「取れすぎて困ったマイワシ」をアンチョビに! 函館「Local Revolution」が取り組む“課題の地域名産化”|北海道函館市

2023.3.30 | Author: 池田アユリ
「取れすぎて困ったマイワシ」をアンチョビに! 函館「Local Revolution」が取り組む“課題の地域名産化”|北海道函館市

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は3月5日放送の『地域人』のコーナーから、函館で余った食材を商品化するなど、新しい産業と食文化を創出する団体の取り組みをご紹介します。

北海道の道南で活動する「Local Revolution」は、商業施設「シエスタハコダテ」の統括責任者・岡本啓吾さんを中心に、レストランシェフを務める仲間らと共に結成された任意団体です。函館近海で水揚げが増えすぎてしまったマイワシを利用した「ハコダテアンチョビ」の開発や、事情があって行き場を失ってしまった野菜を販売する「困った時はお互いさマルシェ」の開催などを手掛けています。

次の世代の為に、地域の新しい産業と食文化を創ることを目指し、“地域革命”を起こすべく日々奮闘を続けているLocal Revolution。今回は、代表の岡本啓吾(おかもと・けいご)さんにお話しを伺いました。

取れすぎてしまうマイワシに付加価値を

――岡本さんは現在37歳、函館出身です。大学進学とともに上京し、卒業後は横浜の広告代理店に勤め、25歳で函館へ戻りました。地元の町づくりの会社に勤務し、商業施設「シエスタハコダテ」の統括責任者に就任。施設内にある公共施設「函館コミュニティプラザ Gスクエア」のセンター長も兼任されています。岡本さん、函館に戻ろうと思ったきっかけは、どういったことでしたか?

18歳の頃、東京に憧れて出てきたんですが、都会に住んだからこそ地元の良さや悪さに気づいて、「いずれ函館に帰って何かしたいな」と思うようになりました。

――Local Revolutionは、どういった経緯で作られたのでしょう。

北海道沖などで取れすぎてしまうマイワシに付加価値を付けて、地域の資源にするために「ハコダテアンチョビ」を作ろうと思ったことが、団体を立ち上げるきっかけでした。

――どのようにメンバーを集めたのですか?

商業施設の「シエスタハコダテ」を介して、水産加工の会社の方々やシェフの方に集まっていただきました。函館の漁師さんと一緒にマルシェを行うなどのイベントも行いましたね。1次から3次産業の皆さんと「みんなでなんとかしていかなきゃいけない」という思いで活動するようになりました。

――マイワシが大量に取れすぎてしまうのは、海水温度の上昇が関係しているのでしょうか?

一番の理由はそうだと思います。もともと函館はイカの町と呼ばれ、「イカ祭り」「イカ踊り」があるほど盛んですが、 近年、定置網をかけている漁師さんから、「イカ以外の魚がたくさん取れてしまう」という話を聞きます。その最たる魚がマイワシでした。

――アンチョビに加工することで、マイワシに付加価値を付けるというのは?

この地域ではマイワシの食文化があまりなく、市場に出荷されても地元の人はほとんど食べません。釧路沖ではマイワシが年間14万トンも取れるのに、食用になるのは10パーセント未満でほとんどが動物のエサや肥料にされてしまいます。

――それは知りませんでした! 確かに、食文化がないとレシピも調べませんね。

2次産業の加工業者がイワシの缶詰製造に投資するにも、マイワシは傷みやすく、手間がかかってしまうため、扱う上で難しさを抱えています。でもアンチョビならば、さまざまな問題を解決する一手になるのではと思ったんです。

 

地域に雇用を生むための仕組みづくり

――(オンライン画面上で)岡本さんの後ろにたくさん積んである瓶が「ハコダテアンチョビ」ですか。

そうです。去年の11月に商品化しました。たくさんの方々の思いが詰まったアンチョビです。普通はカタクチイワシという小さめのものを使うのですが、マイワシは油がのっていて、魚体も大きいのが特徴です。マイワシを使ったアンチョビは、おそらく世界初だと思います。

――食べたい……!

旨味とコクがもう抜群にあります。また、オリーブオイルではなく米油に浸しているので、和食にも合わせやすいんですよ。

――こちらはどこで買えますか。

「福田海産」という水産加工会社のホームページから通販で販売しています。ありがたいことに多くの注文をいただき、製造がなかなか追いついていない状況です。

――人気があるんですね。

僕たちは地域に雇用を生むための仕組みも作りたいと思っていて、瓶詰めなどの仕事は地元の就労支援施設の方々にお願いしています。 商品を売ることだけではなく、仕組み作りにも力を入れていきたいと思っています。

 

フライにするとおいしい「辛抱トマト」

――野菜などを販売する「困った時はお互いさマルシェ」についてお聞かせください。

きっかけは豪雨被害があったことからでした。川が冠水し、農地の被害が出て、出荷前の野菜が水浸しになってしまったんです。それらの野菜は洗えば食べられるのですが、市場には出荷できなくなりました。

そこで「困った時はお互いさマルシェ」を急遽開催しました。その時、農家さんからいろんなお話を聞き、「もったいないな」って思うことが結構あったんです。例えば、農家さんは冬になると雪が積もる前にビニールハウスを解体しますが、その時にハウス内で育てていた完熟していない青いトマトは捨ててしまうと聞きました。

そのトマトをフライにして食べてみると、食感もあって、すごくおいしかったんです。そこで、赤くなるためにがんばっていたトマトたちを「辛抱トマト」と名付け、「おいしくて価値があるものだ」と伝えながら販売するようになりました。

――青トマトのフライ! 初めて聞きました。

一緒に活動しているシェフが「辛抱トマト」のフライや「ハコダテアンチョビ」を使った料理方法をInstagramで発信しています。

――農家の方も喜んでいるでしょうね。

去年、何トンか廃棄せざるを得ないトマトを引き取り、たくさんの人たちに食べてもらえたのは農家さんにとってうれしいことだったと思います。

――今後の活動についてお聞かせください。

函館はたくさん資源がある土地です。それらに最大限の付加価値をつけ、多くの人たちが幸せになる仕組みを作っていきたいと思っています。

――最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。

「ハコダテアンチョビ」はたくさんの人たちが関わりながら製造しています。アンチョビが好きな方、函館に興味のある方は、ぜひネットなどを使ってアクセスしてみてください。

***

(番組パーソナリティー 横田さんコメント)
岡本さんは、あるものを新しくブランド化することが非常に上手ですね。全体を見ていらっしゃるからこそだと思うので、とても尊敬しました!


文・構成 = 池田アユリ
編集部 = ロコラバ編集部

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