廃校寸前の高校が全国トップ倍率に!「地域みらい留学」で変わる人と地域

2023.8.2 | Author: 池田アユリ
廃校寸前の高校が全国トップ倍率に!「地域みらい留学」で変わる人と地域

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は7月2日放送の『深堀り』のコーナーから、学生が都道府県の枠を超えて進学できる取り組みを紹介します。

 

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームが提供する「地域みらい留学」とは、居住する都道府県の枠を越えて、生徒が全国各地の魅力ある公立高校に進学できる仕組みです。高校進学の選択肢を広げ、子どもたちにさまざまな学びの環境を提供し、それと同時に過疎地域の少子高齢化、人口減少問題の解決を目的としています。

 

2017年より島根県からスタートしたこの取り組みは、2023年4月末時点で全国33道県へと広がり、100校以上が留学先として登録。北海道から沖縄まで、その土地に密接した多種多様な教育カリキュラムを備えて、未来ある生徒たちを受け入れています。

 

今回は、一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォ―ム 専務理事・尾田洋平(おだ・ようへい)さんにお話を伺いました。

きっかけは、島根県にある廃校寸前の学校だった――

――尾田さんは島根県浜田市出身です。 大阪大学の工学研究科を卒業し、2022年に社会人大学院大学の「至善館」で学んだ経験も。2011年からリクルートに勤め、観光情報「じゃらん」の中国エリアの責任者も務めていたそうです。2018年の7月から、地域教育魅力化プラットフォームに入職。都会からの留学生を受け入れる地域未来留学の事業責任者になっています。尾田さん、「地域みらい留学」が始まった経緯をお聞かせください。

2010年ぐらいの時期に遡るんですが、我々の取り組みの発祥は島根県の隠岐島の海士町という所から始まりました。松江からフェリーで2時間半ぐらい北に行った場所で、後鳥羽上皇や後醍醐天皇が島流しになった名所でもあります。

海士町にある隠岐島前(おきどうぜん)高校という廃校寸前の学校があり、「廃校になったら町の存続が危ういぞ」との声が上がったのです。そこで、島丸ごと学校にしたカリキュラムに変えたところ、都会から「生きる力をつけたい」と応募が殺到しました。現在は全国でトップの倍率を誇る学校に生まれ変わりました。

その後、代表理事の岩本悠が「これを全国展開しよう」と立ち上げた団体が、 地域・教育魅力化プラットフォ―ムです。海士町の「島留学」の取り組みを全国に広げたことが「地域みらい留学」のきっかけになっています。

――島丸ごと学校っていいですね。島民全員が先生なわけですもんね。いろいろな地域に広がっているそうですが、どのような学校があるのですか?

最近行った学校でおもしろいなと思ったのが、愛媛県大洲市にある長浜高校です。「水族館部」という活動をしているんですね。

――水族館部!?

全校生徒140人ほどの小さな高校なのですが、うち70人が水族館部に入っています。全国から魚好き、生き物好きの学生たちが集まるので、ある意味みんな「さかなクン」みたいな感じです(笑)

入った理由を「小学校の時から入るって決めていました」と言う学生もいました。魚の世話をしている様子をキラキラした表情で話してくれるんですよ。学校の中に水族館があって、1人1台水槽を持っています。海に行って、自分で魚を捕ってきて、自分の水槽に入れて説明書きを添えます。月に1回ほど水槽の展示会を行い、地域の人に向けてもてなしをする活動をしています。

――全国の魚好きはかなり注目しちゃいますね。

 

「自分の価値を、自分で認める」

――その他に、留学を経験した生徒さんからどんな声を聞きますか?

偏差値のような、1つの物差しで測られることに対して違和感を持つ子が多い印象です。ある意味、「自分の価値を、自分で認める」という考えを持っているように思います。

また、地域にある資源に興味を持ち、いろんなチャレンジをすることで、「1歩踏み出せるようになった」という声が多く寄せられています。

――留学ということは、寮生活になるんですか?

いろんなパターンがあるのですが、100校のうち7割から8割ぐらいは寮生活です。下宿やルームシェアなどもありますね。

――心配される保護者さんもいるのでは。

もちろん心配される方もいらっしゃいますが、外で新しい場所を見つけてイキイキとしている子どもたちの姿を見て、応援してくれる保護者さんも多いです。

――高校3年間が終わって卒業すると、その地域に残る生徒さんもいるのでしょうか。

大半の学生は、大学に入るために留学先を離れます。ただ、地方創生や地域活性化の勉強をする学校に進学しようと考える子も多く、「学んでまた帰ってきたい」という思いを持ってくれています。

――なんていい話……。

 

1年間だけ留学する「地域みらい留学365」

――高校3年間を過ごす他に、高校2年生の1年間だけの留学パターンもあると聞きました。

そうなんです。2020年から、都会の高校に在籍しながら1年間だけ地域の特色ある高校に留学するという、「地域みらい留学365」を始めました。20校ほどが受け入れている、新たな留学スタイルになります。年間で言うと約40人が各地に行っています。北海道から九州まで留学先がありますね。

――3年生は受験があるからだと思いますが、1年生ではなく2年生で留学するのはどんな理由がありますか?

これは単純な理由なのですが、学校に入学してからすぐにその学校を離れるというのは、なかなか難しそうだなと。

――そりゃそうですよね。2年生の間だけ移住して留学して、「戻ってきたときに何を感じるかっ?」というのも聞いてみたいところですね。ちなみに、人気のエリアなどあるんでしょうか。

全国満遍なく人気ですが、説明会によく集まるところでいうと、島の学校が人気ですね。北海道の礼文島(れぶんとう)や鹿児島県の奄美大島や屋久島、喜界島。沖縄の久米島も留学先に選ばれることが多いです。

――暮らすとなるとなかなか大変なところもあるかもしれませんね。奄美大島なら夏は台風の影響が強いですし、 北海道なら冬に厳しい寒さがあります。そこも含めてその地域で暮らすことを若いうちから経験するのは大きな財産ですね。 それでは最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。

地域みらい留学を始めて約6年が経ちました。日本全国におもしろい高校がたくさんあって、いろんな方たちにこの取り組みを知っていただきたいなと思っています。中学生のお子さんを持つ親御さん、本人がいらっしゃいましたら、ぜひホームページで調べていただけたら嬉しいです。

――尾田さん、ワクワクするお話をありがとうございました!!

***

(番組パーソナリティ 横田)
いろんなことが調べられる時代になったからこそ、自分で経験することの大切さを感じました。やっぱり、行ってみてわかることってありますよね。

(番組パーソナリティ 川久保)
地域みらい留学のサイトを見ると、さまざまなオンラインイベントや説明会が予定されていました。OBやOGの方たちから、どんな体験をして、どのように学んだのかを聞ける機会もあるそうです。近日のオンライン合同学校説明会は7月22日、23日に行われる予定とのこと。ぜひ、チェックしてみてください!

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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部

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