コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第81回/久しぶりに貝山知弘さんとじっくり話をして、ふと浅丘ルリ子を思い出した4月 [田中伊佐資]






●4月×日/ぼくのスピーカー・エンクロージュアとウッドホーンを作ってくれたウッドウイルの柴田喜美雄さんが数年ぶりに来訪。生みの親に音を聴かせるとなると、しょぼい音ではバツが悪いので、朝からツェッペリンのプロモ盤など爆音レコードをかけてウーファーのエッジを揉んでおく。
 柴田さんはどう思ったのかわからないが、RCAのプレーヤーを導入以来、そこそこいい感じになっている。前回の定期検診よりは、まだましな音が出たように思う。
 納入されて、かれこれ7年も経つので、そろそろ塗装のメンテが必要なってきた。製作時にさんざん悩んで決めた塗料は大田区にある「アトリエベル」が作っている白木用オイルワックスだ。蜜蝋を始めとする天然素材の蝋(ワックス)が主原料になっているので、無垢材の響きを損なうことなく表面を保護する。ただしワックスなので数年おきに塗ってやる必要があるのだ。
 手配していたワックスは柴田さんが到着する1時間前に届き、その塗り方を教わった。手を掛けてやれることがなんだかうれしい。でも無垢材が枯れきって本当にいい響きが出るのはあと20年後か30年後か。息子はこのワックスがけを引き継いでくれるのだろうか。



「アトリエベル」が作っている白木用オイルワックス




貝山知弘さん。「オーディオ評論家対談~音めぐりヒトめぐり」(5月25日・6月8日放送)


「サンダーバードのテーマ」のオリジナル・シングル

●4月×日/「オーディオ評論家対談~音めぐりヒトめぐり」で貝山知弘さんと対談。オーディオ評論家というと、ひとつの権威みたいなものが付いて回るが、基本はオーディオ・マニア。そのこだわりについて話を聞くのが楽しい。貝山さんは、評論家になる前は東宝のプロデューサーで、実はそのエピソードも面白かった。
 貝山さんといえば高倉健主演『南極物語』のチーフ・プロデューサーとして知られ、興行的にも大成功した。そこで「やはり代表作になりますよね」と当たり前のように振ると、俊敏な反応で「それは違います」ときっぱり否定した。本当にやりたいことがやれなかったということのようだ。そして「代表作は『狙撃』です」とこれも決然たる調子で言い切った。
 この映画は、小学生のときテレビで放映したのをぼくは観ている。ボディ・ペインティングした加山雄三が叩くボンゴに合わせてクネクネ踊る、ビキニ姿の浅丘ルリ子がすごく印象的だった(正しくは悩殺された)。
 貝山さんは『狙撃』の話をしたそうな素振りであったし、そのシーンについて訊きたいのはやまやまだったが、おそらくそこに突入すると二人で暴走し、番組として崩壊するのはわかったので、ぐっとこらえることにした。

●4月×日/東京・八重洲の「Gibson Brands Showroom TOKYO」にて、ヤエレコ(八重洲レコード聴きまくり大会)パート3を開催。初回が15人、2回目が30人、そして今回70人ものお客さんが集まってくれた。コンビを組んでくれているディスクユニオンJazzTOKYO生島昇店長やスタッフの力もあるが、やっぱりレコードを聴く楽しさが相当再認識されているようだ。
 ちなみにぼくがかけたレコードはヴァン・モリソンの新作『デュエッツ:リワーキング・ザ・カタログ』、バッド・カンパニー1枚目の複刻盤、「サンダーバードのテーマ」のオリジナル・シングルなどなど。次は7月にやります。

●4月×日/兵庫の北野幸弘さん、神奈川の吉川博章さんが連れだって来訪。ふたりともパラゴン・オーナーで、なぜか年に一度、春になると東京やその近辺の知人を巡回する。そしてなぜかぼくの家もそのコースに入っている。
 北野さんは超大型のパラゴン使いだが、最近は華奢でオシャレなオーディオに凝っている。イタリアの真空管アンプやドイツのスピーカーなど、デザインが優れているものがあり、しかもほんの数万円で買えるとか。




 そこで代々木の「ヴィンテージ・ジョイン」で売っているRCAのシングル盤用オートチェンジャー・プレーヤーを教えてあげた。口ではうまく説明できないので、ネットにアップされている写真を見せてあげると、「ぜひ欲しい」と目を輝かせて飛び上がった。さっそく、同店のキヨトマモルさんにその場で連絡し、現物を見ずに売約となった。
 後日、北野さんから写真が届いた。やはりコイツはかわいい。その昔、オーディオは家電製品のようにどの家にもあったけど、いまは金がかかる特殊な品物になっている。一般の人々に浸透させようと思ったら間違いなく第一にデザイン、そして安さなんだろう。決して音じゃなくて。
 イケアがプロデュースするオーディオって出てこないかなあなどと思う。

 

(2015年5月11日更新) 第80回に戻る 第82回に進む

 



RCAのシングル盤用オートチェンジャー・プレーヤー

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「オーディオ風土記」(DU BOOKS)「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」(SPACE SHOWER BOOKS)がある。

  • アナログ・サウンド大爆発!~オレの音ミゾをほじっておくれ
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