コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第36回/「ネフェルティティ」のカレーとアーチー・シェップで元気がでた1月

●1月×日/ジャズ批評に掲載されている「ジャズオーディオ・ディスク大賞」選考会が吉祥寺のジャズ喫茶「メグ」で開かれる。 これは昨年1年間にリリースされたジャズの優秀録音盤を10人の選考委員が選ぶという会で、今年で8回目になる。
 過去の金賞・銀賞はなんとすべてピアノ・トリオ作品が受賞。「ピアノ・トリオ大好き仲よしクラブ」といわれてもしかたがない体裁になってきたので、ここ数年は敢えてピアノ・トリオを外すことを心がけている。さて、V8達成なるかどうか。発表は今月24日発売のジャズ批評にて。

●1月×日/千葉県・柏にあるジャズ喫茶「ネフェルティティ」を「ジャズ批評」で取材。 最寄りの東武野田線増尾駅から徒歩ではしんどそうだし不案内な土地なので、滅多なことでは使わないタクシーに乗車。
 店に入ってすぐ正十二角形のいかにも音響のよさそうなスペースだなと思ったが、お客さん7、8人がみんなカレーを食べている。 しかも午後3時だからランチタイムでもない。レコードにこだわる伝統的ジャズ喫茶がテーマなので、やや好ましくない気配。 しかも音はBGMのように小さい。ひとなつっこいおばちゃんが「あら、雑誌の取材なの? ここのカレーは病みつきになっちゃうのよね」と声をかけられ、グルメ雑誌と勘違いしているふうでもある。
 マスターの栗田勝利さん「まあ、まずは食べて行ってよ」とオートマチックに気前よくカレーが出てきて、 オレはタクシーまで乗って何しに来たんだと取材する気持ちが折れそうになる。 だかしかし、これが旨かった。おいしいカレーに出会って、今日一日は幸せでした、これはこれでよしとするかと思い始めていた矢先、 マスターは「カレーのお客さんが帰ったので、ではいきますね」と愛聴盤だというアーチー・シェップの『ザ・ウェイ・アヘッド』がかかった。 この音量がすさまじく、コントだったら食べていたカレーがブハッとなっていただろう。 エリック・ドルフィーをかけたら音で窓が振動して、仕掛けてあった防犯サイレンがけたたましく鳴りだした。


ネフェルティティ店内


店の名物となっているネフェルティティ・カレーは単品で800円

『ザ・ウェイ・アヘッド』アーチー・シェップ

●1月×日/過去最多、5人のオーディオファンが来訪。ぼくを入れて6人がスピーカーの前に座ると、まるっきり音が変わった。 全員が季節相応の服を着込んでいる。吸音材のカタマリを大量に持ち込んだのに等しい状況になっていた。 響きを吸われてかつてないほどデッドな音になった。得意になってジミヘンのレコードをかけたらギスギスして、なんだかけっこうしょぼい。 そこで部屋の暖房を最強にし、オッサン6人が脱衣し、パンツ一丁になって音楽を鑑賞する。
 ということはさすがにできませんでした。サウナじゃないし。だいたいキモチワルイし。


萩原成さんが改造したレーザーターンテーブル

●1月×日/針を使わず、CDのようにレーザーでレコードをトレースできるレーザーターンテーブルを取材。 板橋の萩原成さんはレーザーターンテーブルを愛用し、フロント・パネルからボディからありとあらゆる改造している。 プレーヤーは、どんな方式であろうとも、筐体の振動対策をすると音質向上することを実感。 レーザーターンテーブルって音がきれいだけど線が細いイメージがあったが、まるで違う。 萩原には「音ミゾ」に出演してもらい、レーザーターンテーブルの音をリスナーに聴いてもらうことにした。 詳細は今後のホームページにて。

(2014年2月13日更新) 第35回に戻る 第37回に進む   

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

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