東京で山口の名物料理「瓦そば」を味わう!|神田「瓦.Tokyo 神田Y-STYLE」

2022.6.29 | Author: 天谷窓大
東京で山口の名物料理「瓦そば」を味わう!|神田「瓦.Tokyo 神田Y-STYLE」

全国のコミュニティFMをネットしてお送りするラジオ番組『ロコラバ』。12時台にお送りしている「東京ロコラバ・ランチ」では、「東京で“ふるさと”をいただく」をテーマに、全国各地のご当地グルメが集まる東京で味わえる“ふるさと”をご紹介しています。

 

今回は、東京・神田にある「瓦.Tokyo(かわら・トーキョー) 神田Y-STYLE(かんだ・ワイスタイル)」で、山口県のご当地グルメ「瓦そば」を体験。その見た目に負けない山盛りのエピソードを伺いました。

温泉旅館のアイデア料理が郷土料理に


瓦そばは、山口県下関市の温泉街・川棚(かわたな)温泉を発祥とする麺料理。熱した瓦の上に炒めた茶そばと牛バラ肉、錦糸卵を乗せ、温かいつゆにつけて食べます。西南戦争で熊本城を囲む薩摩藩の藩士が野戦の合間に瓦で肉や野菜を焼いて食べたという言い伝えをもとに、1962年、川棚温泉で旅館を営む高瀬慎一(たかせ・しんいち)氏が考案。その味が評判を呼んで広まりました。

瓦を料理に使うと聞くと驚いてしまいますが、現在、瓦そばに使われている瓦は、いわゆる屋根瓦ではなく、瓦そばのために作られた専用の瓦。島根県の石見(いわみ)地方で生産される「石州瓦(せきしゅうがわら)」という瓦を1200℃の高温で焼き上げ、特別な釉薬で処理することで、200〜300℃の高温に耐えられる構造となっています。

島根県産「石州瓦」で作られた、瓦そば専用の瓦

瓦を使った本格的な食べ方のほか、県内では家庭料理としても人気。家庭ではホットプレートでフライパンを使い、多めの油で揚げ焼きにして食べられています。郷土料理としては比較的歴史の浅い瓦そばですが、山口県の人々にとっては家族との思い出の味として懐かしまれる「ソウルフード」なのです。

 

「父親が実家で作ってくれた瓦そば」を再現

江戸の城下町とオフィス街の雰囲気が混ざり合う、東京・神田エリア。JR神田駅・JR新日本橋駅の中間地点にお店を構える「瓦.Tokyo(かわらトーキョー) 神田Y-STYLE」は、東京にいながらにして本格的な瓦そばと山口の地酒を味わえるお店。山口出身の人々のあいだでも有名な存在です。

店主の西田聡(にしだ・さとし)さんは、IT関係のお仕事からの転身というユニークな経歴の持ち主。家庭で父親が作ってくれた瓦そばの味が忘れられず、同時に「都内で瓦そばが食べられるお店があまりない」と感じたことから、瓦そば専門店のオープンを決意したといいます。

「瓦.Tokyo 神田Y-STYLE」店主・西田聡さん

「父親の作った瓦そばしか食べたことがないんです。地元・山口の味というより『西田家の味』。山口出身のお客さんからいろいろアドバイスや要望を受けることも多いのですが、取り入れたことはないですね(笑)」(西田さん)

といいつつ、ふるさとの風土を求めて店を訪れる同郷の人々への思いが厚い西田さん。店内には20種類以上にのぼる山口の地酒が揃えられており、県内にある蔵のお酒をまとめて楽しむことができます。

山口県産紅いも焼酎「要助」。東京ではなかなか味わえない逸品(撮影:天谷窓大)

「東京の酒屋やネットショップなど、仕入れルートは8ルート用意しています。都内ではなかなか飲めない銘柄が揃っています」(西田さん)

 

力強い食べ応えとさっぱりした後味がクセになる

「瓦.Tokyo 神田Y-STYLE」で食べられる瓦そばは、地元・山口で食べられている瓦そばを意識した「瓦そば 山口STYLE」と、基本形を踏襲しつつ東京風にアレンジした「瓦そば 瓦.Tokyo original」の2種類。その違いを比べてみるべく、両方を実食しました。

「瓦そば 山口STYLE(税込1,078円)」(撮影:天谷窓大)

「山口STYLE」は、抹茶を練り込んだ山口産の太麺茶そばに、錦糸卵と牛バラ焼き、輪切りのレモンとみじおろしのトッピング。瓦の上に満載のそばと具材を豪快に混ぜ、萩の甘口醤油をベースにしたつゆでいただきます。

瓦の上でそばと具材を豪快に混ぜる(撮影:天谷窓大)

「錦糸卵に牛肉、ネギ、海苔、レモンと具材を積み上げていくという形式は、山口県ではマストのスタイルです。この部分を変えると山口出身のお客様からクレームが来るので(笑) 基本に忠実にしています」(西田さん)

つゆにレモンの輪切りをまるごと入れるのが山口流(撮影:天谷窓大)

レモンの輪切りごとつゆに入れていただくのが、オススメの食べ方。甘口醤油にレモンが加わると、甘辛さと酸味のきいたパンチある味に変身します。もちもちとした食感の太麺茶そばとさっぱりした牛バラ、レモンの酸味が絶妙な塩梅で組み合わさり、力強い食べ応えとさっぱりした後味が両立しています。

「瓦そば 瓦.Tokyo original(税込979円)」(撮影:天谷窓大)

「瓦そば 瓦.Tokyo original」は、玉露を練り込んだ山口産の細麺茶そばに、東京風の辛口醤油をベースにしたつゆでいただくスタイル。乾麺ベースのパリパリとした食感と玉露のほろ苦さを持つそばを辛いつゆが引き立て、くっきりと輪郭のある味わいになっています。

豪華な見た目とは裏腹に、とても繊細な味わいの瓦そば。箸を進めるごとにそばと具材、つゆの位置関係がめまぐるしく変化する様子は、なんともクセになります。

「少しずつ食べるよりも、全部混ぜていっきにいただくのをオススメしています。麺とお肉とつゆが混ざった味わいが楽しいですよ」(西田さん)

 

石焼ビビンバの“おこげ好き”な人はハマるかも

「焼きそばでもなければ普通のそばでもなく、かといって『かたやきそば』でもないのが瓦そばの面白いところ。独特の食感がお客さんからも好評をいただいています」と西田さん。「石焼きビビンバの“おこげ”が好きな人は楽しんでいただけるかも」と語ります。

「具材もひとつひとつ見ると、『これとこれ、合うの?』と一瞬首をかしげてしまうような組み合わせです。焼き料理に錦糸卵も珍しいし、レモンもめずらしい。でも不思議なことに、全部入ると絶妙な調和が取れて、美味しい味になるんです。この新しい食感と、インパクトのあるビジュアルをぜひ両方楽しんでいただければと思います」(西田さん)

なんともユニークで、一度食べたら忘れられない瓦そば。お店には山口県出身の人が他の地域出身の人を連れてきて、実際にその味を“実演”している光景をよく見かけるそうです。

「『瓦そばって、こんな味なんだよ』と紹介する場所として、お店を使っていただくことが多いですね。もし、そういうことをやりたがってる人が身の回りにいたら、ぜひ『瓦.Tokyo』を教えてあげてください」(西田さん)

■瓦.Tokyo(かわらトーキョー)
神田Y-STYLE東京都中央区日本橋本石町4-4-17
JR神田駅から徒歩5分、JR新日本橋駅から徒歩3分
月曜~金曜(昼):11:00~14:00
月曜~金曜(夜):17:00~ラストオーダー22:30
​定休日:日曜日・祝日
電話番号:03-6262-2978

取材・文 = 天谷窓大
企画・編集 = ロコラバ編集部(株式会社トランジットデザイン)

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