コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第42回/SP-10MK3が手に入ったので、また新しいアナログ・ライフが始まるゾと思った3月 [田中伊佐資]




●3月×日/大阪の天満橋にあるレコードとオーディオの店「Bunjin Record & Audio Store」に行く。ここはジャズのオリジナル盤、それもモノラルしか置いていない。売っているオーディオも無論モノラル時代のヴィンテージ・モデルばかり。スピーカーは各1個しかない。
 レコードをスコスコとあさると、コルトレーンの完オリ『ソウルトレーン』美盤を1万3000円で発見。東京なら3倍する。買うしかない。店の方針としてネットで在庫開示をしなければ、もちろん通販もやらない。来て、見て、聴いて、納得して買ってくださいという完全にアナログなスタンス。ほかドルフィーの『ファー・クライ』、サラ・ヴォーンの『ウィズ・クリフォード・ブラウン』なども安かったけど、財布がそれどころじゃなかった。駅からちょっと離れていて繁華街でもないから、穴場になっているとみた。もし東京にあったらもちろん誰にも教えません。



大阪の天満橋・南森町にある「Bunjin Record & Audio Store」

●3月×日/滋賀の草津に住むテスト盤やプロモ盤のコレクターを取材(ステレオサウンド:アナログ音盤)。ツェッペリンのファースト、イエスの『危機』、イーグルス『ホテル・カリフォルニア』などのテスト盤を聴き、オリジナル盤はおろかプロモ盤を上回る鮮度の高さに仰天する。
 だめ押しは『ホテカリ』のマスターテープのコピー。スタジオがおそらく保険的な意味で残していたもので、もちろんオープンリールだ。ebayで出品していたという。これはまさしく異次元の音。ずっと聴いていたらオリジナル盤ですら聴けなくなると、だんだんおそろしくなってくる。ワーナーにある国内マスターよりも音がいいのではないか。




幸運にも偶然手に入ったテクニクスのSP-10MK3

●3月×日/テクニクスのダイレクト・ドライブ・プレーヤーSP-10MK3がいよいよ稼働開始。今年の始め、思いも寄らない縁でジャンク品(しかしアーム、キャビネット付き)を入手して、岡山の「Vintage Audio」にオーバーホールをお願いしようやく直って戻ってきた。しかも傷だらけだったシャーシは奇跡的にストックしてあった新品と交換。いまから30年前の製品なのに、まだ保護フィルムが貼ってあるというのも気分がいいので、当分そのままにしておくことにする。
 さすがはトルクの化け物にふさわしく、音はまことにエネルギッシュ。糸ドライブに慣れた耳には新鮮だ。もうこのままで十分という気持ちもあるが、育てることこそがオーディオの醍醐味、今後いろいろいじってみようと思う。最終的にはアームを替え、キャビネットを新調することになるか。基礎体力がすさまじいプレーヤーだけに、さあどうなるか。

●3月×日/サウンド・デザイナー誌の永桶喜則さんが来訪。「ミュージシャンのプライベートスタジオを公開」という特集ページを作るので、電源について語ってくださいという。この雑誌は「ギタリストのためのレコーディングマガジン」だし、第一ぼくはミュージシャンじゃないし、自分の部屋はスタジオでもないし、とネガティブ要素が怒濤の3連発だったのが、永桶さんはそんなこととっくに承知していて「宅録ルームを作るアイデアが満載」ということもサブテーマになっていますという。よく考えたらオーディオもスタジオも電源が重要なのはまったく同じだった。
 まずは壁コンセントを家庭用からオーディオ・グレード品に替えよう、電源タップもコンビニに売っているようなやつではなく、壁コンが埋め込まれ振動対策をしているものを選ぼうということをちょっと喋ったら、2ページもさかれていた。雑誌は宅録をやっている甥っ子に送ってあげることにした。




●3月×日/浜松の「椿オーディオ」で「オレの音ミゾをほじっておくれ」の公開録音。ゲストは店の常連である鈴木俊さん。
もっぱら聴くのはクラシックらしいが、コレクションの幅が広く、前編を「ライヴ録音の歌謡曲」、後編を「鉄道にまつわる歌謡曲」でまとめてくれた。
個人的に感動したのは、鉄道編でかかった74年のヒット曲、麻生よう子の「逃避行」。なんだか泣ける歌だ。いいなあ昭和歌謡。そういえば、ちょうど今年でぼくの人生は昭和と平成が半分半分になる。

(2014年4月10日更新) 第41回に戻る 第43回に進む  



椿オーディオでの公開録音。
この模様は5月10日・17日にオンエア。

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

  • アナログ・サウンド大爆発!~オレの音ミゾをほじっておくれ
  • Brand-new CD~ジャズ・サウンド大爆発!
    オレのはらわたをエグっておくれ

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