Best Sound~オーディオ評論家が選ぶ優秀録音盤~

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評論家による優秀録音盤セレクション。 「Best Sound~オーディオ評論家が選ぶ優秀録音盤~
 

●山之内正・選(クラシック)(2015/4~)プロフィール その他選者














































































































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1 ベルカント・アリア集~イタリアの輝き ジョイス・ディドナート(Ms)リッカルド・ミナージ指揮リヨン国立歌劇場管弦楽団&合唱団 ERATO / WPCS-12848 広い音域を駆使して歌うディドナートの声がピンポイントできれいにフォーカスし、自然な残響が声を柔らかく包み込む。リスニングルームのなかに小さな歌劇場が出現したような臨場感がこの録音の聴きどころだ。
2 ショパン:ポロネーズ集 ラファウブレハッチ(P) D.G. / UCCG-1633 ブレハッチのショパンを聴くならまずはこの1枚。既存の枠に収まらず、しかもポロネーズの本質に直球で迫り、スケールも大きい。伸びやかで柔軟なブレハッチのタッチを克明かつ自然にとらえたピアノ録音だ。
3 バッハ:ゴルトベルク変奏曲/ピアノ四重奏曲 トッパンホール・アンサンブル(日下紗矢子、赤坂智子、石坂団十郎、北村朋幹) DENON / COCQ-85025 弦楽トリオ版ゴルトベルク変奏曲とシューマンのピアノカルテットが好対照をなすアルバム。トッパンホールの木質の残響が生む柔らかい響きが聴きどころで、会場に居合わせたようなリアルな空気感を堪能したい。
4 R.シュトラウス:ドン・キホーテ/チェロ・ソナタ マキシミリアン・ホルヌング(Vc)ベルナルト・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団 SONY / SICC 30174 《ドン・キホーテ》はホール空間の大きさを連想させる広々としたパースペクティブが心地良い。ホルヌングの独奏は艶と潤いがが豊か、惚れ惚れするような美しい音だ。ソナタの深みのある伸びやかな音色にも耳を傾けたい。
5 最後のトレモロ 朴葵姫(G) DENON / COCQ-85023 クラシックギターの録音としてはダイナミクスが大きく、楽器のイメージも大きめ。タイトルにあるトレモロだけでなく、あらゆる奏法でギターの表現の幅の広さを堪能できる。距離は近めだが硬さはなく、音色は柔らかい。
6 マーラー:さすらう若人の歌/亡き子をしのぶ歌/リュッケルトの詩による5つの歌曲 クリスティアン・ゲルハーヘル(Br)ケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団 SONY / SICC 30144 一音一音をていねいに歌い分けるゲルハーヘルの歌唱と精緻で繊細なオーケストラが目指す方向が見事に一致し、3つの作品それぞれの特徴が浮き彫りになる。シルキーで柔らかいサウンドがこの上なく美しい。
7 ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲第8番&第9番 パノハ弦楽四重奏団 Camerata / CMCD-28311 まるで一つの楽器で演奏しているような一体感のあるサウンドは、まさに弦楽四重奏が目指す理想の響き。4本の弦楽器が有機的に溶け合う様子を適切な距離感と柔らかい音色でとらえた優秀録音である。
8 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番&第4番 レイフ・オヴェ・アンスネス(P、指揮)マーラー・チェンバー・オーケストラ SONY / SICC 30152 アンスネスの弾き振りによる協奏曲全曲録音の第2弾。透明感の高いオーケストラのサポートを得て、力まず自然体で音楽を作っている様子が生き生きと浮かび上がる。親密な空気感に注目!
9 ドビュッシー「海」/ラヴェル「ラ・ヴァルス」 北村憲昭指揮ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 NKB Record / NKB-404 楽器の組み合わせ次第で単独では想像できないほど多彩な響きが生まれることを実感できる優秀録音。マスターに含まれる情報の豊かさはCDの再生音からもしっかり伝わるが、できればマルチチャンネルでも聴いてみたい。
10 リゲティ:オルガン作品集 ドミニク・ズステック(Org) WERGO / KKC-5329 膨大な音色を引き出せるケルンの聖ペーター教会のオルガンを駆使し、編曲も加えつつリゲティの作品を自由に解釈した演奏。奏者の即興作品も含め超低音に強大なエネルギーが入っているので音量の上げ過ぎに注意!
11 ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲「大公」 アレクサンドル・メルニコフ(P) harmonia mundi / HMC 902125 ヴァイオリン、チェロ、フォルテピアノそれぞれのなめらかで柔らかい質感がこの録音の聴きどころ。無駄な力を削ぎ落した繊細かつ豊かな音色が素晴らしく、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲のイメージが変わるほど。
12 アルカン:ピアノ作品集 パスカル・アモワイヤル(P) la dolce vita / LDV 11 アモワイヤルの演奏は一音一音に躍動感があふれ、その音に宿る生命力は《大ピアノ・ソナタ》の跳ねまわるような動きに象徴されている。やや長めの残響が創りだす潤いが特に高音域の美しさを際立たせる。
13 フルート四重奏によるモーツァルト『後宮からの逃走』 ヴォルフガング・シュルツ(Fl)ウィーン・フィルハーモニア弦楽三重奏団 Camerata / CMCD-28315 フルートと弦楽三重奏でおなじみの旋律を聴くと、同じ旋律でも声とは別の楽しみが生まれる。言葉から解き放たれ、旋律の美しさに純粋に浸れるからだろう。冴え冴えとした抜けの良いサウンドが聴きどころ。
14 ヴィヴァルディ:四季 クラウディオ・ブリツィ(クラヴィオルガン)パオロ・フランチェスキーニ(Vn)イ・ソリスティ・ペルージャ Camerata / CMCD-28280 弦楽合奏の枠に収まらない工夫と楽しさに満ちた演奏で、鳥の声など自然音を模した特殊奏法のリアルなサウンドも聴きどころ。独奏楽器が鮮明に浮かぶことに加え、通奏低音がスケールの大きな響きを作り出している。
15 レスピーギ:ローマ三部作[祭/噴水/松] アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルハーモニー交響楽団 DENON / COCQ-68 大編成のオーケストラが手加減せずに演奏したときの音圧の大きさと凄まじいまでの迫力を体験したい人には《ローマ三部作》がお薦め。バッティストーニの集中力の高い指揮が東フィルからとんでもない音を引き出している。
16 マーラー:交響曲「大地の歌」 デイヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 RCA / SICC 10210 色彩感豊かなオーケストラを背景に独唱の立体的なイメージが浮かび上がり、両者の対比が見事。ジンマンのマーラーシリーズのこれまでの録音のなかでも克明な描写が際立っている。
17 モーツァルト:ピアノ協奏曲集(第12~14番、室内楽編成版) ゴットリーフ・ヴァリッシュ(Vn)ピアッティ弦楽四重奏団 LINN / CKD 424 モーツァルト自ら編曲した弦楽四重奏版のピアノ協奏曲集。こちらがオリジナルでは?と錯覚しそうなほど自然なバランス、そして流れるような推進力。そうした演奏の魅力をありのままにとらえた優秀録音である。
18 ガードナー/ロルティ(シマノフスキ:交響曲) ルイ・ロルティ(P)エドワード・ガードナー指揮BBC交響楽団 CHANDOS / CHSA 5115 第4番は交響曲というよりピアノ協奏曲に近いが、華やかさや重厚感を強調しすぎることがない。全体のバランスがとても自然で、しかも耳を澄ませば細部も浮かび上がる。Chandosレーベルらしい優れたオーケストラ録音だ。
19 マーラー:交響曲第10番 エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団 EXTON / OVCL-00520 2014年7月にサントリーホールで行われた演奏会のライヴ。シリーズをクック版の第10番で締めくくり、稀に見る名演となったコンサートの克明な記録だ。インバルが引き出した都響のテンションの高い演奏を忠実に再現。
20 スキャンダル アリス=紗良・オット、フランチェスコ・トリスターノ(P) D.G. / UCCG-1655 2台のピアノが「1+1」以上の演奏効果を生む好例。打楽器顔負けの鮮烈なリズムから《春の祭典》の音楽の本質が浮かび上がる。特にフォルテシモの音圧の大きさは圧巻で、ダイナミックレンジは広大。
21 ファッシュ:四重奏&協奏曲集 パメラ・トービー(リコーダー)ピーター・ウィラン(Fg)アンサンブル・マルシュアス LINN / CKD 467 J.S.バッハと同時代を生きたファッシュの作品に英国のピリオドアンサンブルが取り組んだアルバム。リコーダーの名手トービーはもちろんのこと、ウィーランのファゴットの表情豊かな演奏にも注目。鮮度の高い音だ。
22 プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番 庄司紗矢香(Vn)ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団 D.G. / UCCG-1647 倍音をたっぷり含んだ独奏ヴァイオリンと、部屋いっぱいに余韻が広がるスケールの大きなオーケストラが相乗効果を生んでいる。周波数レンジとダイナミックレンジの広い音が聴き手の聴覚と脳を隅々まで刺激する。
23 Duo 4 岡崎慶輔(Vn)伊藤恵(P) Fontec / FOCD 9622 この二人の演奏はヴァイオリンとピアノが会話をしているような親密な雰囲気が感じられ、シリーズの録音すべて推薦に値する。演奏空間の静寂感を際立たせるS/Nの良い録音で、それぞれの楽器の質感の高さに息を呑む。
24 鐘の谷~ラヴェル、武満、メシアン:ピアノ作品集 児玉桃(P) ECM / UCCE-2086 ピアノの音の純度を極限まで高めるとどんな音になるのか。このディスクのサウンドにはその問いへの答えがある。鍵盤の端から端まで澄み切った音色で再現し、僅かな空気の揺らぎも忠実に聴き取ることができる。
25 マーラー:交響曲第4番(室内アンサンブル版) トレヴァー・ピノック指揮ロイヤル・アカデミー・オヴ・ミュージック・ソロイスツ・アンサンブル LINN / CKD 438 聴き慣れた作品から新しい発見を引き出す透明感の高い響きは室内アンサンブル版ならでは。緻密に構成された作品の本質に一歩近づくアプローチとして注目すべき演奏。その特徴を忠実に再現する克明な録音だ。
26 守護天使~無伴奏ヴァイオリン作品集 レイチェル・ポッジャー(Vn) ChannelClassics / RCCSSA 35513 ゆったりと広がる豊かな残響のなか、少し離れた位置からヴァイオリンの澄んだ音が聴こえてくる。無伴奏作品はこのぐらい残響が多い方がハーモニーがきれいに響き、音色にも柔らかさが加わって潤いが生まれる。
27 カルボナーレと巡る音楽旅行 アレッサンドロ・カルボナーレ(Cl)黒田亜樹(P) LiveNotes / WWCC-7772 来日時に白寿ホールと津田ホールで収録されたライヴ録音。カルボナーレの柔軟で明るい音色をそのままとらえていて、息遣いも生々しい。ステージの様子が目に浮かぶような臨場感あふれる録音に注目。
28 ブルッフ/コルンゴルト/ショーソン ヴァイオリン協奏曲集 アラベラ・美歩・シュタインバッハー(Vn)ローレンス・フォスター指揮グルベンキアン管弦楽団 PentaTone / PTC 5186 503 ヴァイオリンの音像が小さめに収まり、ゆったりと広がるオーケストラと自然な対比を見せる。音量のバランスも協奏曲の録音としてはちょうどいい。ソロの力強さとトゥッティの量感が見事に両立している。
29 ヒンデミット:ヴァイオリン協奏曲 フランク・ペーター・ツィンマーマン(Vn) BIS / BIS-2024 協奏曲とソナタでヴァイオリンのイメージの大きさや音色がほとんど変わらず、アルバム全体で統一感のあるサウンドを実現していることに注目したい。立体的なパースペクティブはBISレーベルならでは。
30 マリーとマリオン~13世紀フランスのモテットとシャンソン アノニマス4 harmonia mundi / HMU 807524 女声4人だけの声楽アンサンブルがモテットとシャンソンをアカペラで歌う。澄んだハーモニーは時間の流れを超越し、聴き手を中世に連れ戻すかのようだ。自然に広がる余韻のなか、スピーカーの存在が消える。
31 ショスタコ:交響曲第5番ほか スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団 DENON / COGQ-70 各パートの関係が明瞭に浮かび上がる鮮明なオーケストラ録音。スコアを見ながら聴いているように細部が浮かび上がり、強弱の変化の幅にも余裕がある。シロフォンなど打楽器群の鮮やかな粒立ちも聴きどころ。
32 ブラームス:フルート・ソナタ カール=ハインツ・シュッツ(Fl)赤堀絵里子(P) Camerata / CMCD-99082 フルートの音像が大きく広がらず、しかも自然な余韻を伴って柔らかく美しい音色をたたえている。ピアノの音量は控えめだが、演奏の起伏と表情はとても豊かで、フルートのフレージングと自然につながる。
33 モーツァルト:ピアノ協奏曲集20番、第21番 ペーター・レーゼル(P)ヘルムート・ブラニー指揮ドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団 KING / KIGC 15 シリーズの他の録音と同様、ドレスデンのルカ教会で収録。直接音だけでなく、前後左右や天井に向かって広がる余韻の美しさもじっくり味わいたい。残響は長めだがピアノとオケは粒立ちが鮮明で曖昧さはない。
34 バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番 イザベル・ファウスト(Vn)ダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団 harmonia mundi / HMC 902146 第1番、第2番どちらもファウストが音色やダイナミクスを緻密に構築した密度の濃い演奏。オケ、独奏ヴァイオリンともに弱音の精妙さを忠実に再現する優秀録音である。パーカッションの粒立ちの良さにも注目。
35 ドイツ歌曲集Ⅳ 藤村実穂子(Ms) Fontec / FOCD9658 歌曲を聴くとき、発音を正確に再現する能力が再生装置に求められるが、ドイツ語は特にそれが重要だ。この録音は残響豊かなライヴ録音だが、発音はきわめて明瞭、歌詞を理解して聴くと表情の豊かさに強い感銘を受ける。
36 エルガー:チェロ協奏曲 ジャン=ギアン・ケラス(Vc)イルジー・ビエロフラーヴェク指揮BBC交響楽団 harmonia mundi / HMC 9021486 独奏チェロを大きめの音像で鮮明にとらえ、オーケストラも低音と旋律どちらもくっきりと描き出す鮮明な録音。オーディオ的な聴きどころ満点のサウンドに思わず頬が緩むが、心を奪うのはケラスの歌ごころの深さだ。
37 ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番ほか 若林顕(P) TRITON / OVCT-00098 楽器が100%鳴り切っているだけでなく、ホールまでもが楽器の一部のように共鳴していることを実感させる。ピアノの重さを伝える重厚さと、哀愁を帯びた潤いが見事に両立した聴き応えのあるサウンドだ。
38 ストラヴィンスキー&プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 パトリシア・コパチンスカヤ(Vn)ウラディーミル・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 エイベックス / AVCL-25824 隅々まで刺激に富んだコパチンスカヤの音色をリアルにとらえた克明な録音。収録場所はAIRスタジオのリンドハーストホール。時間をかけて緻密にバランスを追い込んだと思われ、オケとソロのバランスも文句なし!
39 リゲティ:ピアノのためのエチュード トーマス・ヘル(P) WERGO / WER 6763 2 異なる音域をポリテンポで動いていく旋律を精密に弾き分けた見事な演奏。アクセントや休符の位置がずれていくことで生まれる効果をここまではっきり聴き取れる録音は多くない。リゲティのファンなら必聴の1枚だ。
40 ブルックナー:交響曲第7番 イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団 ChannelClassics / CCS SA 33714 複雑な動きで展開する弦と管が正確に噛み合う様子など、フィッシャー&ブダペスト祝祭管の緻密な演奏の特徴を実感できる録音だ。このレーベルの録音は音量を上げてもまったくうるさく感じないのはなぜだろう。
41 サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」 山本真希(Org)飯森範親指揮東京都交響楽団 りゅーとぴあ / RYUT-0001 ホールの音響の良さを伝える質感の高い弦楽器と木管楽器の音色が聴きどころ。オルガンは足鍵盤の音域まで音程とリズムを正確に聴き取ることができる。自然な遠近感にも注目したい。
42 ツィゴイネルワイゼン~ユリア・プレイズ・サラサーテ ユリア・フィッシャー(Vn)ミラナ・チェルニャフスカ(P) Decca / UCCD-1392 独奏ヴァイオリンを芯のある力強い音でとらえた鮮度の高い録音。フィッシャーが作品ごとに音色や表情をきめ細かく弾き分けていることがまっすぐ伝わってくる。ピアノは少しだけ控えめな音量でヴァイオリンを支える。
43 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、ソナタ第32番、月光 ファジル・サイ(P)ジャナンドレア・ノセダ指揮フランクフルト放送交響楽団 エイベックス / AVCL-25835 協奏曲は音が空間に放たれたあと、一気に遠くまで届く感触があり、ピアノとオーケストラどちらも力まずによく響く音を出している。自然に楽器が鳴り切っているので、録音で力強さを演出する必要がないのだ。
44 古典派オーボエ協奏曲集 トーマス・インデアミューレ(Ob)ミラン・トゥルコヴィッチ指揮エストニア国立交響楽団 Camerata / CMCD-28308 独奏楽器とオーケストラの関係が実際の演奏会で体験するバランスに近く、協奏曲の録音でありがちな独奏楽器を強調する不自然さがない。直接音と残響のバランスの良さに加え、適切な距離感を確保していることも好印象。
45 マーラー:交響曲第7番 エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団 EXTON / OVXL-00084 楽器ごとまたはフレーズごとの遠近感がリアルに実感できるのはワンポイント録音の長所の一つ。編成の大きな作品でもその効果は大きく、第4楽章のホルンとヴァイオリンやマンドリンの対比など見事というしかない。
46 カーネギー・リサイタル ダニール・トリフォノフ(P) D.G. / UCCG-1665 演奏の特徴でもあるが、低音域の透明感が高く、力強さをたたえながらも響きはあくまでも澄んでいる。特にスクリャービンの作品でそれが大きな効果を生んでおり、音数の多いフォルテでも響きが混濁することがない。
47 ブルックナー:交響曲第9番 クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団 D.G. / UCCG-1664 2013年8月に行われたアバド最後のコンサートのライヴ録音。密度の高いオーケストラの響きが面で迫ってくる重量感とスケールの大きさが聴きどころで、ダイナミックレンジの大きさも際立っている。高弦群の濃密な音色が美しい。
48 J.S.バッハ:イタリア協奏曲 コルネリア・ヘルマン(P) Camerata / CMCD-25041 弱音でも低音が深く沈み込むのはファツィオーリの楽器の特徴だ。実音よりも1オクターブ低い音が鳴っているような深い響きの存在は演奏から受ける印象を大きく左右する。長めの余韻は特に中音域が柔らかく美しい。
49 ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」 上岡敏之指揮ヴッパータール交響楽団 EXTON / OVCL-00546 低弦やティンパニはもちろんのこと、金管楽器もずっしりとした重量感がある。テンポが遅めなこともあり、重量物がゆったり動く感覚でスケールの大きさを表現。ドイツのオケで聴くブルックナー演奏にふさわしい録音だ。
50 R.シュトラウス&ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 大谷康子(Vn)イタマール・ゴラン(P) SONY / SICC 1771 ベルリンのイエス・キリスト教会の豊かな残響を積極的に生かし、ヴァイオリンとピアノが空気中で溶け合う様子を自然な感触でとらえた録音。ピアノが脇役として後退せず、ヴァイオリンと対等の存在感で表情豊か。
51 ベートーヴェン&モーツァルト:弦楽四重奏曲 キアロスクーロ・カルテット Aparte / AP051 一音一音の気迫が只ならぬ緊張感を生む《セリオーソ》と、澄んだハーモニーが心地良いモーツァルト。両者を見事に弾き分け、音色の幅も広い。その表現のダイナミクスを忠実に再現した録音である。
52 ブルックナー:交響曲第7番 尾高忠明指揮札幌交響楽団 Fontec / FOCD9620 ブルックナー作品の録音は弦と管のバランスが肝心。この札響の録音は弦を実体感のある音でとらえつつ、ここぞというときの金管楽器の量感と音圧感もしっかり確保しているのが好ましい。残響の長さも適切だ。
53 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、第2番 デニス・マツーエフ(P)ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団 MARIINSKY / MER0548 独奏ピアノが力強い音で演奏を牽引し、聴き手を圧倒する。音圧の大きさだけでなく一音一音に勢いがあり、フォルテシモのマッシブな量感が並外れている。オーケストラの音圧も十分に大きいのだが、ピアノがそれを上回る。
54 バッハ リサ・バティアシュヴィリ(Vn)フランソワ・ルルー(Ob)エマニュエル・パユ(Fl)ほか、バイエルン放送交響楽団室内管弦楽団 D.G. / UCCG-1665 ヴァイオリンとオーボエやフルートは音域が近いので響きが明るくなりやすいのだが、この録音はむしろ落ち着いた雰囲気が感じられる。2つの演奏会場を使い分けているが、いずれも残響が豊かで親密な空気感をたたえている。
55 ショパン:14のワルツ ジャン=マルク・ルイサダ(P) RCA / SICC 10213 良い意味で硬質なピアノの音に特徴があり、特に高音部はクリスタルの澄んだ輝きを連想させる。低音域は重くならず歯切れの良い音色を引き出し、ワルツの特徴的なリズムが自然に浮かび上がる。
56 マーラー:交響曲第1番「巨人」 アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルハーモニー交響楽団 DENON / COGQ-69 ステレオ音場が狭いところに押し込められず、伸びやかに広がるオーケストラ録音。特に第1楽章や第4楽章のトゥッティは空間スケールが大きい。バッティストーニの切れの良い指揮ぶりが目に浮かぶ実在感豊かな音だ。
57 オペラ序曲・間奏曲集 飯森範親指揮山形交響楽団 EXTON / OVCL-00542 ステージ上の楽器の並びが自然に浮かび上がる立体感豊かなオーケストラ録音である。弦は手前で表情豊かに歌い、管楽器がそれを包み込むように厚みのあるハーモニーを作る。密度と一体感が聴きどころ。
58 J.S.バッハ:復活オラトリオ ほか ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団 Soli Deo Gloria / SDG 719 ロンドンのカドガンホールの優れた音響を生かした鮮明な録音。独唱、合唱、オーケストラがクリアに分離しながら全体の統一感も確保して、トゥッティの迫力と力強さに圧倒される。オルガンの澄んだ音色も聴きどころだ。
59 ショパン、リスト、ドビュッシー、バッハ -ピアノ・ピース2- 金子三勇士(P) Esoteric / ESSO 10001 低音から高音まで鮮明で力強く、余韻は澄み切っている。こんなピアノの音を聴きたかったという人は多いはずだ。大音量で聴いても飽和せず、楽器の鳴りっぷりの良さは爽快だ。SACDにはピアノ近傍でとらえた音も入っている。
60 カントゥス 加藤訓子(Perc) LINN / CKD 4325 多重録音を駆使しながらアコースティックな音響の美しさを極限まで追求し、ペルトの作品にそなわる純度の高い響きを引き出した力作。絶対的静寂と微妙な低音の揺らぎをどこまで再現できるか、再生装置の真価が問われる。
61 夜の肖像 北村朋幹(P) Fontec / FOCD9644 澄んだ音色と柔らかい残響が両立した質感の高いピアノ録音である。弱音や休符の部分の静寂感が際立っているので、部屋も含めてS/Nの良い環境で聴くほど、この録音の本来の価値を引き出すことができる。
62 ブラームス:ドイツ・レクィエム ワレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団&合唱団 LSO Live / LSO 0748 LSOのライヴ録音は残響が短めの録音が多いが、この作品ではそれがプラスにはたらき、合唱は発音が鮮明、オーケストラも細部まで克明に聴き取れる。独唱はさらにクリアな音像が定位し、合唱との遠近感も深い。
63 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番、第3番 アラベラ・美歩・シュタインバッハー(Vn)ルツェルン音楽祭弦楽合奏団 PentaTone / RPTC 5186479 オケの一体感を確保しつつ、独奏ヴァイオリンの音像が鮮明に定位する。しかも、柔らかい余韻が両者を包み込んでいるので、音色が硬質になることはまったくない。ヴァイオリン協奏曲のベスト録音として推薦。
64 ソロ2~無伴奏ヴァイオリン作品集 ニン・フェン(Vn) ChannelClassics / CCSSA 34413 無伴奏にも関わらず厚みのある柔らかい響きが聴き取れるのは、ヴァイオリンの余韻に豊かな潤いを与える残響の存在だ。重音や分散和音から密度の高いハーモニーを引き出す工夫も録音の重要な役割の一つだ。
65 バッハ:6つのシューブラー・コラール集 吉田恵(Org) EXTON / OVCL-00522 オルガンの響きは楽器単独で決まるわけではなく、教会やホールの空間との組み合わせで音が決まる。フローニンゲンの聖マルティン教会の名オルガンによる演奏をとらえたこの録音を聴くと、空間の響きの重要さを
66 コレッリ:ヴァイオリンと、ヴィオローネまたはチェンバロのためのソナタ Vol.1 エンリコ・オノフリ(Vn)イマジナリウム・アンサンブル AnchorRecords / UZCL-1027 ヴァイオリンの近くにマイクを配置し、音が飛び出してくるようなリアルな音をとらえている。勢いのある演奏にふさわしいダイレクト感のあるサウンドが聴きどころだ。カッシーナ・ジャルディーノで録音。
67 バッハ:ヴァイオリ協奏曲集 ジュリアーノ・カルミニョーラ(Vn) アルヒーフ / UCCA-1100 アルヒーフレーベルらしく細部まで鮮明にとらえている。鮮やかでクリアな独奏ヴァイオリンは鋭さと速さが際立ち、とても歯切れが良い。音像はソロが明快に浮かび、オーケストラは残響との一体感が美しい。
68 マザーランド カティア・ブニアティシヴィリ(P) SONY / SICC 30172 音色の豊かさに加え、余韻の階調をていねいにとらえた優れたピアノ録音である。深く沈み込む低音から繊細で表情豊かな高音まで、幅広い音域のなかで統一感のある美しい響きを堪能することができる。
69 チェロ一會集 宮田大(Vc)ジュリアン・ジェルネ(P) N&F / NF25502 チェロとピアノどちらも細部まで表情が豊かで、弱音からフォルテまで音色の美しさが際立っている。特に消え入るようなピアニシモがたたえる美しさは格別で、繊細な表情を最後の一瞬まで聴き取ることができる。
70 シューベルト:ピアノ・ソナタD894「幻想」他 高橋アキ(P) Camerata / CMCD-28316 高橋アキのシューベルトは繊細な音色表現や階調豊かなダイナミクスなど、演奏と録音の完成度が非常に高く、すべてのアルバムが推薦に値する。深く柔らかい低音はベーゼンドルファーならではの響きだ。
71 プロコフィエフ:オラトリオ「イワン雷帝」 トゥガン・ソヒエフ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団 SONY / SICC 30189 オラトリオとして再編され、ベルリンのフィルハーモニーで上演された公演のライヴ録音。大音響でも飽和せず、合唱の響きがくもらないのは、このホールの開放的な響きの特徴だ。壮大で起伏に富んだ演奏は聴き応えがある。
72 R.シュトラウス:4つの最後の歌 他 アンナ・ネトレプコ(S)バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン D.G. / UCCG-1690 ベルリンフィルハーモニーでのライヴ録音。ホールの空気がまるごと一気に動く様子がリアルで、うねるような低音の動きが目に見えるようだ。《最後の4つの歌》はネトレプコの濃密な独唱が聴きどころ。
73 生と愛を歌う聖歌集 ブアイアン・A・シュミット指揮サウスダコタ合唱団 PentaTone / PTC 5186530 ペルトのほか、バルト三国やスカンディナヴィアの合唱作品を集めた聖歌集。大聖堂の長い残響が極上の柔らかい響きを生み、アカペラの美しさを際立たせる。現代作品のなかからハーモニーの美しさで選んだ選曲も秀逸。
74 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Vn、指揮)フライブルク・バロック・オーケストラ 他 harmonia mundi / HMC 902145 ソロとオーケストラが一体となり、密度の高い演奏を繰り広げる。演奏者の間近で聴くような臨場感は実演さながらで、呼吸の揃った演奏ならではの勢いがダイレクトに伝わる。残響は長めだが響きは明るい。
75 コープランド:交響曲第3番 他 カルロス・カルマー指揮オレゴン交響楽団 PentaTone / PTC 5186481 「アメリカの魂」と題し、ピストン、アンタイル、コープランドの作品を集めたアルバム。細部と全体のバランスが見事で、スケールの大きさも驚異的。理想的なオーケストラ録音として高く評価できる。
76 ドビュッシー&デュティユー 藤井一興(P) Fontec / FOCD9616 空気の揺らぎを最後までとらえた精妙な録音だ。高音から低音まで澄んだ響きをたたえた透明感の高いピアノは聴き手から近すぎず、楽器のイメージもちょうどいい大きさだ。和音の変化を正確に聴き取れる。
77 R.シュトラウス:交響詩シリーズ第3集 「ツァラトゥストラ」「イタリアより」 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団 hanssler / CD 93.320 Haenslerは録音の水準が高いレーベルで、このアルバムも例外ではない。自然で広大なパースペクティブやダイナミックレンジの余裕はCDとしてはトップ水準だ。フライブルクのコンツェルトハウスの空気感も生々しい。
78 バッハ:イギリス組曲集~第3、1、5番 ピョートル・アンデルシェフスキ(P) WERNER CLASSICS / WPCS-12882 ワルシャワのコンサートホールの残響がピアノから柔らかい響きを引き出していて、フレージングのなめらかさが際立つ。細部は意外なほど粒立ちが鮮明で、各声部の関係をはっきり聴き取ることができる。
79 ベートーヴェン:交響曲第5番、シューベルト:交響曲第7番 佐渡裕指揮ベルリン・ドイツ交響楽団 エイベックス / AVCL-25862 淀みなく演奏が流れる背景に残響の質の高さもはたらいている。自然に減衰する残響が演奏の流れを妨げないのだ。力まずとも楽器が自然に鳴っている感覚が伝わる。ベルリンのイエス・キリスト教会でのセッション録音。
80 ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲 他 アリサ・ワイラースタイン(Vc)ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 Decca / UCCD-1393 響きの良いドヴォルザークホールでの録音。ステージとの距離感が臨場感を生み、特に独奏チェロのきめ細やかな表情が伝わる。空間の大きさが前後方向だけでなく高さ方向にも感じられることが興味深い。
81 チャイコフスキー:くるみ割り人形 ネーメ・ヤルヴィ指揮ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 CHANDOS / CHSA 5144 どの楽器も一音一音の質感が柔らかく上質で、それらの音が溶け合った響きに木質の感触を伝える余韻が加わり、なめらかで繊細なサウンドを作り出している。演奏しているホールの密度の高い空気感を味わいたい。
82 バオレ・ウィーン木管五重奏団 プレイズ ヒンデミット、ハース、ピルス、リゲティ バオレ・ウィーン木管五重奏団 Camerata / CMCD-28306 明快な音で細部を克明に描写した録音で、これらの特徴はスタジオ収録の良さと考えていいだろう。楽器に近めのマイク配置だが、それぞれの楽器の音にきれいに残響が溶け込んでいるので、響きがバラバラになる弊害はない。
83 ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」 上岡敏之指揮ヴッパータール交響楽団 DENON / COGQ-65 弦の内声の動きを細部まで克明に聴き取れるほど情報量が豊富だが、オーケストラ全体としては重心が低く、統一感がある。残響はかなり長いが、合唱も含めて響きがくもらないことに注目したい。
84 ショパン&シューマン:ピアノ協奏曲集~6人のオルガン奏者による伴奏版 岡田博美(P)クラウディオ・ブリツィ(Org、指揮、編曲)他 Camerata / CMCD-28293 1台のオルガンを6人で演奏したオーケストラパートとエラール製ピアノの独奏を組み合わせた異色の演奏。オルガンとピアノの組み合わせが不思議な空間を作り出し、時間の流れが止まったような雰囲気が味わえる。
85 メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」 他 マリア・ジョアン・ピリス(P)ガーディナー指揮ロンドン交響楽団 LSO Live / LSO0765 弦楽器のしなやかな音色が美しい。聴き手との距離感、ステージの上での遠近感の両方を自然に再現するため、ホールで実際に聴いている感覚に近い。ピアノはイメージが広がりすぎず、オーケストラとの関係が自然だ。
86 エリーゼのために~マエストロからの贈り物 チョン・ミョンフン(P) ECM / UCCE-7534 ECMレーベルのピアノ録音は余韻と直接音のバランスが絶妙で、その澄んだ音色には独自の魅力がある。おなじみの作品が並んだプログラムだが表情の起伏が豊かで聴き手を飽きさせない。フェニーチェ歌劇場で収録。
87 ショパン:ピアノ協奏曲第2番&小品集 江崎昌子(P)飯森範親指揮山形交響楽団 TRITON / OVCT-00103 オーケストラの分厚い響きは豊かな残響の賜物。直接音と余韻が渾然一体となった密度の高い空気のなか、クリアで鮮度の高いピアノが自在に動きまわり、両者のコントラストが美しい。小品集の粒立ちの美しさにも注目。
88 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番&チェロ・ソナタ 河村尚子(P)ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 RCA / SICC 10214 プラハのドヴォルザークホールは世界最高峰の美しい音響を誇る。その空間を満たすピアノとオーケストラの充実した響きがこのディスク最大の聴きどころだ。特にピアノの低音や低弦の深く沈み込む音を堪能したい。
89 シベリウス:交響曲第1番&第4番 オスモ・ヴァンスカ指揮ミネソタ管弦楽団 BIS / BIS-1996 ミネアポリスのオーケストラホールから木質の柔らかい響きを引き出した美しい音色がこの録音最大の聴きどころ。しなやかで潤いのある弦楽器の音色がシベリウスの作品にふさわしく、演奏の完成度の高さも格別。
90 虹の体……東京シンフォニエッタ プレイズ 西村朗 板倉康明指揮東京シンフォニエッタ Camerata / CMCD-28282 それぞれの作品の特徴を鮮明に描き分けた演奏。一音一音を鮮度の高い音色で再現し、音色のパレットの大きさに圧倒される。息を呑む弱音や余韻のふるまいをどこまで再現できるか、再生装置の真価が問われる。
91 フランス管弦楽作品集 山田和樹指揮スイス・ロマンド管弦楽団 PentaTone / PTC 5186 358 低音から中低音ににかけて空気をたっぷり含んでいて、特に弦楽器と木管楽器の音色からヴィクトリアホールの美しいプレゼンスを聴き取ることができる。旋律やリズムの重要な要素をしっかり浮かび上がる優秀録音。
92 高橋アキ プレイズ エリック・サティ 1 高橋アキ(P) Camerata / CMCD-28305 サティ作品の本質を伝える見事な演奏で、研ぎ澄まされたピアノの音が聴きどころ。クリアなだけでなく音色の濃淡が豊かで余韻の密度も高い。ファツィオーリならではの澄み切った音がその上質な余韻のなかに浸透する。
93 シューマン:交響曲第4番 他 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン RCA / SICC 10208 シューマンの音楽を豊かな起伏で力強く表現した斬新な演奏で、そのダイナミクスの豊かさを存分に味わえる録音のクオリティも特筆に値する。第4番に加え、名手を4人揃えたコンツェルトシュトゥックも聴き応えがある。
94 モーツァルト:クラリネット協奏曲 他 マルティン・フレスト(Cl、指揮)ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団 BIS / BIS-1893 フレストの自在な表情と伸びやかな音色を漏らさず伝えながら、他の楽器と自然に溶け合うハーモニーの美しさが格別だ。後半の室内楽は奏者の動きと息遣いが目に見えるほどリアルだが響きはあくまでも柔らかい。
95 指環物語 渡邊一正指揮 東京佼成ウインドオーケストラ DENON / COCQ-85091 ウィンドオーケストラならではの厚みとスケール感を堪能できる優秀録音。木管楽器群の音色の柔らかさ、金管楽器とパーカッションが空気を揺るがす迫力など、オーディオ的な聴きどころは枚挙にいとまがない。
96 ヘンデル・アリア集~影のヒーローたち ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト、指揮)フィリップ・ジャルスキー(C-T)オルフェオ55 ERATO / WPCS-12878 シュトゥッツマンの力強い独唱と切れ味鋭いオーケストラが相乗効果を生み、音がスピーカーから前に飛び出すような勢いがある。カウンターテナーのジャルスキーと歌うデュオの美しいハーモニーも聴きどころだ。
97 R.シュトラウス:ヴァイオリン協奏曲 他 トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー(Vn)ジークハルト指揮イスラエル室内管弦楽団 gramola / 98992 独奏とオーケストラのバランスが自然で、音像の大きさと互いの距離感が絶妙だ。独奏ヴァイオリンは音色に潤いがあり、乾いたタッチにならない。オーケストラも繊細でR.シュトラウスならではの精妙な音色がよく伝わる。
98 愛のあいさつ&夢のあとに~ヴァイオリン・アンコール 神尾真由子(Vn)ミロスラフ・クルティシェフ(P) RCA / SICC 1714~5 シンプルな旋律から濃密な「歌」を引き出し、難易度の高いパッセージを苦もなく弾きこなして聴き手を圧倒する。ヴァイオリンという楽器の奥の深さと限界のない表現力を思い知らされるアルバムだ。鮮明な粒立ちに注目。
99 J.S.バッハ:カンタータ全曲シリーズ 51 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン BIS / BIS-SACD-1961 BCJのカンタータ全集はついに全曲録音の偉業を成し遂げた。同シリーズの録音はいずれも遠近感豊かな立体的音場が聴きどころ。この第51集は作品ごとの編成が大きく異なり、華やかさと荘厳な響きの対照の妙が興味深い。
100 ニールセン:交響曲第4、5番 サカリ・オラモ指揮ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団 BIS / BIS-2028 ステージ上に並ぶ楽器の配置を立体的に描写した自然なオーケストラ録音。4番の第4部では左右に配置した2組のティンパニが演奏を牽引し、迫力とスケール感が聴き手を圧倒する。弦楽器の柔らかい音色も聴きどころ。

山之内正

山之内正(やまのうちただし)

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、1990年以降はフリーランスで活動。オーディオ、デジタルAV、ホームシアター分野の専門誌やウェブサイトを中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。近著:「目指せ!耳の達人」(共著、音楽之友社)、「ネットオーディオ入門」(講談社ブルーバックス)など。

  • 『レコード芸術』優秀録音盤レビュー