コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第82回/Ge3銀蛇LANケーブルを使うと、デジタルオーディオの諸問題が見えてくる [村井裕弥]
このコラムが更新される頃、『オーディオアクセサリー』157号が店頭に並ぶ。筆者はそこで、Ge3(ジーイースリー)というメーカーの銀蛇LANケーブルと銀蛇USBケーブルを取り上げているのだが、その記事を書くにあたってGe3代表きささんからたいそう興味深いお話を聞くことができた。 |
Ge3 銀蛇LANケーブル Ge3 銀蛇USBケーブル |
Ge3代表 きささん |
そこまでは以前から把握していた。しかし、今回銀蛇USBケーブルを開発するにあたってあれこれ試作してみると、愕然。他のケーブルと同じようにプラグをハンダ付けし、テスターで導通を確認したケーブルの多くが使い物にならない。パソコンとディスクドライヴ(マルチディスクライター)などをつないでも、相手を認識しないというのだ! |
しかし、きささんの評価は少々異なる。オーディオ専用機は必ずしも「当たり」ではない。様々な製品をチェックしていくと、汎用品の中にかえって「当たり」がある。「僕たちが大切にしている情報をきちんと伝えてくれるのは、むしろそっちなのだ」とまで言い切る。
そして、その「当たり」の電源部を、より優れた電源に替えるとさらに音質が向上! 同様のことは筆者も経験しているので、「スイッチング方式のACアダプターをアナログ式ACアダプターに交換するような話ですね」と返すと、「それが案外そうではない。そりゃ確かに最上級のアナログ電源は素晴らしいが、とてつもなく高価なものになってしまう。それに比べると優秀なスイッチング電源は、3,000円で買える」とのこと。
そういった「当たり」の製品は、分解してみるとおおむね基板がきれい。「ああでもない、こうでもない」とこねくり回した製品に「当たり」はないという話も出た。
「それじゃアナログと変わらないですよね」と返すと、「せっかくデジタルの世界でオーディオをやっているというのに、実際やってみると『なんだ、こりゃ。これじゃアナログと同じじゃないか』と思わされることが実に多い。先ほどふれたUSB接続も、僕らから見ればアナログ的。そういうあいまいなものは、極力オーディオの中に持ち込みたくない」
ちなみに、きささんのいう「当たり」やその改造機を、筆者はまだ聴かせてもらっていない。「聴かせて」とお願いしてあるので、それが実現したら、ぜひまたここで報告したい。
■きささんの主張その3 リッピングしたCDを処分しちゃいかん
半年ほど前、わが家のCDラックを数えたら27もあった。枚数を最後に数えたのは、何年前のことであったか。とにかく、居住スペースの3割以上(ひょっとすると4割以上?)をラックが占め、人間はその隙間に潜伏しているという感じ。
そういう人たちが「リッピングさえすれば、CDを処分できる」と考え、PCオーディオに走る。これは極めて自然な流れと思われる。
しかし、きささんは「そういう場合でも、CDを処分しちゃいかん」とくり返し唱えている。ディスクドライヴ、ケーブル、コンピューター、リッピングソフトなどが進化しているのだから、数年前にリッピングしたデータといまリッピングするデータは、音質的にかなりの差がある。「将来さらに音の良いリッピング法が見つかるに決まっているから、CDは何が何でも手元に置いておけ」というのだ。
これに関しては、筆者も自宅で追試してみた。数年前にリッピングしたデータとその日にリッピングしたデータの聴き比べ。「そんなバカな。デジタルデータは、まったく同じ。音が変わるわけがない」そう主張したい方々の気持ちは十分理解できる。しかし、実際聴いてみると、両者の音は明らかに違う!
これらの事実を元に、きささんはこう言う。
「そりゃ確かに、NASにすべての音源を入れておけば便利だが、それをやろうとすると恐ろしく容量の大きなNASが必要になる。しかし、その時々で聴きたくなるアルバムは、せいぜい100タイトルだろう。先程述べたリッピングの進化もあるから、とりあえず『いま聴きたい100タイトル』だけをリッピングし、リッピング法が進化したら、それまでのデータを消去して、また『そのとき聴きたい100タイトル』をリッピングし直せばよい。そうすれば、NASも小さくてすむ。それは音質的にも有利だ」
お話はまだまだ続いたが、「すべて書き並べると、かえって伝わりにくくなるのでは」と考え、今回はここまでとしておく。
「僕だって、これまではわからないことだらけだった。でも、銀蛇LANケーブルと銀蛇USBケーブルのおかげで、いろいろなことが見えて来た」
きささんはくり返しそう語っていた。これを読んで「そんなバカな」とおっしゃるあなたも、銀蛇LANケーブルを自宅試聴すれば、同じことに気付けるかもしれない。
自宅試聴は同社ウェブサイト内「お試し貸出サービス」、お問合せ等はBBS(掲示板)をご利用いただきたい。
(2015年5月20日更新) 第81回に戻る 第83回に進む
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