コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第55回/聴けなくなって初めてわかるミュージックバードのメリット [村井裕弥]





 近日中にマンションの外壁工事が始まるから、ベランダのプランターなどを大幅整理。各種パラボラアンテナも撤去した。そのため、数日前からミュージックバードが受信できないという深刻な事態におちいっている。

 朝起きる。よほど急ぎの仕事がある日以外はチューナーをONにしていたが、まずはそれができない!
 午前中の仕事を終え、お昼休み。このときも毎日チューナーをONにしていたが、当然これもできない!
 しかし本当に困るのは、夜のオーディオ番組だ。


外壁工事始まる!
いつまで続くのか・・・

○ 木曜日の「オーディオって音楽だ!
○ 金曜日の「ジャズ・サウンド大爆発!オレのはらわたをエグっておくれ
○ 土曜日の「アナログ・サウンド大爆発!オレの音ミゾをほじっておくれ

この3本が聴けないのは、本当につらい! 同業者である鈴木裕さん・田中伊佐資さんが今いったい何を感じているのか、何に燃えているのかがわからないから、ソナーなしで潜航している気分。世界から閉ざされ、軟禁されている気分。




 誤解されそうなので、ハッキリ書いておくが、筆者は何もミュージックバードに「心地よいBGM」を求めているのではない。ひとことで言うと、「自分の感性に鋤・鍬を入れてほしい」「死角をカバーしてほしい」。そんな気持ちで聴いているのだ。

 122ch(THE JAZZ)を例にあげよう。筆者は1950年代から1960年代にかけてのアルバムが延々と流れる時間帯を愛するが、正直な話、そこでかかるCDのほとんどはわが家にある。「だったら、自分でかければいいじゃないか」と突っ込まれそうだが、何千枚もあるジャズCDの中からどうやって、その日かける1枚を選べばよいのか。「人様(お客人)のために選べ」というなら、まだなんとかなりそうだが、自分のためとなるとかえって難しい。
思案のあげく、特定ミュージシャンの特定アルバムだけをかけるようなり、次第にそれに飽きていく。一方その選から漏れるアルバムは忘れられていく…。
 しかし、122ch(THE JAZZ)を聴いていると、そのようなことは起こらない。自分では選びそうにないアルバムが、次から次へとかかるからだ。
「おっ、デューク・ピアソンいいねぇ。何年ぶりだろ」
「アイク・ケベック、たまらん!」
「うおおおお、ルー・ドナだ。どうして自分じゃかけないんだろ」
「来た~っ!! ビッグ・ジョン・パットン」
 かくして、同じ傾向のCDだけをくり返しかけて飽きるという最悪の事態は回避され、忘れられつつあったCDにもまた陽が当たる。退化しつつある脳細胞や筋肉に適度な刺激を与えてくれるのが122ch(THE JAZZ)。筆者はそのように感じている。





 では、121ch(THE CLASSIC)はどうだろう。もちろんこちらにも同じメリットがあるが、「大作をラストまでノンストップで聴けること」のほうがよりありがたいのではないか。
 2時間を超える宗教曲、3時間を超えるオペラ。それらはもちろんわが家のCDでも聴けるのだけれど、2枚目にかけ替えるとき、「ちょっとひと休みするか」とお茶をいれたり、トイレに行ったりして、つい緊張がゆるみがち。ひどいと「続きは明日に」なんてことになってしまう。
 そこへ行くと、ミュージックバードは当たり前のようにノンストップだ。そこで、大作が放送されるときは、開始前トイレに行っておく。あらかじめ飲み物を用意してからスピーカーの前に座る。いつの間にかそれが当たり前になる(気分はほとんど生演奏。CDをかけていても、一期一会)。

 









アンテナと共に一時避難した花たち・・・

 そうやってワーグナーの超大作やベートーヴェンの交響曲全集を聴き通したのは皆よい思い出だが、今年に入ってからは、クレンペラー指揮荘厳ミサ、ドイツ・レクイエム、「大地の歌」3本立て(曲間アナウンスもなし)が強く心に残る。もちろんすべてCDは持っているが、この3曲を通しで聴こうという根性はない。「それがどうした!?」という方もいらっしゃろうが、通しで聴いて初めて気付かされることもたくさんあるのだ。

 音楽ジャンルを問わず「いま演奏しているのは○○だ」と当てる楽しみについては、何度か書いたはずなので端折る。当たるともちろん嬉しいが、はずしても「そう来たか!?」などとひとりで悔しがって盛り上がれる。未体験の方はぜひ!

 外壁工事、12月には終わっているのだろうか。終わっているといいなあ。1日も早く終わってくれ。

(2014年8月22日更新) 第54回に戻る 第56回に進む

 




【新刊「これだ!オーディオ術2 格闘編」8月22日発売!】
 8月、2冊目の単行本『これだ!オーディオ術2 格闘篇』(青弓社)を出すことになりました。5年前に出した初単行本では、「オーディオは、買い物で終わる趣味じゃない」を強くアピールし、「2009年まで、自分がオーディオとどう取り組んできたか」をレポートしましたが、その基本線は変わらぬものの、今回は
 ○ アナログ再生にどう取り組んできたか
 ○ 少しでもアナログに近い音を再生するため、何をしてきたか
について書いています。
要するに、この5年間何をやってきたかのドキュメンタリーですね。

 ○ 格安アナログプレーヤー活用法
 ○ PCオーディオとの出会い
 ○ 英語にもパソコンにも弱い人間が、ネットワーク・プレーヤーの初期設定にチャレンジ
など、前著より皆さまのお役に立てる内容が多いのではと思います。
 あと、オーディオ誌でない媒体に書いたアクセサリー記事等も転載。読み物としても、実用書としても通用する内容を目指しました。まずは書店で手に取ってみてください。(村井) 

村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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