コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第67回/オーディオ機器を一体型にするメリット [村井裕弥]
近年、よりシンプルなシステムにあこがれるようになった。たとえば、エソテリックRZ-1(350,000円税別)のようなハイエンド一体型ミュージックシステム。これにはSACD/CDプレーヤーとフォノイコ(MM用)、プリ・メインアンプが内蔵されていて、USB DACとしても使える。だからこれさえ買えば、わが家の |
![]() エソテリックRZ-1 |
これに類した例としては、クレルKPS25scも強く記憶に残る。発売は98年夏。CDトランスポート、D/Aコンバーター、プリアンプを一体化し、当時349万円(税別)もした。アンバランス出力、バランス出力の音も素晴らしかったが、同社製パワーアンプとCAST接続(電流伝送)すると、ケタ違いの音を聴かせてくれた(『Stereo』誌2004年3月号をお持ちの方は、ぜひ再読していただきたい)。
多少毛色は異なるが、ラステームRDA-560(190,000円税別)も実に興味深い製品だった。1966年トリオが出した「マルチアンプ用プリメイン」サプリーム1(当時166,000円)のフル・デジタル化と考えれば実にわかりやすい。
背面に3系統のデジタル入力を有し、内蔵チャンデバを経て、3ウェイ・スピーカーをマルチアンプ駆動。「そのうち買おう」と思っていたら、会社ごとなくなってしまった(のちにAmulechというブランドで再興を果たすが、RDA-560の後継機は未だ見当たらない)。
○プリアンプ
○D/Aコンバーター
○チャンネル・デバイダー
○パワーアンプ(50W×6チャンネル)
が1筐体に収まって6.1㎏、高さ44ミリ。驚異の省スペース機器だった。
![]() オンキヨーCR-N765 |
「発売後何年もたった製品や現在入手できない製品ばかり取り上げても無意味だろ!?」とお怒りの方もいらっしゃろうから、2014年秋に登場したばかりの製品も紹介しておこう。 |
「そんな安物使えるわけがない」という方には、九州のショップ吉田苑が改造したhina(ヒナ)CR-N765SEを推奨しておく。
詳細は吉田苑のサイトをご覧いただきたいが、脚をジュラルミン製に交換、プラグをレビトン社製に交換、マスタークロックをDEXAテクノロジーズ社製に交換など、オプションも多数用意されている。
本当は、フォノイコ内蔵アナログ・プレーヤーやパワード・スピーカー(アクティヴ・スピーカー)の優れものも紹介したかったのだが、焦点がボケてしまいそうなのでまたの機会に。
筆者は何も、「お手軽オーディオ」を推奨しているのではない。省スペースや節約だけを考えて、以上のような機器を紹介したのでもない。アンプからフォノイコが独立し、プリとパワーが分離し、D/Aコンバーターが外付けとなり、クロックジェネレーターまで外付けになる。それらは1つ1つ意味のあることなのだけれど、その一方で弊害も否定できない。だから、たまには一体型にも目を向けてみようという話だ。
たとえばCDプレーヤーとプリ・メインアンプを結ぶとして、1メートルのピンケーブルを床に這わせるのと内部配線材ハンダ付け(おそらく数センチ)では、どう考えても後者のほうが有利に思えるではないか。
さらに一体化のおかげで、
○5段のラックが2段ですんだら
○ラック背面のケーブルジャングルがすっきりしたら
○タップに挿してある電源ケーブルの本数が半分になったら
それだけでも、音質は確実に改善される。ウソだと思ったら、各種ケーブルを引っこ抜いてみるとよい。引っこ抜けば引っこ抜くほど、音はよくなっていく。
高価な機器を買い揃えること自体がお好きな方は踏み切れないだろうけれど、好きな音楽をよりよい音で聴きたいあなたならチャレンジできるのではないか。
あなたが求めている製品は、意外なところに隠れているかもしれない。そんな気がするのだ。
(2014年12月19日更新) 第66回に戻る 第68回に進む
コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」バックナンバー