コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第62回/ミュージックバードのチューナー [鈴木裕]
音楽之友社の月刊誌『ステレオ』の、2014年11月号。田中伊佐資さんと村井裕弥さんが鈴木裕の自宅に来て、ミュージックバードの3種類のチューナーの聴き比べをした企画。その音の結果をまとめてお知らせしておきたい。 |
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この3つだ。
実は上記の雑誌の鼎談の時、3人ともにチューナーの型番を覚えていなかったのだが、これを覚えられる人はかなりの記憶力か、専門家に近い立場の方じゃないだろうか。名前、型番の付け方に一貫性が感じられないので覚えにくいのだ。設計年次や内々の事情があるのだろうが。
![]() 「梅」ことCDT-1AMD |
まず「梅」チューナーについて。 |
RCA端子のアナログ出力の音は、全体に音の密度が薄く、色彩感は淡く、低音は力が弱く、かと言って中高域の存在感が強まることもなく、よく言えばマイルドな、よく言えばおだやかな、よく言えばソフトフォーカスの音である。何を聴いても共通したダルさがあり、BGとして低い音量で流しておくのにはいいかもしれない。
![]() MYTEK DIGITAL Stereo192 |
デジタル出力は、今回はふだんのうちのやり方とは違って、マイテックデジタルのSTEREO 192 DSD DACにダイレクトに光ケーブルを指してテストしたが、それでも100点満点で言えばアナログ出力の40点くらいからデジタル出力の65点くらいに向上した印象。基本的にしっかりした音になり、低域、中域、高域のそれぞれがきちんと主張しながら帯域バランスは整い、音像の実体感とか、音場感も出てきた。と言うか、そういうオーディオを語る時の言葉がここに来てやっと有用になってきたとも言える。マイテックデジタルのこのDACは強い音を持った製品で、ミュージックバードとの相性もいいようだ。ただ、音の剛性感とか立ち上がりやしゃがみの俊敏さとか、シャープさといった意味では残念ながらいささか物足りない。「梅」チューナーの電源部やプラスチック製のボディの感じが出ていて、いろいろと対策したくなる。 |
この「竹」チューナーが本領を発揮するのはやはりデジタル出力、それも同軸(コアキシャル)を使った場合だろう。TOSリンクでもその威力はあるが、同軸と比較すると2ランクくらい、音のしっかりした感じや押し出しの良さなどは物足りなくなってくる。たしかに光デジタルでも音の密度や音場の奥行き方向の表現力など、「梅」チューナーのTOSリンク出力に比較してグレードが上がっているのだが、同軸ではさらにしっかりした音になる。
ちなみに鈴木裕の自宅では「梅」チューナーの、スイッチング電源を使ったアダプターの対策として中村製作所(NS)のNMMB01を使用。
さらに、「梅」のTOS光出力をいったんエソテリックK-03の外部入力端子に入れたあと、K-03をDDコンバーター的に使い、その同軸出力をマイテックデジタルのSTEREO 192 DSD DACに入れるという変則的な使い方をしていることを付け加えておこう。(参考:コラム第2回)
(2014年10月31日更新) 第61回に戻る 第63回に進む
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