を忘れていた。 | ![]() カートリッジをデノン103、アームをViV labのRigid Floatに統一して次々とプレーヤーを聴いていく。写真のプレーヤーはリンのLP12 |
![]() RCAのプレーヤーは結局、モノラル(左)、ステレオ(右)でダブルアームになった |
そういえば、100%アメリカの音楽を聴いている吉野編集長は、普段使用しているガラード301に対して前々から「聴けば聴くほどイギリスの風土を感じる」として、アメリカ製を欲していた。日本では国産かヨーロッパ製がプレーヤーのマーケットの大半を占めているので、出会いがないまま現在に至っている。 話は大きくそれたが、RCAの70Aをもっと愛でるにあたり、素人DIY丸だしの黒い塗装をはがして木目を出し、ビンテージワックスでも塗ってみようかと考えてみた。 |
(2021年6月18日更新)