毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は7月9日放送の『深堀り』のコーナーから、岩手県で廃校になった学校でお酒造りを行う取り組みを紹介します。
酒のまち・岩手県紫波町(しわちょう)で、廃校となった旧・水分(みずわけ)小学校を活用して始動した新プロジェクト「はじまりの学校」。町をひとつの醸造場と捉え、醸造家や生産者、飲み手など、あらゆる人が交流して学び合い、ともにつくる喜びを分かち合うコミュニティを目指しています。
地元農家がこのお酒のためだけに酒米づくりに取り組んだ日本酒「はじまりのお酒」、リンゴ果汁をベースにしたオール紫波産の原料で醸す「はじまりのハードサイダー」の2種は、発売を開始して2日で完売という人気!6月28日より再販がスタートしています。
今回は、株式会社酒と学校の代表取締役・黒沢惟人(くろさわ・ゆうと)さんにお話しを伺いました。
――黒沢さんは岩手県奥州市出身です。県内の大学を卒業後、都内のIT会社に勤務されましたが、25歳でUターン。東日本大震災の復興活動に関わる中、同世代のUターン者とNPO法人wizを設立し理事COOに就任。自治体などと連携してUIターンを促進し、関係人口創出事業を行っています。また、2022年に株式会社酒と学校を設立。最近のことなのですね。
そうですね。岩手に戻って来て、お酒の事業者さんとお仕事をする中で、蔵の見学をさせてもらい、実際に飲むようになって、「日本酒って美味しいじゃん!」と思ったのがきっかけでした。
――さきほど、黒沢さんたちが手掛ける日本酒を少しだけ飲みました。サラサラとした口当たりで、どんどん飲めてしまいそうでした(笑)。さまざまなプロジェクトを行う紫波町は、「酒のまち」と呼ばれていると聞きました。
盛岡市から南に20キロほどのところにあるベッドタウンです。もともと日本酒の造り手集団である「南部杜氏(なんぶとうじ)」の発祥の地と言われています。夏は米の栽培が盛んですが、冬の岩手は雪が降って農業ができないので、出稼ぎのために関西や関東でお酒造りを行っていたそうです。昔、近江商人である村井権兵衛さんが訪れ、大阪の池田流の杜氏を招き入れて酒づくりを開始したというのが酒造りの始まりだったそうです。
紫波町は人口3万3000人の小さな町ですが、日本酒蔵が4つあり、岩手県内でブドウの生産量が1番ということでワイナリーも1つあります。また、リンゴの産地でもあることからシードルを造るサイダリーが2つあるんです。
――まさしく「酒のまち」ですね。
――プロジェクトである「はじまりの学校」の経緯を教えてください。
この10数年間のうちに、地方創生で紫波町が取り上げられることが増えたんです。それを代表するのが「オガールプロジェクト」で、町の中心部の空いた土地を複合施設として民間事業者と行政が連携し、なるべく補助金に頼らずに運営してきました。
当時、NPO法人wizで活動しており、役場から「町内の酒事業者と何か事業をできないか?」というお話をいただきました。そこで、長期休暇中の大学生に地元の事業者のところへインターンシップに入ってもらい、商品のPRやイベントを実施する「SAKE TOWN SHIWA プロジェクト」を3年ほど実施しました。
ただ、オガールプロジェクトなどによって町の中心部は賑わい、人口も増えているのですが、農村部はどんどん人口が減っています。ある日、農村部内にある7つの小学校が廃校になることが決まり、「廃校の利活用をしていこう」という話がでました。そこで「酒のまち」をより推進していこうと「はじまりの学校」プロジェクトを始めたんです。
――今後、学校でどんな活動をされるご予定ですか。
現在、お酒造りは町内にある醸造事業者に委託製造を願いしていますが、今月から廃校になった旧水分小学校を一部借り受けることになりました。今年度中に学校をリノベーションしてお酒の店舗を構えたいと思っています。来年度以降は学校内に醸造所を設け、全国から醸造家を招きながらお酒造りを開始したいと思っています。
その他にも、飲食できる交流スペースにしたり、学校でお酒造り体験をしたり、宿泊できたりなどの環境を整えられたらと考えています。
――販売中のお酒について教えてください。
現在は日本酒とハードサイダーの2種類を販売しています。 第1弾の「はじまりのお酒」は、地元の米農家さんが「酒米を造りたい」という声があり、紫波酒造店という蔵に委託をし、水分の原料を使ってお酒を造りました。味は、飲み飽きしない、ダラダラ飲んでもおいしいお酒です(笑)。甘くてスッキリした味わいにしています。
ハードサイダーのベースはリンゴです。地元の酒米を米麹にして甘酒にしたものとワイナリーの赤ワイン粕、そしてリンゴ果汁をミックスして発酵させました。紫波町の農産物を詰め込んだ醸造酒を造るという、全国的にもあまりない取り組みです。味わいはスッキリした、ロゼワインのような、乾杯酒として飲んでいただければと思っています。
――みんなでお酒を造るって、ワクワクする感じですね。最後に、リスナーの皆さんにメッセージお願いします。
当商品はECサイト「はじまりの酒店」で検索していただければ購入いただけます。日本酒をこれから知ろうという方も楽しめるお酒ができたと思います。また、学校のプロジェクトの準備も着々と進めています。「はじまりの学校」のInstagramで発信していますので、ぜひご覧いただけたらうれしいです。
――黒沢さん、ありがとうございました!
***
(番組パーソナリティ 横田)
人口3万人の小さい町であるにもかかわらず、その人口の中での分野が幅広い企画って、あんまりない気がします。みなさんが協力してくださるのは、地元愛や人徳、人脈があるからこそでしょうね。
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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部