毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は3月12日放送の『地域人』のコーナーから、岩手県の南部鉄器を使って世界に通じるギターエフェクターを作るお店の取り組みをご紹介します。
重厚なデザインや、熱せられた器具からしみ出る鉄分が特徴の岩手県の伝統工芸品「南部鉄器」。福嶋圭次郎さんは、これをボディに採用し、エレキギターとアンプの間で音色を変化させる器具「エフェクター」を手掛けています。
楽器と伝統工芸という2つの可能性を秘めた、世界初かつ唯一の“南部鉄器エフェクター”。「音に重みが出る」と評判を呼び、海外からも熱い視線を集めている「KGR Harmony」の福嶋 圭次郎(ふくしま・けいじろう)にお話しを伺いました。
――福嶋さんは横浜のご出身。中学時代にエフェクターの奥深さに触れ、高校卒業後、東京電気大学で電子工学を専攻。2019年、新たなエフェクターの素材を探して、日本1周の旅へ出ました。そこで岩手県の南部鉄器に出会い、老舗の株式会社「及富」と共同開発を開始。2019年11月に合同会社「福島圭次郎」を設立し、翌月に「南部鉄器エフェクター アラレ」を発表しました。福嶋さん、エフェクターの奥深さに触れたご経験について教えていただけますか。
当時、バンドをやっていたんですが、楽器の機材のひとつとしてエフェクターを知りました。エフェクターにはスイッチがついていて切り替えられるんですが、オンにした瞬間、多彩な音色に変わることに感動して……。バンドを組んでいるのにもかかわらず、気づいたら一人でスタジオに入って機材をいじるようになっていました(笑)。
――シンセサイザー(音色を合成して出力する楽器)ではなく、ギターのエフェクターだったところに運命的なものを感じますね。 伝統工芸である「南部鉄器」との出会いを教えていただけますか?
大学時代はエフェクターの音色が変化する研究をしていました。その中でエフェクターの母体である箱の部分に、どんな鉄の素材を使うかでだいぶ音色が変わってくると気づいて、「何か使えるものはないだろうか?」と探すようになったんです。
ある時偶然、テレビを見ていて、南部鉄器を知りました。南部鉄器で作られた風鈴だったんですが、鉄のこすれる音を聞いて「いい音だなぁ」と感動したんです。それが興味を持つきっかけでした。
――製品の開発は大変でしたか?
そうですね。南部鉄器の世界にまったく縁がなかったので、職人さんに「どうやって作るんですか?」と一から聞くことから始めました。
――鉄瓶や風鈴を作ることが一般的な南部鉄器。職人さんから「ギターのエフェクターに?」と驚かれませんでしたか?
ありがたいことに職人さんの懐が深く「よくわかんないけど、面白そうだからやってみようか!」と言って、対応してくれました。
――大手楽器メーカー「BOSS」は、ひずみの音が非常に優秀だといわれています。他社もそこに追いつこうと業界的に競争が激しいですよね。でも、福嶋さんはあえて主流の音色で挑んでいらっしゃる。きっと大変な挑戦だったのでは?
そうですね。ただ、エフェクターが好きな人にとってはいろんな音色を試してみたいという方が多くいらっしゃいます。とくに、ひずみの部分は表現の核となる部分なので、人それぞれの好みがあって当然だと思います。ですから市場では、ひずみの新しい音色がどんどん生まれているんですよ。その中で僕は個性を持ってやっていきたいです。
――伝統工芸である南部鉄器は新しい形を切り開くことに、どのような思いがあるのでしょう?
伝統工芸のアドバンテージを使わせていただいている気持ちでいます。世界に出していくプロダクトにするからこそ、日本の伝統工芸はとても有利です。もっと多くの方に知ってもらいたいなと思っています。
――福嶋さんは南部鉄器の町である岩手県に移住されました。実際に住んで見て、いかがですか?
現在移住して4年ほどです。まだまだこの地域について知らないことがたくさんありますが、自分のやりたいことを胸にお話しすると、地域の皆さんは協力的に対応してくださるんです。それはありがたいですね。
――最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
日本文化を取り入れた「南部鉄器エフェクター」は、海外でも評価されつつあります。新しい音色、他にはない音色を探している方にぜひ試していただきたいです。
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(番組パーソナリティ 川久保さんコメント)
僕の友人のギタリストも「南部鉄器のエフェクター、知ってるよ!」と言っていました。浸透しているようです。エフェクター以外にもスピーカーなど、いろいろな製品に挑戦してもらいたいですね!
(番組パーソナリティ 横田さんコメント)
リスナーの方から福嶋さん宛てに「ギターが好きすぎて、エフェクターを極める旅に出た人ですね。 音楽の未来が南部鉄器のエフェクターに見える気がします」とメッセージが届いていました。細かなこだわりを持つ方から、芸術が生まれるのだなと思って、すごくワクワクしました!
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文・構成 = 池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部