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コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第296回/カーオーディオの話題3つ[鈴木裕]

 まずはヨーロピアンサウンドカーオーディオコンテスト
 昨年は中止になり、第8回の今年は西日本大会(兵庫県あじさいフローラみき 駐車場)と東日本大会(茨城県常総市地域交流センター 東側駐車場)で行われた。審査員として両方の大会に行ったのだが、課題曲の難易度が高かった。自分はプロフェッショナルクラスとエキスパートクラスの両方を審査することになって4曲を丸ごと覚えていった。参加者にとってはエキスパートクラスの2曲のサウンドがそれぞれに難しく、なおかつ両立させるのに苦労していたようだ。

ヨーロピアンサウンドカーオーディオコンテストのオフィシャルウェブサイトの表紙。雰囲気が伝わるかもしれない。ヨーロッパ製のスピーカーユニットをインポートしているショップが協力して運営している。(画像をクリック)

原宿にあるマセラティの拠点。中にはギブリ ハイブリッドが展示してあった。 原宿の拠点の中に提示されていた文言。両者の関係について説明されている。(画像をクリック)

 で、その苦労していたひとつは、
・ 宮田大(チェロ), トーマス・ダウスゴー指揮 BBCスコティッシュ交響楽団
『エルガー:チェロ協奏曲/ヴォーン=ウィリアムズ:暗愁のパストラル』から
【Tr.1 エルガー:チェロ協奏曲 第1楽章 Adagio - Moderato】(動画はコチラ)
 これはビーフストロガノフを良く煮込んだような、いい意味で地味な音色感のオーケストラで、まずこの音色感。そして前後左右の定位の再現に苦労していた。

 もう一曲の、ちょっと詳しく書きたいのは、
椎名林檎『ニュートンの林檎』から【Tr.16 公然の秘密】(※CDはDisc2のTr.1)
(動画はコチラ)
 楽器はウッドベース、ドラムス、ブラス群、ストリングスなど、アコースティックなものが多い。これらはけっこうコンプレッサーがかけてあり、ザラザラとした質感。これに対して、椎名林檎のヴォーカルはコンプレッサーの度合いが低いし、音像としてもかなり小さくまとまっている。参加者の中にはそもそもこの曲の録音の意図が理解できず、ハナから諦めている人もいた。
 事前に聴き込んでいって納得できたのは、現代の日本のポップシーンの中で戦っているサウンドで、音の精度が良く出ている、さすがの出来だった。ヴォーカルとバックの楽器たちの音像もかぶりもほぼなく、音色的にギリギリ、キワを狙っている。また、最終的には音楽のグルーヴ感のノリの違いを出していたのも感心した点だ。バックが「1、2、3、4」と4つで取っているオンビートのプレイであるのに対し、ヴォーカルは「いっとー、にぃとー」という2つで取っている横ノリで歌っていて,この感じが難しかったのだが。

 2番目の話題。マセラティとソナスファベールのコラボについて。
編集者から6/24に原宿でマセラティのスペシャルカーが発表されるという情報があって、行ってきた。ただ、お目当てのMC20にソナスファベールが装着されたものではなかった。イタリアンどうしということでどんな音作りになっているのか、機会があったら是非聴いてみたいカーオーディオだ。
 原宿の現場に赴いてみると実際は ギブリの「Fragment Design×Maserati」のお披露目で、それはそれでちょっと華やかで楽しかった。世の中、経済力の高い人と低い側に二極分化している。MC20はちょっとオプションを付けると、すぐに3千万円を越えてしまうそうだが、ある商談会では2日間で20台が売れたという。日本の文化として、経済力の高さを誇示しないことを良しとするのがあるのはわかるが、高級、高額なオーディオももっと売れてほしい。

 3番目の話題。自分のMGB-GTのカーオーディオ。別に音楽がなくても、走っているだけで楽しいし、エンジン音が魅力のひとつだが、さすがに高速道路で移動している時とかまったく音がしないのも眠くなる時があるし、ナビ機能もほしい。ということで、カロッツェリアのいわゆるディスプレイオーディオ、DMH-SF700を装着している。スピーカーは2006年当時、『オートサウンド』で連載していた時のディナウディオのエソテックSYSTEM 222をそのまま使用。

 いやしかしこのエソテック。パッシブネットワーク付きで当時たしか10万円くらいだったが、今でも現役で売り続けられていて、おそらくは20年間くらいは現役のスピーカーだ。さすがディナウディオというか、慎重に入念に開発して、長く売り続けるという姿勢。装着して15年経っていてもまっとうな音で聴かせてくれる。

 ちなみにDMH-SF700にはマルチアンプモードというのがあって、通常は前席用の左右、後席用の左右という4chの出力を持っているが、そのそれぞれを帯域分割、タイムアライメント、f特調整ができるために、前席用の2ウェイ、つまりツイーターとウーファーのそれぞれ4つのドライバーをマルチアンプ駆動するシステムを、たった1DINの装着スペースの本体から出力できる(他に電源部が別体になっているわけでもない)。これのSN感とか、ナチュラルな音色感がけっこういい。また、たとえばクロスの周波数やスロープの角度を変更したい時には、画面にタッチして位置を移動させたり、斜めの角度を変えたりするだけで変更できるというのもさすがイマドキの製品だ。

鈴木裕のMGB-GTに装着したカロッツェリア。本体は1DINだが、モニター画面は9インチある。右側に装着しているのはマッキントッシュのヘッドユニットMX5000。 DHM-700SFでクロス周波数やそのスロープの角度を変更する時の画面。直接タッチして、変更することが出来る。

16年前に装着したディナウディオのエソテック。モノとして劣化していないし、音としても古くなっていない。

 今のところ、自分の使っているスマートフォンの調子が悪くてナビ機能の実力を把握できていないのだが、音楽の音については楽しめている。CDも聴けるようにマッキントッシュのヘッドユニットも取り付けてはいるが、ほぼスマホからのSpotifyやAmazonMusic HDなどのストリーミングかradikoしか聴いていない。そもそもAUX端子に接続してあるマッキンを選択するのには、いったん設定の画面に入らないといけない。後は、実はアンテナを付けていないので、普通のラジオも聴けないのだが、さすがにちょっとこれはこれから何とかしたいとは思っている。

 
(2021年6月30日更新) 第295回に戻る  第297回に進む  
鈴木裕

鈴木裕(すずきゆたか)

1960年東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。(連載誌)月刊『レコード芸術』、月刊『ステレオ』音楽之友社、季刊『オーディオ・アクセサリー』、季刊『ネット・オーディオ』音元出版、他。文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)。『オートサウンドウェブ』グランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員、音楽之友社『ステレオ』ベストバイコンポ選考委員、ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテスト審査員。(2014年5月現在)。

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