毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は6月18日放送の『地域人』のコーナーから、廃棄品に新たな価値を与えている青果問屋の取り組みを紹介します。
長野のりんご問屋からスタートし、現在は東京・立川に本社を構える創業67年の株式会社根津(ねつ)。立川エリアの飲食店への青果卸売がメイン事業です。2016年には新事業として、飲食店「Adam’s awesome PIE(アダムス・オーサム・パイ)」をオープン。青果問屋だからこそ手に入る新鮮なりんごを使ったアップルパイで、立川市を盛り上げようと日々奮闘中です。
また、地方の優れた商品を評価する「にっぽんの宝物グランプリ2022-2023」にて、規格外のサツマイモを利用した「熟成”純生”スイートポテト」が、新体験スイーツ部門審査員特別賞を受賞。廃棄品に新たな価値を与えることで、生産者からお客様まで全ての人々を笑顔にする商品を提供しています。今回は、Adam’s awesome PIEの統括マネージャー・根津祐太郎(ねつ・ゆうたろう)さんにお話を伺いました。
――立川市出身の根津さんは、老舗青果卸店の長男として生まれました。大学卒業後、一般企業へ就職し、ケーキ屋向けのレジシステムの営業やバナナやキウイなどのマーケティング業務を経て、「株式会社根津(ねつ)」へ入社。根津さん、こちらの会社はもともと長野のりんご問屋さんだったそうですね。なぜ東京に進出したのでしょうか。
先代が会社を立ち上げた当時、長野の信州りんごは東京であまり流通していませんでした。「商業の中心である東京で、とびきりおいしい信州りんごを流通させたい」という思いから、 先代が販売したことがきっかけです。
――それで立川に拠点を作ることになったんですね。祐太郎さんは、何代目なのでしょう。
3代目になります。
――りんごを売ることから発展して、アップルパイをメインにした飲食店「Adam's awesome PIE」をオープンしました。立川でも人気沸騰中です。お店を始めようと思ったきっかけは?
最初は長野のりんごを東京で直接お客様に届けていました。けれど、その後に青果の卸しになったことで、野菜や果物の魅力を間接的に伝える形になったんです。「もっとダイレクトに良さを伝えたい」と考えた結果、「飲食店をやろう」ということになり、勉強してスタートしたのがきっかけですね。
――お店をオープンするために、料理学校にも行かれたんですよね。
働きながら1年間、「レコールバンタン」という調理専門の学校に通って、技術や経営のスキルを身につけました。
――今や、その学校で先生として教えていると聞きました。すごいなぁ!
――「アップルパイで町を盛り上げていく」というのは、歴史的な背景もあるそうですね。
そうなんです。現在お店を構えている場所は、米軍基地があってアメリカの住所でした。
――現在、米軍立川基地の跡地に昭和記念公園ができています。そのエリアですね。
はい。その住所は当時カリフォルニア州だったことから、カリフォルニアの地域性を調べたところ、りんごで町おこしをしていた文献を見つけました。栽培すると同時にアップルパイに加工して販売し、とても人気のある町になっていたんです。
また、カリフォルニアは、姉妹都市として長野県と立川市と繋がりがあります。そこで、りんご問屋の歴史を持つ弊社の歴史と掛け合わせて、「アップルパイで立川を盛り上げていきたい」と思って始めました。
――なるほど。いいところに目をつけましたね。
――(規格に合わないことで流通させられず)廃棄処分になってしまうサツマイモを使い、スイートポテトを作ったお話も興味深いです。「熟成”純生”スイートポテト」は、「にっぽんの宝物グランプリ2022-2023」で受賞したそうですね。どういった経緯で生まれたのでしょう?
廃棄されてしまうサツマイモは、つぼ焼き芋にすることによって、甘くねっとりとした食感になります。ただ、 これだけだと世にありふれているので、「勉強したスイーツの知識を生かして、滑らかで美味しい純生スイートポテトに変えてみよう」と思ったんです。幅広い年代の方に楽しんでいただけたらと開発したのがきっかけです。
――今は空前の焼き芋ブームですね。種類は紅はるかを使っていると聞きました。
大きすぎたり、小さすぎたりする紅はるかを使っています。本来は農家さんが捨ててしまうものを活用しています。
――農家さんも助かりますよね。自分の作ったものを捨てるのは、心苦しいですもん。
そうですね。新たなお金を得たり、設備投資に回したりなど、農家さんにも貢献できているようです。現在は小田原市の加工業者さんから仕入れていて、茨城県で栽培されているサツマイモを使わせてもらっています。
捨てるとそれだけでお金がかかりますし、CO2排出効果が上がり、温暖化に繋がってしまいます。なので、新たな取り組みとしてスコアを付けることにしたところ、普通にスイートポテトを作るより、二酸化炭素を5パーセント削減できていることが証明できました。今後もこの取り組みを進めていきたいと思っています。
――焼き芋ブームの中でも、あまり知られていない部分だと思います。そういうところに光を当てているのは素晴らしいです。反響はいかがですか?
すごくいいです! メディアに取り上げられる機会が増えたり、イベントの催事に呼んでいただいたりしています。何よりも「おいしい!」って声をいただけるのが、すごく嬉しいですね。
――茨城の農家さん、小田原の業者さん、そして根津さんの会社の3社を結びつけたものって?
「日本の宝物グランプリ」での取り組みからでした。何気ない会話の中で、小田原の業者さんが、「つぼ焼き芋を始めたいのだけど、なにかスイーツを作ってくれない?」という話が出たんです。「それならコンテストに出品をして、世の中に認めていただけるような商品を開発してみよう。それで受賞できたらいいよね」っていうところから始まりました。
――うわぁ、すごい。有言実行ですね。最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
これらの取り組みを広げるとともに、新たな事業としてフランチャイズや商品の卸しなどもしています。もしよろしければ、ホームページで検索していただけると幸いです。
――根津さん、今日はどうもありがとうございました。またお店に伺います!
***
(番組パーソナリティ 横田)
町や村をどうやって盛り上げるかっていうのは、「どうしたらいいかなぁ」って、けっこう眉間にしわを寄せて考えちゃうことってあるじゃないですか。けれど、こうやって笑いながら、半分冗談みたいな感じで楽しみながらやっているのってすごくいいなと思います。
(番組パーソナリティ 川久保)
「おいしい」だけじゃなくて、裏側のストーリーが素敵ですよね。お店を構え、アップルパイを作ろうと思った経緯や、スイートポテトパイのお話……。素敵すぎて感激しちゃいました。
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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部