コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第64回/京セラドーム大阪から久喜まで駆けずり回ったこの秋
[村井裕弥]





 10月はあわただしかった。7日に月刊誌の原稿をすべて書き上げ、11日から2泊3日で奈良。丹生川上神社など東吉野村の、かなりマニアックな秋祭りをハシゴするつもりでいたが、台風19号が接近したため、12日のバスツアーが中止に!
 さてどうするか。「雨風に影響されず、1日有意義に過ごせるところは」と考え、京セラドーム大阪へGO。ちょうどクライマックスシリーズ・ファーストステージ第2戦(オリックスvs日本ハム)をやっていたので、セブンイレブンでチケットを買い求め、3塁側内野自由席にすべり込んだ!
 先発投手はディクソンvs上沢。初回いきなり2点を取った日本ハムがそのまま逃げ切るかと思われたが、8回裏4番T-岡田がスリーラン・ホームランで逆転!オリックスが1勝1敗のタイに持ち込む。
 非常に内容のある、見応え十分な試合であったが、天井から降り注ぐアナウンス音声と選手テーマ曲は正直苦痛。スピーカーの質とかそういう問題ではなく、ドームという閉じた空間だから、余計ストレスがたまるのだろう。屋根のないオープンな球場で、鳴り物入りの応援を聴いていてもさほど不快ではないから。


11日は大阪から奈良にかけて、弥勒様だけを拝観

 翌13日は、京都国立博物館で「国宝鳥獣人物戯画と高山寺」(130年ぶりの修復が完了)を見ようとしたが、「ただいま台風による警報が出ましたので、臨時閉館させていただきます」と門前払い(職員はマニュアルに従っただけだから、彼らを恨む気はない)。
 結局、予定より5時間早い新幹線で帰京した。ホテルパックの割引キップだから、ふつうは乗車変更できないのだが、「台風だから」と柔軟に対応してくれたJR東海には、心から感謝。暴風雨の中を進んだのに、定刻通り東京駅着というのもすごい!






17日オーディオ・ホームシアター展における座談会


生島昇さんのリスニングルーム。7.5畳というスペースからは想像できない音を聴くことができる


「オーディオ・ホームシアター展」公開録音(12月14日・21日放送予定)

レポートはこちら

 15日午後は、京王線・高幡不動駅近くにあるスフォルツァートを訪ねた。ここの試聴室、ずば抜けて音がよいので有名だが、それを作ったアコースティックエンジニアリングの座談会に近く出席するので、「その前に少しでも多くの施工例を体験しておこう」と考えたのだ。
 試聴室に流れていたのは、マーラー:交響曲第3番の緩徐楽章。もちろん、きわめてゆるやかかつおだやかな弱音の連続だ。しかし、これがやけに面白い。この楽章って、こんなにも魅力的だった?繊細な表情がこの上なく多彩で、おそろしく蠱惑的!
 試しに帰宅後、同じところを聴いてみたが、なんか小さい音でボソボソつぶやいているようにしか聞こえない。部屋で、こんなにも聞こえ方が変わるのか!? ウチだって、けっこういい音だと思っていたのに。

 17日からはオーディオ・ホームシアター展。アコースティックエンジニアリングが主催する座談会(パネルディスカッション?)に、3日連続参加。
○ アコースティックエンジニアリング試聴室(九段下)
○ ピアニスト菊地裕介さんのピアノ練習室(『Gaudio』創刊号P129に記事)
○ ディスクユニオンJazz TOKYO店長・生島昇さんのご自宅(『Gaudio』第3号P58に記事)
○ スフォルツァート試聴室(高幡不動)
 この4つの施工例に関して、「これこれこういう音であった」と率直な感想を述べた。始まるまでは「ボクなんかが出る座談会に、お客様が来てくれるのだろうか」と心配していたが、平日であった初日からほぼ満席! 皆様、部屋に相当関心があるご様子。
 なお、アコースティックエンジニアリング試聴室とスフォルツァート試聴室は一般公開されているので、電話予約さえすれば、誰でも訪問可能だ。

 オーディオ・ホームシアター展2日目には、番組「これだ!オーディオ術」の公開収録もおこなわれた。オルガニスト塚谷水無子さんの熱演は、12月14日・21日(いずれも0:00-1:00)に放送されるので、どうかお聞き逃しなく。

 22日は、フェーズメーション(旧フェーズテック)の250万円プリアンプCA-1000を自宅試聴。「演出臭さのないナチュラルな音であること」と「音源が持つ味わいを最大限引き出すこと」に心底驚かされた。







 また、同時にお借りしたMCカートリッジ用昇圧トランスT-500も実に秀逸。9万円のミドルクラスなのに、バランス入力端子が付いていて、バランス・フォノケーブルを使って接続すると、鬱陶しいハム音がピタリと止まる!
 もちろん導入にはバランス・フォノケーブルが必要だが、同社製CC-1000Dが5万円だから、合わせて14万円くらいで、極上のS/N比感がゲットできるわけだ。250万円は無理でも、14万円なら何とかなるんじゃないか? ううん、何とかしたい。

 23日は、トルン奏者小栗久美子さんたちのコンサートを聴きに、横浜赤レンガ倉庫へ。ここで『BAMBOO FAMILY』という彼女のセカンド・アルバムをゲット(いまのところ、ライヴ会場でしか買えないのだ)。その内容については『Stereo』12月号巻末「村井裕弥の特選盤」に書いたから、ぜひお読みいただきたい。

 25日は、久喜総合文化会館で彩球オーディオ倶楽部の発表会があった。元来、会員が手づくりした管球式アンプをデモする会だが、この後半で「PCオーディオについて1時間の講演を」と依頼されたから、1時間半かけて遠征。
 依頼内容はけっこう具体的で、
○ そもそもPCオーディオとは
○ いまどういう状況なのか
○ どうしてこういう状況になったのか
○ まずは何を買えば始められるのか
○ 今後どうなっていくのか(過去の様々な製品のように、一過性ブームに終わる可能性は?)
といったことを語ってほしいのだという。
 実際会場に行ってみると、ものすごい熱気。お客様が250人もいらしているではないか。一生懸命わかりやすく語ったつもりだが、ちゃんと伝わっただろうか。
 ボクが25分話し、残り35分はマイテック・デジタルの新製品マンハッタン(日本にまだ1台しかない)を使ったデモ。この後半が滅法好評であったことは間違いない。越路吹雪あたりが特にツボだったようだ。
 会長からは「こんなにお客様が集まったのは初めてです」というありがたいお言葉もちょうだいした。いろいろな意味でうれしい1日だった。



23日にゲットした小栗久美子の2ndアルバム『BAMBOO FAMILY』


25日彩球オーディオ倶楽部で講演

 27日は、キング関口台スタジオ(地下1階のマスタリング・スタジオ)を訪ね、とある目玉企画の担当プロデューサーを直撃。何がきっかけで、このシリーズが始まったのか。どうしてこんなにもよい音なのかなどを徹底インタビューし、スタジオの音まで聴かせていただいた(これまで体験したプロ用スタジオの中で最上位の音と断言しよう)。この内容は、『オーディオアクセサリー』誌155号に載るので、ぜひお読みいただきたい。

 30日は10:00から「これだ!オーディオ術」の収録。19:00から東京芸術劇場で、ラドミル・エリシュカ指揮読売日本交響楽団を聴く。河村尚子がK.467を弾くからと買ったチケットだが、このノーマークの指揮者(チェコ出身83歳)が振る《新世界より》にいたく感動させられてしまった。子どものときから何百回聴いたかわからぬ耳タコ名曲だが、それがすこぶる新鮮。チェコの雰囲気に満ちたなつかしい演奏を聴かせてくれるのだろうと勝手に予想していたが、完全に裏をかかれた。
 前半のアンコールはK.332第3楽章。後半のアンコールは、ドヴォルザーク:スラヴ舞曲作品72-2。これがまた実に楽しい。

 31日は、午前中に秋葉原テレオン第3店、第4店を取材。ここ数か月続けている中古取扱いショップに関する連載のつづきだ。この内容は、『Stereo』誌12月号に載るので、こちらもぜひ!






31日のアコースティック・オーディオ・フォーラム

 31日夜はアコースティックエンジニアリング本社(九段下)で、「アコースティック・オーディオ・フォーラム」。この月から、コメンテーターのような役割を果たすようになった。
 ちなみにこの会、徐々に存在が知られるようになり、予約が取りにくくなっているのだという。この夜は、11名の方々が参加。音楽にも、電気・電子にも強い方が多く、建設的な意見の交換が続いた。
 主役はもちろん「音のよい部屋」だが、バッファローの技術者を呼んで、DELA N1Z(ハイエンド・オーディオ用のNAS)の開発秘話を聞き、もちろん音質も徹底チェック。開発時、リファレンスとして用いられたハイレゾの「聴きどころ」も興味深かったが、最も盛り上がったのは、同社製パソコン用NASとの聴き比べ。
 ああ、やっぱりパソコン用とハイエンド・オーディオ用には、こんなにも差があるのか。その現実を思い知らされた夜だった。
 この80万円、いったいどうやって工面すればよいのか。悩む…。

(2014年11月20日更新) 第63回に戻る 第65回に進む

村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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